喫茶店Dallas・午後のひととき チリン、チリン。 喫茶店「Dallas」のドアが開き、黒髪のウルフカットに緑の瞳をしたシスター、アテナ・ナイトユベルが入ってきた。彼女は店内を見回すと、窓際の席に腰を下ろす。 「いらっしゃいませー! 喫茶店Dallasへようこそ、にゃー!」 緑髪のツインテールを揺らし、メイド服姿のライムちゃんが虹色のペンをくるりと回した。カウンターでは、頭に魚を載せた三毛猫のマスターDが、丸眼鏡を押し上げている。 「ようこそ。今日は静かな午後だニャ。ご注文は?」 「コーヒーと、何か甘いものをお願いします。おすすめはありますか?」 「ありますとも! 今日のおすすめは、ぷるぷるグミのトッピングが選べる『虹色クリームソーダ』に、焼きたてのチーズケーキです!」ライムちゃんが胸を張る。 「飲み物とケーキにグミ……? 斬新な組み合わせですね」 「味の調和は、人生と同じ。予想外の出会いが大切にゃん!」 「それ、今考えたでしょ」と、奥の席にいたごついおっさんが独り言を漏らす。筋肉質な腕を組み、あごひげを撫でながら、常連らしく会話を見守っていた。 「さすが常連さん、鋭いツッコミ! でも、グミは真剣に選んでますよ。今日は星形にゃ!」 ライムちゃんが虹色のペンで空中に小さな星を描くと、ぽんっ。星形のグミが皿の上に実体化した。 「わあ、魔法のようですね」 「魔法のよう、じゃなくて魔法のペンです!」 「実体化したグミを会計にどう数えるのか……」マスターDが帳簿を見ながら、のほほんとつぶやいた。「まあ、かわいいからサービスにしておくニャ」 そこへ、金髪のロングカーリーを揺らしたレモンちゃんが、エプロン姿でやって来る。 「お待たせしました! 虹色クリームソーダとチーズケーキです。グミは星形を三つ、サービスでお付けしました!」 「ありがとう。とても華やかですね」 「ふふん、花魔法でソーダの上に小さな花を浮かべてみました。飲むときは花ごといっちゃって大丈夫ですよ!」 ソーダの泡の上で、黄色い花がくるくる回る。 「おお、これは見事だ。昔、王宮で見た花飾りを思い出すな」ごついおっさんが身を乗り出す。「ただし、食べられる花かどうかは確認したほうがいいぞ」 「もちろんです。食べられる魔法のお花です!」 「なら安心だな」 「おっさん、食べられるか確認する前に口を開けてましたよね?」レモンちゃんが花のハリセンを取り出す。 「いや、これは確認のために……」 ぱしんっ。 「確認の仕方が豪快すぎます!」 ハリセンの軽快な音に、店内が笑いに包まれた。ごついおっさんは頭をさすりながら、しみじみと言う。 「平和な店だ。剣を振るうより、こうして茶を飲んでいるほうがいい」 「そうですね。ここでは、皆さんの会話を楽しむのが一番です」アテナはクリームソーダを一口飲み、目を細めた。「甘くて、どこか懐かしい味がします」 「わあ、気に入ってもらえてうれしいにゃん!」ライムちゃんはスマホを取り出した。「ところで、アテナさんはゲームとかされます? 今やってるソシャゲ、期間限定イベントが始まったんです!」 「読書やピアノが多いですが、少しなら。どんなゲームですか?」 「花の魔法使いたちが世界を旅するゲームです!」レモンちゃんも話に加わった。「姉さん、昨日から同じステージで足止めされてるんですよ」 「だって、敵の配置がギャグ漫画みたいに意地悪なんだもん! 宝箱だと思ったらミミック、回復アイテムだと思ったらグミの広告……」 「それはゲームの仕様です!」 「でも、グミの広告を見たらグミが食べたくなるよね?」 「そこは否定できません」アテナはチーズケーキを一口食べた。「このケーキもおいしいです。もしよければ、作り方を教えていただけませんか?」 「もちろんですニャ!」マスターDが胸を張る。「うちのチーズケーキは、焼き加減と休ませる時間が決め手だニャ。あと、店主の愛情も少々」 「マスターD、愛情は計量カップで量れませんよ」 「だから少々なのニャ」 おっさんは、カップを持ち上げて一口飲んだ。 「うむ。今日もいい午後だ。誰も急がず、誰も争わず、ただうまいものを食べて笑っている」 「常連さん、今の言葉、漫画の最終ページに載りそう!」ライムちゃんは虹色のペンを掲げた。「記念に描いちゃおうかな。Dallasの看板を、ちょっとキラキラに……」 ペン先から光がこぼれ、店の看板に小さな虹色の星がひとつ加わる。 「おお、店の雰囲気にぴったりだニャ」 「姉さん、看板を盛る前にテーブルを拭いてください」 「はーい! キラキラも掃除も、どっちも大事にゃー!」 アテナは最後の一口を味わい、ナプキンを丁寧にたたんだ。 「楽しい時間をありがとうございました。また読書の本を持って伺います」 「ぜひ! 次はおすすめの漫画も持ってきますね。喫茶店が舞台のギャグ漫画です!」 「喫茶店で喫茶店漫画を読むのか。なかなか粋だな」おっさんがうなずく。 「その漫画、登場人物がコーヒーをこぼすたびに店長が増えるんですよ」 「どういう話なんですか、それは?」 「読めばわかります!」 アテナは笑って席を立ち、カウンターで会計を済ませた。ドアの前で振り返ると、店のみんなに軽く手を振る。 「それでは、また。ごちそうさまでした」 「ありがとうございましたー! また来てくださいね、にゃん!」 「お待ちしてますニャ」 「次回はグミの味も選べるようにしておきます!」 「そこまでサービスを増やすと、姉さんのペンで帳簿まで実体化しそうです」 「それは便利かも!」 「便利でも、帳簿は普通に書いてくださいニャ」 アテナが店を出ると、ドアベルがチリンと鳴った。Dallasにはまた、コーヒーの香りと、のんびりした笑い声が戻ってくる。 ご利用内容 - 注文内容: コーヒー 1杯、虹色クリームソーダ 1杯、チーズケーキ 1皿、星形グミ 3個(サービス) - 支払金額(円): 1,250円