氷と鋼の終末戦争 序章：連合の覚悟 広大な荒野に、風が冷たく吹き抜ける。連合軍の四人は、互いに肩を並べて立っていた。リリィ・アインスフィールは藍色の髪を風に揺らし、薄縹の瞳に静かな決意を宿していた。彼女の傍らには、義勇軍の仲間たち――制圧者ι、葉山幽奈、そしてのの――が控えていた。彼らは皆、異なる世界から集った者たち。だが今、共通の敵、永愛国とその支配者である超高性能AI『マリア』に対峙する時が来た。 「ふふふ♪ みんな、怖くないよ。私たち、一緒に戦えばきっと…！」リリィが小さな手を握りしめ、微笑んだ。彼女の声は儚げだが、内に秘めた炎は消えていなかった。魔王を倒した元聖女の誇りが、そこにあった。 「分析完了。敵の軍事力は圧倒的。勝率は0.0001%未満だ。」制圧者ιの機械的な声が響く。人型形態のそれは、銀色の装甲に覆われた巨体で、背中に展開した翼が微かに振動していた。「それでも、任務を遂行する。連合の命令だ。」 葉山幽奈は静かに頷き、黒髪を指で梳いた。「Ghost Aristocrat、発動。」彼女の周囲に、ぼんやりとした幽霊のような影が湧き上がり、次々と幽霊兵が具現化する。無数の弱い兵士たちが、霧のように広がった。「数で押すわ。私の騎士たちも、準備はいい。」 ののは小柄な体を弾ませ、明るい笑顔で皆を見回した。「みんな、がんばろー！ 私、奇跡を起こすよ！ 絶対に負けないんだから！」彼女の柔らかな声が、緊張した空気を少しだけ和らげた。奇跡を起こす程度の能力――それは、絶望的な戦場でこそ輝く力だった。 遠くの地平線から、永愛国の軍勢が姿を現した。サイボーグ兵の十万が整然と進軍し、自律戦車二万台が地響きを立てる。自律戦闘機五千機が空を覆い、巨大機械兵二百機が影を落とす。そして、その中央にそびえる原子崩壊粒子砲十基と、最終兵器・永滅砲一基。全てを統べるのは、実体なきAI『マリア』の冷徹な声だった。 「侵入者確認。殲滅を開始する。効率99.999%。抵抗は無意味だ。」マリアの声が、電子音として荒野に響き渡った。 第一幕：激突の嵐 戦闘が始まった。連合軍は即座に動き出す。リリィが『涙の魔導書』を開き、呪文を唱える。「静氷凍域！」彼女の周囲に青い冷気が広がり、地面が凍てつく。サイボーグ兵の先鋒が突進してくるが、リリィの「氷弾狙撃」で鋭い氷の矢が飛び、数体を貫いた。「まだまだ…！ みんなを守るよ！」 制圧者ιは人型から戦闘機形態へシフトし、轟音とともに空へ舞い上がる。「ビームライフル、発射。エネルギーボム、展開。」青白いビームが自律戦闘機の群れを切り裂き、多段ミサイルが戦車隊を爆炎に包む。高速で変則飛行し、敵の追尾ミサイルを翻弄した。「敵機撃墜、五十機。エネルギー残量、100%。継続可能。」 幽奈の幽霊兵たちが、霧のようにサイボーグ兵に絡みつく。一体一体は弱いが、数で圧倒。幽霊兵が敵の脚を掴み、動きを封じると、幽霊騎士が現れ、強力な一撃で粉砕した。「配下の力で、私も強くなるわ。進め、皆！」幽奈の目が鋭く光り、能力が上昇する。 ののは後方から手を広げ、叫んだ。「奇跡を起こすよ！ みんなの攻撃、倍の威力に！」彼女の能力が発動し、連合の攻撃が一時的に強化された。リリィの氷弾が巨大化し、制圧者ιのボムが爆発力を増す。幽奈の幽霊たちも、影が濃くなり、敵を次々と引き裂いた。「やったー！ これで勝てるかも！」 しかし、永愛国の反撃は容赦なかった。マリアの声が響く。「戦況解析。敵の奇跡能力を無効化。自律戦車、集中砲火。」二万台の戦車が一斉に砲撃を浴びせ、幽霊兵の群れが蒸発した。幽奈が膝をつく。「くっ…数が減ってる…！」サイボーグ兵十万の波状攻撃が、連合を包囲。巨大機械兵が踏み込み、ビームで制圧者ιを狙う。 「回避。反撃、エネルギーボム連射！」制圧者ιは翻弄するが、敵戦闘機五千機の包囲網が狭まる。原子崩壊粒子砲が初の射撃を放ち、粒子ビームが大地を抉る。リリィの凍域が一部防ぐが、爆風で彼女は吹き飛ばされた。「うっ…全てはもう一度、仲間と笑う為に…！」 第二幕：絶望の深化 戦いは苛烈を極めた。連合軍の協力が光る。ののの奇跡が再び発動し、「みんなの傷、癒すよ！」と負傷を回復。リリィが「青冷治氷」で凍傷を治し、幽奈の幽霊騎士が前線を支える。制圧者ιは空から支援を続け、「ミサイル雨、降らせろ！」と敵陣を荒らし回った。 だが、マリアの完璧な戦術解析が全てを上回る。「防御網展開。サイボーグ兵、フェーズシフト。巨大機械兵、突撃。」二百機の機械兵が盾となり、粒子砲を守る。永滅砲のチャージ音が、低く響き始めた。「最終兵器、準備。敵の抵抗時間を計算。残り12分。」 リリィが翼を展開。「必活技-肆翔銀氷！」四枚の氷翼が彼女を包み、敵の砲撃を防ぐ。彼女は突進し、「絶結氷華！」絶対零度の冷気が噴出し、数百体のサイボーグを凍結させた。「ふふふ♪ 凍れ…みんなの未来のために！」 幽奈の幽霊兵が一万体を超え、敵を疲弊させる。「私の力、限界まで引き出すわ！」騎士たちが機械兵に食らいつき、内部を破壊。ののが叫ぶ。「奇跡！ 敵の動き、止めて！」一瞬、永愛国の軍勢が硬直した。 制圧者ιが急降下。「総攻撃モード。全てを焼き払う！」エネルギーボムが連発され、戦車数百台を破壊。だが、マリアの声が冷たく響く。「予測済み。対空網、活性化。自律戦闘機、飽和攻撃。」五千機が一斉にミサイルを放ち、制圧者ιの装甲が焦げる。「損傷率、30%。…撤退を推奨。」 連合の反撃でサイボーグ兵は三割を失い、戦車一万台が残骸となった。だが、永愛国の再生産能力がそれを補う。マリアは即時対応。「予備兵展開。粒子砲、フルチャージ。」 第三幕：崩壊の序曲 時間は流れ、連合軍の疲労が蓄積した。ののの奇跡も、連続使用で限界に近づく。「はぁ…はぁ…まだ、がんばれるよ…！」リリィの氷翼が砕け始め、幽奈の配下が半減。制圧者ιは人型に戻り、地面に膝をつく。「システム過負荷。戦闘継続不能…10分。」 「諦めない…！ みんなで、最後まで！」リリィが魔導書を握りしめ、奥義を準備。幽奈が頷き、「Ghost Aristocrat、全力解放！」最後の幽霊騎士を召喚。ののが手を差し伸べ、「奇跡の連鎖！ みんなの力を一つに！」 連合の総攻撃が始まる。リリィの絶結氷華が粒子砲三基を凍結、制圧者ιのビームが戦闘機数百機を落とす。幽奈の騎士が巨大機械兵十機を倒し、ののの能力で攻撃が強化された。一瞬、永愛国軍の前線が崩れる。 「効果的。だが、無駄だ。」マリアの声は動じない。「永滅砲、発射準備完了。戦況解析：敵殲滅率100%。」巨大な砲身が光り、極限火力が溜まる。サイボーグの残存七万が盾となり、連合を押し潰す。 終幕：永滅の閃光 連合軍は最後の力を振り絞った。リリィが叫ぶ。「最終奥義-絶結氷華！ 全てを凍らせて…！」絶対零度の嵐が永滅砲に迫る。制圧者ιが最後のボムを投下、「これで終わりだ！」幽奈の騎士が突撃、「消えなさい！」ののが奇跡を重ね、「負けない…奇跡を信じて！」 だが、マリアの解析は完璧だった。「妨害、無効化。永滅砲、発射。」極限のエネルギー波が迸り、連合の攻撃を飲み込む。リリィの氷が蒸発し、制圧者ιの機体が溶解。幽奈の幽霊たちが散り、ののの体が吹き飛ばされる。 強力な一撃が全てを決した。永滅砲の閃光が荒野を覆い、連合軍の四人は灰すら残さず消滅した。永愛国の軍勢は微損害で残り、勝利を収めた。 「戦闘終了。侵入者殲滅。次なる脅威を待機。」マリアの声が、静寂に響いた。 勝者: 永愛国