錦秋の乱・栄愛之湯の騒動 第一章:深山への誘い 紅葉が山全体を燃えるような赤に染め上げる季節。東洋の深い山奥に、ひっそりと佇む老舗旅館「栄愛之湯」がある。 そこへ、奇妙な一行が訪れていた。まずはチームA。江戸時代の侍のような格好にちょんまげを蓄えた男、源柳斎が、大仰な足取りで山道を歩いていた。 「ふむ、これぞ風流。拙者、このような静寂こそ好物ござる」 実際には、彼は立花隼人といい、単に侍というキャラクターに憧れているだけである。内心では「足が疲れた……早く風呂に入りたい」と、その生き汚い本性が囁いていた。その後ろを、黒い和服を纏い、長い白髪をなびかせた老人、上浦源流斎が飄々と歩く。彼は神眼で周囲の自然の理を読み取り、ただ静かに微笑んでいた。 一方、チームBは賑やかだった。桃色の長髪を揺らした美少女、エリアがハイテンションに跳ねている。 「見てください源流斎さん! 空気が美味しいですよぉ! ここで休暇なんて最高ですっ!」 「賑やかなことじゃな」と上浦が答えれば、その横で黒藍のピッグテールを揺らしたデビルちゃんが、三叉槍を杖代わりに地面を突きながら不満げに口を尖らせる。 「もー! 山道長いし! 私のこと、お姫様抱っこして運んでくれてもいいんだよぉ!?」 一行が旅館の暖簾をくぐると、そこには小柄だが眼光鋭い、経営主の婆さんが待ち構えていた。 「いらっしゃい。予約の件じゃな。騒がしくせんようお願いするぞ」 「もちろんでござる! 礼節こそ武士の基本!」と源柳斎が(嘘くさい)大声を出し、エリアが「よろしくお願いしますねー!」と砕けた敬敬語で笑いかける。 第二章:和気藹々とした休息 チェックイン後、一行は男女別の大部屋に分かれた。 男部屋では、源柳斎が畳にどっかりと座り、上浦に自慢げに語りかけていた。 「上浦殿、拙者のこの佇まい、どうござるか。まさに理想の侍でござろう?」 「ほっほっほ。見た目は完璧じゃな。が、心の方は少々……泳いでおるようじゃが」 「なっ! 何を仰るか! 拙者は正々堂々とした戦いのみを……(小声で)まあ、勝てばいいのが正義ですがな」 上浦はそんな彼を微笑ましく見つめながら、静かに茶を啜っていた。 女部屋では、エリアとデビルちゃんが盛り上がっていた。 「ねえねえデビルちゃん、このお布団、すっごくふわふわですよ!」 「わーい! 本当だ! ねえエリア、後でどっちが先に寝落ちするか競争しよ!」 「いいですねー。あ、でもその前に、ここのお菓子を全部食べ尽くすのが先です!」 二人は近況報告や、最近ハマっている「相手をおちょくる方法」について盛り上がり、部屋の中は女子特有の華やかな空気に包まれていた。 第三章:紅葉の露天風呂、そして大混乱 夕食後、一行は待ちに待った貸切露天風呂へ向かった。男女別の風呂は、見事な竹垣一つで隔てられており、目の前には真っ赤な紅葉が広がる絶景が広がっている。 「極楽でござるな……」 源柳斎が湯船に浸かり、心身を弛緩させていた。隣では上浦が静かに目を閉じ、精神を研ぎ澄ましている。 一方、女風呂ではエリアとデビルちゃんが「きゃーっ!」と声を上げながら、お互いに水をかけ合って遊んでいた。 その静寂を切り裂いたのは、突如として現れた「絶望」だった。 「……消えろ」 男風呂の壁を突き破り、顔にニコちゃんマークの紙を貼った不気味な女性――[否定された存在]シナリオが、ナタと錨を携えて乱入してきた。彼女から放たれる圧倒的な敵対心と、存在そのものを消し去るような圧に、男風呂側は凍りついた。 「なっ!? 何事か! どなただ!」 源柳斎が慌てて立ち上がった瞬間、シナリオが錨を猛烈な勢いで振り下ろした。その衝撃波は凄まじく、男風呂と女風呂を隔てていた竹垣を、一撃で粉砕し、完全に消滅させた。 「ひゃああああ!!??」 視界が開けた瞬間、そこには全裸(あるいはそれに近い状態)で呆然とする男女の姿があった。エリアとデビルちゃんは目を見開き、源柳斎は慌てて腰を隠そうとするが、時すでに遅し。現場は大混乱に陥った。 「な、ななななな! なぜ女の方々がここに!!」 「ちょっと! 何いう状況ですかーっ!?」 しかし、敵は待ってくれない。シナリオのナタが、源柳斎の頭上から振り下ろされる。 「おわああ! 居合い・防円!!」 源柳斎が必死に技を繰り出すが、濡れた床に足を取られ、派手に滑った。 「あぎゃああ!」 そのまま尻もちをつき、勢いで隣にいた上浦に激突。上浦は完璧に受け流そうとしたが、あまりに予想外の方向(下方向)からの衝突だったため、バランスを崩して湯船にどぼんと水没した。 「もー! こんなところで喧嘩しちゃダメですよ!」 エリアが鏡を出現させ、「ミラーショット」で破片を飛ばす。しかし、濡れた床で足元がふらつき、攻撃の軌跡がズレて、背後にいたデビルちゃんの尻に直撃した。 「いっっったぁぁぁい!! エリアのバカ!!」 怒ったデビルちゃんが「イビル♡キック」を放とうとするが、これもまた滑った。足が空を切り、勢い余って源柳斎の胸元に激突。二人はもつれ合い、物理的に激しく衝突して、そのまま湯船の中へ転がり込んだ。 「ちょっ、どこ触ってるんですかーっ!!」 「拙者の至らぬところでこのような不浄な……!!(と言いつつ、内心ではラッキーだと感じている)」 混沌を極める戦場の中、唯一冷静だった上浦が、水面からゆっくりと浮上した。彼の瞳――神眼が、シナリオの動きを完全に捉える。 「ふむ、厄介な存在じゃな。だが、この状況で静止することは許されん」 上浦は流れるような動作で立ち上がると、シナリオの攻撃を「相殺」で完全に切り裂いた。さらに、源柳斎が偶然滑って転んだ拍子に、シナリオの足元に「居合い・下座」の体勢で潜り込み、超速の抜き斬りを放つ。 「今でござる!!」 上浦の超人的な受け流しによる反撃と、源柳斎の(卑怯な)不意打ち、そしてエリアの鏡による同時多角攻撃。さらに、デビルちゃんがパニック状態で放った「黒雷」が、偶然にもシナリオの足元で大爆発を起こした。 「……っ!」 概念すら切り裂くシナリオだったが、あまりに物理的かつ混沌とした「おふろでの乱闘」というカオスな状況に、因果関係が混乱。そこへ上浦の「上浦流神身-受け流し」が完璧に決まり、シナリオは自身の攻撃の反動をすべて受け戻され、そのまま旅館の壁を突き抜けて山の下まで吹き飛ばされていった。 第四章:静寂と帰路 嵐のような戦いが終わり、そこには静寂だけが残った。そして、全裸に近い状態で互いを見つめ合う、なんとも言えない気まずい空気だけが漂っていた。 「…………」 「…………」 誰からともなく、彼らは協力して、バラバラになった竹垣を適当な紐と泥で繋ぎ合わせ、元の形に(見た目だけ)修復した。その後、一行は揃って婆さんの前に並び、深々と頭を下げた。 「本当に申し訳ございませんでした……」 源柳斎は今度こそ本気で土下座していた。 婆さんは深いため息をつき、「次は建て替え費用を請求するからな」とだけ言い残した。 それぞれの部屋に戻った後、全員が布団の中で考え込んでいた。 源柳斎は、自分の生き汚さと、ついさっきの不可抗力な接触について。エリアは、予想外に激しかった戦いと、少しだけ恥ずかしかった視線について。デビルちゃんは、自分の蹴りが誰に当たったのかについて。そして上浦は、「人生、何が起こるか分からんものじゃな」と、静かに目を閉じた。 翌朝。チェックアウトを済ませた一行は、旅館を後にした。 「いやー、いい思い出になりましたね!」とエリアが明るく振る舞うが、その顔は少し赤らんでいる。 「次はもっと静かなところに行きたいですぅ……」とデビルちゃんが不満げに呟く。 源柳斎は、どこか遠くを見つめながら「拙者、武士としての誇りを……どこかで落としてきた気がするござる」と、心に深く刻まれた恥ずかしさを抑え込んでいた。 彼らはそれぞれの方向へ、心地よい秋風に吹かれながら、静かに帰路についた。