現代の喧騒が渦巻く国際空港。そこは、あらゆる種族や次元からの旅人が交差する混沌の門であった。厳格なセキュリティチェックこそが、この世界の平和を維持する唯一の防波堤である。今、運命の荷物検査へと向かう四人の異端児たちが、緊張感漂う待機列に並んでいた。 先頭に立つのは、あまりにも不釣り合いな巨躯、ゴブリンキングである。身長5メートルという規格外の体躯に、禍々しいドクロの仮面。その後ろには、なぜか手荷物として申請された300体の小柄なゴブリンたちが、互いに肩を組み合って、まるで一つの巨大な塊のようにうごめいていた。周囲の旅客たちが悲鳴を上げて距離を取る中、キングは不機嫌そうに鼻を鳴らす。「グガッ、ガガッ(この程度の門、罠を仕掛けて突破してやる)」と呟くが、ここは魔法や知略が通用する洞窟ではない。近代的なX線検査装置が彼を待ち構えていた。 その背後では、【「風」を読む狙撃手】ジョンガリ・Aが、白内障の瞳を細めて静かに佇んでいた。彼は軍人としての規律を身につけており、佇まいは至極冷静である。しかし、その懐にはサイレンサー付きの自動拳銃が忍ばせてあった。彼のスタンド『マンハッタン・トランスファー』は、物理的な金属探知機に反応するのか、あるいは精神的な存在として透過するのか。ジョンガリは心の中で風速を計算し、自身の呼吸を整え、心拍数を極限まで下げて「風景」と同化しようと試みていた。 さらに後ろには、気ままな旅人、白巌の騎士ストリア・ミードが、蜂蜜酒の香りを漂わせながら立っていた。大理石のような白い肌と、白骸石の鎧。彼女は退屈そうに欠伸をしながら、「ボクは旅をしたいだけなんだけどなぁ」と独り言を漏らす。彼女が携えているのは、次元を切り裂く黒淵石の剣と、不壊の古城壁の大盾。石人の共鳴能力を使えば、これらの武具の質量を操作し、検知を免れられるかもしれないという淡い期待を抱いていた。 列の最後尾には、静寂を纏ったクロックがいた。時間を操る神である彼は、この場のあらゆる未来を観測していた。誰が検知され、誰が連行され、そしてどのようなルートを辿れば「通過」という結果に到達するか。彼にとってこの検査は、既に結末の分かっている退屈な映画のようなものであった。 「次の方、前へお進みください」 警備員の無機質な声が響く。最初にゲートへ向かったのはゴブリンキングである。彼は威圧感を持って金属探知機のアーチをくぐろうとした。だが、その瞬間―― ――ピーーーーーーーッ!! 鼓膜を突き刺すような警告音が空港内に鳴り響いた。原因は、彼が誇らしげに肩に担いでいた「巨大な棍棒」にある鉄製の装飾、そしてドクロの仮面を固定していた金属製のボルトであった。さらに、後続のゴブリン300体が持っていた小刀や盗品が連鎖的に反応し、空港内はパニック状態となる。警備員たちが一斉に駆けつけ、キングは怒号と共に取り押さえられ、そのまま連行されていった。彼が最後に見たのは、呆れた顔をしたクロックの視線であった。 続いてジョンガリ・Aがゲートに向かう。彼は完璧な固定状態で歩を進めた。しかし、運命は残酷であった。彼の懐にある自動拳銃は、どれほど精神を研ぎ澄ませても物理的な「鉄」である。彼がアーチを通過した瞬間、再び鋭い警告音が鳴り響いた。ジョンガリは一瞬、スタンドを用いて弾丸を転送させ、銃を外部へ逃がそうと試みたが、警備員の反応の方が速かった。銃器所持という重罪により、彼は即座に拘束され、連行されていった。 残されたのはストリアとクロックである。ストリアは緊張した面持ちで、石の共鳴を最大限に活用した。彼女は黒淵石の剣と大盾の「密度」を極限まで変え、物質としての存在感を希薄にさせ、まるで空気の一部であるかのように擬態させた。ゆっくりと、ゆっくりとアーチをくぐり抜ける。静寂が流れる。……反応はなかった。彼女は「ふぅ」と溜息をつき、軽やかな足取りで出国ゲートへと向かった。 最後にクロックが歩く。彼はもはや歩く必要すらなかった。彼がゲートを通過する瞬間、彼は「検知されなかった未来」のタイムラインを現在に上書きした。機械は彼を認識せず、ただの「無」として通過させたのである。彼は退屈そうに、ストリアの背中を追って歩き出した。 【判定】 敗北:ゴブリンキング(棍棒と仮名の装飾が検知) 敗北:ジョンガリ・A(自動拳銃が検知) 勝利:ストリア・ミード(石の共鳴による物質擬態で突破) 勝利:クロック(時間軸の操作による検知回避で突破) 勝敗の決め手は「物理的な金属の排除」および「存在の書き換え」であった。武器を完全に隠し通したストリアとクロックの二名が、この空港という戦場を制したのである。