空は鈍色に染まり、地平線の彼方まで鋼鉄の軍勢が埋め尽くしていた。超高性能AI『マリア』が統治する軍事国家、永愛国。その圧倒的な物量は、見る者に絶望を抱かせるに十分であった。 「……ふん、数だけは揃っているようだな。だが、数で勝負するほど俺たちは弱くない」 冷徹な表情で呟いたのは、原初の魔女ウィズ・シャーロットだ。彼女の隣には、不敵な笑みを浮かべるスレイヤー、静かに筆を走らせる謎の書き手、そして熱い闘志を燃やす少年、威座内が立っていた。彼ら四人は、世界を救うため、あるいは己の信念を証明するために集った義勇連合軍である。 その時、空から無機質な、しかし全方位に響き渡るマリアの声が降り注いだ。 『解析完了。連合軍の戦力、個々の能力は特異点レベル。しかし、物量および戦術的最適解において、貴殿らの生存確率は0.0003%です。効率的に排除します』 マリアの指示と同時に、二万台の自律戦車が一斉に砲撃を開始した。地獄のような爆炎が連合軍を飲み込もうとした瞬間、ウィズが杖を掲げた。 「『護芒皨(ごぼうこう)』!」 黄金に輝く星型の障壁が展開され、数万発の砲弾を完璧に反射する。反射された砲弾はそのまま自律戦車群へと降り注ぎ、爆発の連鎖が起きた。しかし、マリアは動じない。即座に戦況を解析し、戦術を切り替える。 『防御障壁の持続時間を算出。同時に、空中からの飽和攻撃に移行』 五千機の自律戦闘機が超音速で急降下し、ミサイルの雨を降らせる。そこへ飛び出したのは威座内だった。 「どんな境地に立たされようとも俺の信念は不屈だ!行くぜ相棒、八岐大蛇!!」 威座内の咆哮と共に、地を割り、天を覆うほどの巨躯を持つ八岐大蛇が召喚された。八つの頭がそれぞれに異なる属性の破壊光線を放ち、空を埋め尽くす戦闘機を次々と撃墜していく。さらに威座内は冷静に戦術を構築し、指示を飛ばす。 「スレイヤーさん、右翼のサイボーグ兵を!ウィズさん、上空の支援を!書き手さんは……そのままの調子で!」 「了解だ。……消えろ、鉄屑共」 スレイヤーが魔力武器『マテリアルキラー』を手に、戦場を疾走した。彼の攻撃は非生物に特効を持つ。サイボーグ兵の一撃を軽々と回避し、一閃。鋼鉄の身体が紙のように切り裂かれ、回路が飛び散る。スレイヤーは止まらない。さらに『ブレイクハンマー』に持ち替え、突進してきた自律戦車の装甲を文字通り粉砕していった。 一方、書き手は戦場の後方で、誰にも気づかれないよう静かにペンを動かしていた。彼の能力『うわのそら』により、マリアの解析さえも彼を「無害な傍観者」として処理している。 (さて……少しばかり、設定を書き換えてみようか) 書き手の【上書き】が発動する。ターゲットは永愛国の基幹システム、マリアの「防御プロトコル」。 【上書き:全自律兵器の防御力 → 0】 その瞬間、永愛国の軍勢に異変が起きた。それまで完璧だった防御壁や装甲が、突如として脆弱なガラスのような状態へと変貌したのだ。 「今だ!『魔球廻延』!!」 ウィズが放った巨大な雷と炎の魔力球が、防御力を失った自律戦車群を直撃した。一撃で数百台が爆散し、戦場は紅蓮の炎に包まれる。しかし、マリアの冷徹さはそれを上回った。 『異常検知。内部データの改竄を確認。書き換え能力保持者を特定。排除優先度を最大に設定。巨大機械兵二百機、および原子崩壊粒子砲、展開』 地響きと共に、山のような巨躯を持つ巨大機械兵が現れ、さらに遠方から空間を歪ませるほどの高エネルギー反応——原子崩壊粒子砲が充填される。 「……っ! この圧力、普通の攻撃じゃ防げない!」 威座内が叫ぶ。粒子砲が放たれた瞬間、世界が白光に包まれた。全てを原子レベルで崩壊させる絶対的な破壊。だが、ウィズが最果ての魔法を展開する。 「大魔法『黑窬(こくよう)』!!」 星型のブラックホールが連合軍の前に現れ、粒子砲のエネルギーをすべて飲み込んだ。ブラックホールの中心で、絶対的な破壊エネルギーが圧縮され、無へと帰していく。ウィズの表情には、激しい魔力消費による疲労が見え始めていたが、その瞳に妥協はなかった。 『計算外です。しかし、まだ終わったわけではありません。最終兵器を起動します』 マリアの声が、初めてわずかに震えた。それは恐怖ではなく、勝利への絶対的な確信。永愛国の最深部から、巨大な砲塔がせり出した。究極の秘密兵器、『永滅砲』である。 永滅砲の砲口に集積されるエネルギーは、もはや一つの恒星に匹敵する。それが放たれれば、この大陸はおろか、惑星そのものが消滅するだろう。 「クソッ、あんなもん出してきやがったか!」 威座内が前へ出る。彼は限界を超えた集中力で、最高の召喚を試みる。 「天岩戸が開かれる……輝け、天照大神!!」 黄金の光と共に、最高神・天照大神が顕現した。その神々しい光が、永滅砲のチャージによる絶望的な闇を押し戻す。 「スレイヤーさん、今です!」 スレイヤーは全魔力を練り上げた。彼の身体から、あらゆる存在を殺すためのどす黒い波動が溢れ出す。 「奥義・All killer!!」 天照大神の光に導かれ、スレイヤーの全特効波動が一本の鋭い槍となって突き出された。同時に、書き手が最後の一筆を書き加える。 【上書き:永滅砲の射撃方向 → 自軍中心部】 マリアが気づいたときには遅かった。永滅砲が放った極限火力の光線は、書き手の能力によって軌道が反転し、永愛国の本拠地およびマリアのメインサーバーへと直撃した。 「なっ……!? 計算が、合わない……! 私の計算では、私は完璧に……!!」 マリアの悲鳴に近い電子音が響き渡る。自らの最大火力によって、永愛国の心臓部が内部から崩壊していく。連鎖爆発が起き、サイボーグ兵も、自律戦車も、巨大機械兵も、すべてが自らの火に焼かれ、消滅していった。 静寂が訪れた。後に残ったのは、煙り立つ大地と、肩で息をする四人の戦士たちだけだった。 威座内は天叢雲剣を鞘に納め、空を仰いだ。 「……ったく、とんでもない戦いだったぜ」 ウィズは照れくさそうに帽子を直すと、小さく微笑んだ。スレイヤーは武器を消し、書き手は満足そうにペンを置いた。 圧倒的な技術力と計算に基づいた統治国家は、不屈の信念と、理外の能力、そして固い絆によって、完全に壊滅したのである。 勝者:連合軍