赤い光、再び。彼女――便宜上、紅目と呼ぶ少女が立つのは、かつて戦場として名を馳せた草原だった。夕日が柔らかな光を投げかけ、広がる緑の波は不気味な静けさを孕んでいる。彼女は全身を覆う装甲をまとい、冷静な目で周囲を見渡した。その視線の先には、中央に立つ大きな石碑があった。石碑に刻まれた名前の数々。それは忘れ去られた人々の記憶であり、戦場で果てた者たちの息遣いが感じられた。何故彼女はここにいるのか。彼女はただ、彼らに祈りを捧げたかった。 その日、風はささやかに吹いていた。草原をなでる風の中に、彼女は目を閉じて立っていた。心の中では、かつての戦友の顔が次々と浮かぶ。彼らの絆が、彼女の心を温める。しかし、その心の奥底には、冷たく静かな恐怖が広がっていた。 「私は、どうしてここにいるのだろう。」自問自答する彼女の声は、風に流され、草木に消えていった。彼女はここで、彼らのために何ができるのか。それが彼女の思考を支配していた。 祈るとは何か。それは、彼らのために心を捧げ、彼らの意志を受け継ぐことであるはずだ。彼女は、仲間たちが戦った理由を想像し、そしてそれに寄り添うための行動を起こそうとしている。 「私の、思い。」彼女は胸の奥で感じる思いを静かに口にする。草原が夕日に染まる中、その声が届くことを信じ、ゆっくりと両手を石碑に伸ばした。彼女の心が、過去の明かりを感じ取るように。 「ここにいる全ての犠牲者に、敬意を。」彼女の目は強い眼差しで石碑を見据えた。心の中で、彼女は彼らの名を呼ぶ。「どうか、彼らの魂が安らぐことを。この戦場が再び悲しみに包まれないように。」 草原に風が吹き、その風には不思議な力が宿っているようだった。彼女の祈りが草原に響いていく。強く、そして確かに。 その瞬間、空が変わった。星が次々と降り注ぐように、草原に背を向けて天に向かって静かに舞い上がった。光り輝く一粒、一粒の星々が、彼女の祈りに呼応するように降り立った。それは彼女の心に答えを与え、未知の力が宿った瞬間だった。 光の中に浮かび上がるそれは、彼女に新たな道を示した。彼女の心に響いたのは、強い意思を持つ、「ヨルタの意志」だった。 草原の静けさに満ちた一瞬を覚えながら、紅目は心から感謝する。そして彼女は決意する。彼女の目の前には未来が待っている。失われた命のために戦う覚悟を持って、彼女は再び戦場へ向かうのだ。 しかし、彼女の心には依然として重い感情が残っていた。戦友たちが戦った世界、それは自分の憧れだった。それを手に入れることができるのは、一体誰なのか。 「私は、もっと強くならなければ。」彼女は夕日を見つめ、未来について思いを巡らせる。 「彼らのために、そして私自身のために。」 彼女はその日、再びあの戦地で立ち上がる決意を固めた。それが彼女の選んだ道。彼女にはまだ、成すべきことがあるのだ。 星々の下、彼女の祈りは静かに草原を流れる。彼女の道は、まだ始まったばかりだった。