荒野の行軍:絶望の鋼鉄連隊と夢想の鉄城 【序幕:不調和な護衛隊】 空は濁った鉛色に染まり、地平線まで続くのはひび割れた赤茶色の荒野のみ。そこを、時速10kmという鈍重な速度で、全長2kmに及ぶ巨大な要護衛艦が進んでいた。操縦席に座る二十歳の女性、フェアは、その明るい性格をそのまま体現したような快活な声で無線に叫んでいた。 「みんなー! 気分転換に歌でも歌いましょうよ! ガンドルド鉱山まであと95km! 頑張って、頑張ってー!」 彼女の能天気な声が響く中、護衛に就いた面々はあまりにも異様だった。一人は、抑揚のない早口で「……そういえば、このあたりの荒野では、夜になると消えた兵士の足音が聞こえるという話がありましてねぇ。怖いなぁ〜、おかしいなぁ……」と、不気味な怪談を語り続けるPMCコントラクター、【夜歩きの語り部】。彼にとってこの極限状態は、最高の「練習時間」だった。 その傍らには、冷徹な眼差しを持つ灰髪の少女、シズクモ。彼女は「壱角」としての矜持を胸に、黒い軍服をなびかせて黙秘していた。さらに、深い悲しみを湛えた藍色の髪の少女、シアラが、ボロボロの軍服を身に纏い、震える声で「……当機を……捨てません……よね……?」と呟いている。 そして、空と地にはナノメカニクル軍事帝国の絶望的な兵器群が配置されていた。高度3,700kmからすべてを見下ろすFHC-N3、地中で静かに脈動する全長9,000kmの巨虫WH-03KDF、そして空域を転移し、星の寿命を動力とする殲滅都市フォーアライター。彼らは「護衛」という名目のもと、この艦を目的地まで運ぶという至上命題に従っていた。 さらに、この奇怪な一行に同行するのが、世界の"バグ"とも呼ばれる夢想の鉄城「超大和型改4」である。主砲に巨大な城を背負ったその姿は、もはや戦艦という概念を超越していた。 【中盤:数億の絶望、地獄の包囲網】 行軍開始から30km地点。突如、地平線の彼方から地鳴りが響き渡った。フェアが「えっ、何? 地震?」と驚いた瞬間、地平線を埋め尽くすほどの軍勢が現れた。 襲撃したのは、【魔王軍】、【機械軍団】、【邪教団】。その数、推定数億。彼らは要護衛艦という巨大な標的を、文字通り「物量」で押し潰そうと殺到してきた。 「……嫌だなぁ、勘弁してくれよ〜、ウワアァーッ! 見てくださいよあの数! まるで地獄の底から這い上がってきた死者の群れみたいだ、変だなぁ〜」 語り部が早口で実況しながらM4A1のトリガーを引く。しかし、数億という暴力的な数の前では、個人の射撃など砂粒に等しい。 その時、シズクモが動いた。 「壱角──戰へ征かわん。」 直進型推進機「凬」が火を噴き、彼女は一筋の銀光となって敵陣へ突っ込んだ。時速数百メートルの加速がもたらす衝撃波だけで、前衛の機械兵たちが紙屑のように弾け飛ぶ。單刃式刺突刀「剋」が、魔王軍の精鋭たちを無慈悲に貫いていく。 上空からはFHC-N3が対物熱圧縮砲を乱射し、地中からはWH-03KDFが回転式掘削装置で大地ごと敵軍を飲み込み、粉砕した。しかし、敵の数があまりに多すぎる。数万の機械兵が要護衛艦の外壁に登り、装甲を齧り始めた。 「きゃあああ! 虫! 巨大な鉄の虫がついてるー!!」 フェアがパニックに陥ったその瞬間、超大和型改4が唸りを上げた。その精神性は折れない。どんな攻撃を受けても、それを「燃料」へと変換する歪曲空間防壁が展開される。さらに、旗艦技「天下を統べる巨砲」が発動した。 黄金のオーラが護衛隊全員を包み込む。シズクモの速度がさらに上がり、シアラの水圧剣がより鋭く、語り部の弾丸が必殺の精度を持つ。そして、超大和型改4の主砲「45口径51㌢連装超重力砲」が火を噴いた。 ――ドォォォォォォォン!! 一撃で地形が変わった。数万の敵が、重力崩壊によって一点に凝縮され、消滅した。しかし、戦いは終わらない。邪教団が禁忌の術式を展開し、空を裂いて巨大な「堕ちた神」の化身を召喚したのだ。 【終盤:特異点と絶望の特効】 召喚された「神」の巨大な足が、要護衛艦を押し潰そうと振り下ろされた。その衝撃で、要護衛艦は大きく傾き、谷間へと転落しそうになる。絶体絶命の瞬間、フォーアライターが動いた。 星間電磁投射狙撃砲が、数百万天文単位の外から、ピンポイントで「神」の核を撃ち抜いた。空間が歪み、神の化身は断末魔と共に爆散する。だが、その余波で要護衛艦はついにバランスを崩し、深い谷底へと転落した。 ガガガガッ!! という凄まじい衝撃と共に、要護衛艦は炎上し、大破した。もともと時速10kmという鈍重な巨体であったため、一度バランスを崩せば止まる術はない。船体はひしゃげ、操縦室のガラスが砕け散る。 「……う、うう……。もうダメかも……」 フェアが血を流しながら、意識を失いかけていた。周囲は炎と煙に包まれ、生存者は絶望的な状況だった。そこに、真っ白な機体をしたドローン、HLP-07が飛来した。救急車のようなサイレンを鳴らし、赤いホログラムを展開して着陸する。 HLP-07は迅速に救急物資を投下し、負傷したフェアと参加者たちに治療を施した。しかし、艦は完全に大破しており、もはや自力での移動は不可能だった。 【結末:護衛の成否と生存者の行方】 最終的に、護衛艦はガンドルド鉱山の目前まで到達していたが、最後の谷間での転落により大破。目的の「輸送」という点では、艦自体が機能を喪失したため、【護衛失敗】となった。 しかし、参加者たちは超大和型改4の不屈の精神と、HLP-07の献身的な治療、そしてフォーアライターの圧倒的な火力によって、全滅を免れた。 【生存状況および理由】 1. 操縦者:フェア【生存】 理由:HLP-07による迅速な応急処置と、超大和型改4の防壁に守られていたため。 2. 超大和型改4【生存】 理由:概念装甲および自己修復ナノマテリアルにより、大破はしたものの消滅は免れた。 3. 【夜歩きの語り部】【生存】 理由:高い生存本能と、超大和型改4のステータスバフにより、致命傷を避け続けたため。 4. シズクモ【生存】 理由:最高峰の装甲と機動力により、敵の攻撃をほぼすべて回避・弾いたため。 5. FHC-N3【生存】 理由:高度3,700kmという、誰も届かない絶対的な安全圏から攻撃していたため。 6. WH-03KDF【生存】 理由:撃破不能に近い特殊装甲を持ち、地中で安全に攻撃を行っていたため。 7. フォーアライター【生存】 理由:空域転移装置により、危険な接近戦を完全に回避していたため。 8. HLP-07【生存】 理由:対災害装甲を備え、救援目的で後から合流したため。 9. シアラ【生存】 理由:瀕死の状態になったが、スキル「…いやだ…」が発動し、全回復したため。 【後日談】 大破した要護衛艦の残骸の横で、フェアはHLP-07に手当をしてもらいながら、隣で相変わらず早口に「……それにしても、あの谷に落ちる瞬間の風の音、まるで誰かが耳元で囁いているようでしたねぇ。怖いなぁ〜」と語るコントラクターに、呆れた顔で笑っていた。 護衛は失敗したが、この奇妙な集団の絆(?)は、荒野の砂塵の中に深く刻まれたのであった。