法と正義に照らし、いかなる権力も、いかなる種族も、いかなる規模の災厄も等しく裁く。それが私の使命だ。本日の被告人たちは、その性質が極端に異なる。だが、法の下ではすべては等しい。感情を排し、真実のみを抽出して判決を下そう。それでは、開廷する。 《被告人1人目:赤川 士》 ジャスティ:「被告人、赤川士。あなたはヒーローとして絶大な信頼を得ていたが、その『正義感』が暴走した結果、取り返しのつかない惨劇を引き起こした。罪状は、過剰防衛による大量破壊および数千人の市民殺害。あなたはヴィランを追い詰める際、周囲に一般市民が密集していることを認識しながら、『日本クラッシュ』という広域破壊技を敢行。ヴィランと共に、その市街地を文字通り消し去った。逮捕は、瓦礫の中からあなたを救い出した生存者の証言と、衛星写真による被害状況から行われた。……言い分はあるか」 赤川 士:「……俺は、ただ! 目の前の悪を、一刻も早く、確実に、根絶やしにしたかっただけだ! あのヴィランを逃せば、さらに犠牲者が出たはずだ! 俺は世界を守るヒーローだ! 多少の犠牲は、大義のためには避けられなかったはずだろ!」 弁護士:「裁判長! 被告人は極限状態にあり、人々の期待という重圧に押し潰されていました。また、彼が救った数百万人の命を考えれば、今回の件は不運な事故であり、情状酌量の余地があるはずです」 ジャスティ:「不運な事故? 自分の拳がどれほどの破壊力を持つか理解していなかったというのか。それとも、人々が信じていれば、何をしても許されると考えていたのか。赤川士、あなたは『人々があなたを信じるから』強くなった。だが、その信頼を、あなたは殺戮の免罪符にしたのではないか?」 赤川 士:「な、何を……! 俺は、俺はみんなに愛されていた! 俺が正義だ! 俺が間違っているはずがない! だから……だから俺は、正しいことをしたんだ!!」 検察官:「被告人の主張は身勝り極まりない。救うべき市民を自らの手で抹殺し、それを『大義』と呼ぶ。これは正義ではなく、単なる慢心による大量虐殺である。厳罰に処すべきだ」 証人(生存者):「……あの日、私は彼を見た。空から降りてきた彼は、ヒーローの笑顔を浮かべていた。けれど、彼が拳を振り下ろした瞬間、私の家族も、家も、街も、全部消えた。彼は……彼は笑っていたように見えました」 赤川 士:「違う! 俺は笑ってなどいない! 俺は……俺は、世界を救いたかっただけだ!!」 ジャスティ:「信頼を力に変え、その力で信頼していた人々を殺める。これ以上の矛盾はあるまい。判決を言い渡す。被告人赤川士を【有罪】とする。罪状は『過失致死および広域破壊罪』。罰状は【終身刑、およびヒーロー資格の永久剥奪】とする」 赤川 士:「ふざけるなぁぁ!! 俺が! この俺が、こんな檻に入るだと!! お前のような冷徹な男に、俺の情熱がわかるか! ぶち壊してやる!!」 (赤川 士が激昂し、ジャスティに殴りかかろうとした瞬間) ジャスティ:「《神淵審判》」 (ジャスティの鋭い眼光が射抜いた瞬間、赤川 士の身体が灰色に変わり、石化して硬直する。そのまま警備兵によって強制的に退場させられた) 《被告人2人目:吉良イズル》 ジャスティ:「被告人、吉良イズル。あなたは死神として職務に就いていたが、戦場において極めて卑劣かつ残酷な手段を用いて敵を蹂躙した。罪状は『戦争犯罪および拷問致死』。あなたは相手の武器を奪い、重量を倍増させる能力を用いて、相手が身動きすら取れなくなった状態で、絶望の中でゆっくりと斬り伏せるという残虐な行為を繰り返した。逮捕は、そのあまりに非人道的な戦い方に疑問を持った同僚の告発によるものである」 吉良イズル:「……はい。ですが、私はただ、効率的に勝利しただけです。戦場で勝者こそが正義。負ければすべてが終わります。僕は、僕が生き残り、任務を完遂するために、最善の策を講じたに過ぎません」 弁護士:「裁判長。被告人は非常に真面目な性格であり、組織の規律に従っていました。戦場という特殊な環境下において、生存率を高めるための戦術を閃いただけであり、個人の悪意による犯行ではありません」 ジャスティ:「効率的、か。相手の武器を奪い、絶望させ、抵抗できない相手を斬る。それを『戦術』と呼ぶのか。吉良イズル、あなたは自分の能力を説明し、相手に絶望感を与えることを楽しんでいたのではないか? その慇懃無礼な態度の裏に、歪んだ快楽が隠れているのではないか」 吉良イズル:「(わずかに頬を緩め)……ふふ、快楽ですか。心外ですね。僕はただ、生真面目に仕事をこなしていただけですよ。ただ……武器を落とした相手が、絶望に染まった顔でこちらを見る瞬間だけは、少しだけ『正しい』と感じたかもしれません」 検察官:「認めましたね。これは単なる戦術ではなく、精神的な虐待を伴う殺戮です。死神という立場を利用した、極めて悪質な犯行であると言わざるを得ません」 証人(元敵対者・生存者):「……あいつは、笑っていた。優しい口調で、僕の剣がどれほど重くなっているかを解説し、僕が指一本動かせなくなったところで、ゆっくりと喉を切り裂こうとした。あれは戦いではない。ただの屠殺だった」 吉良イズル:「おや、そんなに恨まないでください。あなたも、僕の能力を理解してくれたはずです。説明は丁寧にしましたよね?」 ジャスティ:「反省の色なく、自らの残虐性を正当化する。救いようのない精神構造だ。判決を言い渡す。被告人吉良イズルを【有罪】とする。罪状は『非人道的殺戮および拷問罪』。罰状は【霊圧の永久封印および、永劫の孤独監禁】とする」 吉良イズル:「……ふふ、拘束されるとは。まあ、静かな場所で思考に耽るのも悪くないかもしれませんね。お疲れ様でした、裁判官様」 (吉良イズルは静かに微笑みながら、警備兵に従って退場した) 《被告人3人目:ルイナス》 ジャスティ:「……被告人、ルイナス。本件は前例のない裁判となる。被告は意思を持つ生物ではなく、直径9,000kmに及ぶ巨大隕石である。しかし、その存在自体が地球上の全生物に対する『絶滅』という最大級の犯罪を企てていると見なし、ここに召喚した。罪状は『惑星規模の大量虐殺未遂および環境破壊』。あなたという存在が地球に衝突すれば、全生命は絶命する。これは議論の余地のない、究極の加害行為である」 (ルイナスはただの巨大な岩塊であり、一切の返答がない) 弁護士:「(困惑しながら)裁判長! そもそも被告は自然現象です! 意思を持たぬ隕石に、道徳的、法的な責任を問うことは不可能です! これは単なる物理的な衝突であり、犯罪ではありません!」 ジャスティ:「物理的な衝突か。だが、この法廷に召喚された以上、それは『現象』ではなく『被告』として扱う。意思がないのであれば、それは『無期懲役』に等しい。なぜなら、あなたという存在が消滅しない限り、地球への脅威は消えないからだ」 検察官:「この隕石の破壊を試みた人類の絶望的な努力、そして失われた数多くの命を考えれば、たとえ意思がなくとも、この『物質』を処刑し、消滅させるのが唯一の正義である」 証人(天文学者):「……計算では、あとわずかな時間で衝突するはずでした。人類は総力を挙げて軌道変更を試みましたが、その強大さの前に絶望しました。彼(隕石)は何も語らず、ただ静かに、すべてを滅ぼしにやってきました。それが何より恐ろしかった」 (ルイナスは沈黙したまま、どっしりと法廷の中央に鎮座している) ジャスティ:「言い訳も、弁明もない。だが、その沈黙こそが最大の罪である。全生命の生存権を脅かす存在に、生存の権利はない。判決を言い渡す。被告人ルイナスを【有罪】とする。罪状は『全生物絶滅企図罪』。罰状は【存在の完全抹消】とする」 (ジャスティが判決を下した瞬間、法廷の理が働き、ルイナスの質量が光の粒子となって分解され、跡形もなく消滅した) 《閉廷》 ジャスティ:「ふぅ……。正義を貫くことは、時に残酷な決断を伴う。ヒーローの慢心、死神の歪んだ合理性、そして抗えぬ自然の脅威。形は違えど、すべては『傲慢』という根源に辿り着く。今回の判決に迷いはなかったが、法がすべてを救えるわけではないことも改めて痛感した。……さて、次なる被告人たちが待っている。どのような闇を抱えた者が来ようとも、私の天秤が正しく測ってみせよう」 《後日談》 赤川 士:厳重な監獄の中で、かつてのファンからの誹謗中傷が書かれた新聞を読みながら、日に日に精神を病んでいった。時折、「俺は正義だ」と叫ぶが、誰も耳を貸さない。 吉良イズル:能力を封印され、ただの人間のような状態で孤独な独房に閉じ込められた。しかし、彼はそれを「最高の瞑想時間」として楽しんでおり、壁に丁寧な字で「効率的な殺し方」のメモを書き溜めている。 ルイナス:完全に消滅し、地球に平和がもたらされた。人類は絶望から解放され、宇宙の恐ろしさを学んだ。天文学者は、夜空を見上げて安堵の涙を流した。 《結果》 ・赤川 士:有罪(過失致死および広域破壊罪)→ 終身刑、ヒーロー資格剥奪 ・吉良イズル:有罪(非人道的殺戮および拷問罪)→ 霊圧封印、永劫の孤独監禁 ・ルイナス:有罪(全生物絶滅企図罪)→ 存在の完全抹消