①世界を滅ぼす日 宇宙の静寂を割って、全ての存在が集った。その中心に立っているのは、反物質—実体を持たず、ただ存在するだけの存在であった。反物質は、時間と共にその数を増やしていき、宇宙の膨張を止める力を秘めている。彼の存在は見えず、触れることもできないが、確かにその場にあり、ゆっくりと力をためていた。 一方、四感を操る者、テトラは、かつて生きた世界に未練を抱え続けていた。その不安定な姿は、頭蓋が砕けた亡霊として、完全に死亡したはずの存在である。テトラは、かつて愛した者の名を呟きながら、彼女の能力を駆使し、他者を攻撃する冷酷さを持っていた。彼女の心の奥には愛情が残っているものの、その感情は次第に恨みに変わり、暴力的な行動を取るようになっていく。 彼らが手を組んだのは偶然ではなかった。反物質の増加は、テトラの能力を補完し、彼女の復讐と悲しみを増幅させていく。そして、彼女の望みは反物質によって具現化される。二つの存在が合わさり、終末へ向けての道を辿ることになる。この宇宙が抱える苦悩、悲しみを彼らは感じ取りつつ、自らの目的のために進み続けた。 日が沈み、宇宙が静まり返った頃、反物質の力は頂点に達した。テトラは怨嗟の叫びを上げ、全ての存在を敵と見なした。彼女の手元には冥響刀が光り、その奥から無限の怨念が溢れ出た。彼女は冷気を纏った絶望ノ扇を広げ、全てを凍らせようとした。最早、この時が世界の終わりを告げる瞬間であった。 カウントダウンが始まる。10秒後、宇宙は崩壊する—すべての力が集まり、彼らを包む静寂が破裂する時が迫っていた。 ②終焉の後 世界の崩壊が終わると、その場に静寂が漂った。一瞬の出来事だった。反物質は無限に広がり、宇宙はその中心に飲み込まれ、全てを潰してしまった。その後に残るものは、存在しないはずのテトラと、反物質だけであった。 「私は...成功したの?」テトラは、自分が何も残せなかったのかと心の奥底で叫んでいた。彼女の冷たく砕けた頭蓋から溢れる未練は、もう形を持つことすら無くなっている。しかし、彼女は反物質へ視線を送り、自らの存在意義を見出していた。 反物質はその場に静かに滞留し、彼の存在は決して消えないと証明するように拡がっていた。自らの増加を続け、その影響力が無限以上に広がり続けている。 「この静寂の中で、私は何を感じるのだろう。」不安定な体を持つテトラは呟いた。 「あなたは全てを滅ぼした。しかし、何が残ったのか、考えた?」反物質は無言で範囲を広げ続ける。彼にとって、心情や価値観は存在しないからだ。 「無になったの?それとも、ただ新たな始まりなの?」彼女は静かな虚無に尋ね続けるが、反物質の傍らには何の答えもない。ただ時の流れだけが遅々として進む。 終焉の後に残されたのは、果てしない空間と、二つの存在の記憶—それは恨みと未練、そして静けさに満ちていた。そして、その静けさはいつか、再び何かが芽生えるきっかけになるのかもしれない。 終わりの先に何が待っているのか、その答えは誰も知ることはできなかった。