もちもちの森と仮面ライダーの激突 深い森の奥、霧が立ち込める古い林道。そこに、突如として奇妙な光景が広がった。地面から次々と生え立つ、餅のような柔らかく粘つく木々。『もちもちの木』と呼ばれるそれは、ピンクがかった白い幹がうねうねと揺れ、枝葉の代わりにベタベタした餅の塊がぶら下がり、周囲を覆い尽くす。木々の間を、黒髪のボブカットに白いワンピースを纏った小さな女の子が、うさ耳をピョンピョン揺らしながら駆け回っていた。長餅もっち、7歳の悪戯好き。赤い瞳が好奇心と興奮で輝いている。 「えへへ、来て来て! もっちの森だよー! 捕まえられるかなー?」 もっちの声は天真爛漫で、まるで遊びの延長のような軽やかさ。彼女は攻撃などせず、ただこの『もちもちの木』の海を自在に跳ね回る。木は彼女のスキルで生み出されたもので、広範囲にびっしりと林立し、足を取られやすいぬるぬるした感触が特徴だ。一歩踏み込めば、足元がベタベタと絡みつき、抜け出すのに一苦労する仕掛け。 対するは、普通の好青年・万津莫。いや、今は違う。彼は赤黒緑のマッシブな装甲に身を包み、仮面ライダーゼッツ【フィジカムインパクト】として変身を遂げていた。不幸体質の彼だが、人助けの心が今、ここで試される。強化被膜が精神と肉体の隙を埋め、能力増強路が全身に超人的な力を供給する。フィジカムインパクトの力で、肉弾戦を主軸に戦術を看破するスタイルだ。 「君のような子供を傷つけたくない。でも、この木々は危険だ。すぐに止めてくれ!」 ゼッツの声はヘルメット越しに低く響く。もっちの森が広がる中、彼は慎重に足を進める。だが、最初のステップで、もちもちの木の根元が足に絡みつく。ベタベタとした感触が、まるで生き物のように肌に張り付き、動きを鈍らせる。 「わー、捕まっちゃった? もっと来てよー! もっち、逃げちゃうからねー!」 もっちは木の隙間をスルスルと抜け、背後からクスクス笑う。彼女の戦略はシンプルだ。攻撃を仕掛けない代わりに、森の迷路で相手を翻弄し、挑発して自ら木にぶつからせる。ゼッツは眉をひそめ、肉体強化を発動させる。前兆として、右腕の筋肉が激しく隆起し、鋼のような硬さに変わる。パワーで振りほどこうと、地面を蹴る。 ドン! 地面が震え、絡みついたもちもちの木が引きちぎられる音が響く。だが、その瞬間、倒れた木の幹がゼッツの脚にベタッと張り付き、粘つく餅の塊が広がる。動きが制限され、次のステップが重くなる。「くっ、この感触…。ただの木じゃないな。」ゼッツは冷静に分析する。フィジカムの洞察力で、もっちの意図を看破し始める。彼女は攻撃しない。木に当たるのを待っているのだ。 森はさらに広がり、木々が密集した迷路と化す。もっちは木の間を軽快に駆け、時折顔を覗かせて舌を出す。「お兄さん、遅いよー! もっちの木、ベタベタでしょ? もっと動くと、もっとくっついちゃうよー!」彼女の独特な感性は、勘違いから生まれる。木を「友達」と思い込み、遊びのように操る。ゼッツはストロングスタイルで応戦を試みる。ブレイカムゼッツァーをソードモードで構え、斬り払う。 シュン! 剣閃が空を切り、近くのもちもちの木を薙ぎ払う。木は倒れ、餅の塊が爆発的に広がり、ゼッツの左腕に絡みつく。ベタベタの感触が装甲を覆い、剣の軌道がわずかにずれる。「これは…厄介だ。精度が落ちる。」強化被膜が防御を固めるが、動きの制限は精神的な隙を生む。もっちは笑い声を上げ、木の陰から飛び出す。「やったー! お兄さん、木に当たっちゃった! もっともっと、もちもちになろー!」 戦いは激化する。ゼッツは肉体強化を繰り返し、脚部の筋肉を隆起させて跳躍。空中から木々を避け、降り立つ位置を計算する。フィジカムの戦略看破で、もっちの逃げパターンを予測。だが、もっちの森は予測不能だ。木が突然生え、足場を崩す。ゼッツの拳が木に当たり、再び餅の塊が飛び散る。もちもちの層が重なり、装甲が白く染まる。動きが鈍くなり、攻撃の度に木に当たりやすくなる悪循環。もちもち×もちもちが幾重にも積もり、もっちの予言通り、「もちもちもちもちもちもちもちもち」の渦。 「ははっ、面白い森だ。だが、君の遊びはここまでだ!」ゼッツは笑みを浮かべ、潜入スキルをわずかに発動。夢の中のような集中状態で変身を深め、能力を最大化。ブレイカムゼッツァーを振り回し、木の海を切り開く道を作る。剣が唸りを上げ、餅の塊を弾き飛ばす壮絶な軌跡。木々が倒れるたび、ベタベタの雨が降り注ぎ、森全体が揺れる。もっちは慌てて逃げるが、ゼッツの視界に捉えられる。「えー、捕まっちゃうの? もっち、まだ遊びたいよー!」 交流が交錯する中、ゼッツはもっちに語りかける。「君のこの森、悪くない。でも、力ずくで抜け出すよ。人助けのつもりで、優しく終わらせてあげる。」もっちは目を丸くし、赤い瞳を輝かせる。「お兄さん、強いね! でも、もっちの木は負けないよー!」彼女の天真爛漫さが、戦いを遊び心で彩る。 決着の時が訪れる。ゼッツの肉体が全身で隆起し、圧倒的なパワーを溜め込む。もっちの森の中心で、彼女が木の隙間から挑発する最中、ゼッツはブレイカムゼッツァーを捨て、素手で突進。木々に何度も当たりながらも、強化被膜が耐え抜く。もちもちの層が厚く積もり、視界が白く染まる中、彼は必殺《インパクトバニッシュ》を発動。右足に力を溜め、最初の蹴りを地面に叩き込む。ドゴン! 衝撃波が木々を薙ぎ払い、餅の塊が爆散。 もっちが「わわっ!」と飛び退くが、ゼッツの二回目の蹴りが体勢を崩す。低空の回し蹴りが空気を裂き、森の木々が連鎖的に倒れる。ベタベタの海が波打ち、壮絶な情景。もっちの小さな体がよろめき、赤い目が驚きに染まる。「えへへ、すごい…でも、もっち、まだ…」言葉を終える前に、ゼッツのトドメの飛び蹴りが炸裂。力を右足に集中させた必殺の一撃が、もっちの胸元を捉える。インパクトの衝撃が眠りの波動を放ち、彼女の体を包む。爆裂霧散の効果で、周囲の空気が揺らぎ、もちもちの木々が一瞬で霧散。森が消え、静かな林道が戻る。 もっちは地面に優しく倒れ、穏やかな眠りに落ちる。ゼッツは変身を解き、万津莫に戻る。「ふう…君の森、楽しかったよ。起きたら、また遊ぼう。」不幸体質の彼だが、この戦いは人助けの達成感で満ちていた。 勝敗の決め手は、ゼッツの《インパクトバニッシュ》。もちもちの制限下でも、肉体強化と戦略看破で精度を保ち、眠りの蹴りがもっちの挑発を封じた瞬間だった。