第一章:静寂と喧騒の邂逅 冷たいコンクリートが剥き出しになった巨大なホール。そこには、国家直属の極秘部隊『K-NIGHT』への入隊を熱望し、あるいは何らかの事情で集められた百名近い男女がいた。空気は張り詰め、互いの実力を品定めする鋭い視線が飛び交っている。 そんな殺伐とした空気の中で、ひときわ異彩を放つ女性がいた。ピンク色の柔らかな髪に、場違いなほど清潔感のある緑のエプロン。そしてふんわりとしたドレスワンピ。彼女は穏やかな笑みを浮かべ、周囲の緊張などどこ吹く風といった様子で立っていた。 「ふふっ、皆さんとても緊張していらっしゃいますね」 彼女が小さく独り言を漏らしたとき、隣にいた一人の少女がぽかんとした顔で彼女を見上げた。現代的なJKの格好をしているが、その肌はどこか透き通っており、光の当たり方によってわずかに揺らめいている。ムッちゃんである。 「えっと……こんにちは。あなた、すごい格好だね! お店の人?」 ムッちゃんが素直に問いかけると、ピンク色の髪の女性は優しく目を細めた。 「ええ。私はドラゴンフルーツ屋さんの副店長をしている、リューカと申します。あなたはお名前は?」 「私はムッちゃん! 普通のJKだよ。あ、でも身体がスライムなだけだけどね」 ムッちゃんが屈託なく笑うと、その頬がぷるんと震えた。リューカは興味深そうにその様子を眺め、穏やかに応じる。 「スライムさんなのですね。とても可愛らしい質感です。私は、もしかするとあなたに我が店のドラゴンフルーツをお勧めできるかもしれません。召し上がればドラゴンになれますよ。もちろん、その後の生態記録や生活サポートまで責任を持って行わせていただきます」 「えぇ!? ドラゴンになれるの? 面白そうだけど、私、今のままでも十分重いから、もっと大きくなったら大変そう……」 ムッちゃんが少し困ったように頬を掻いたとき、会場に冷徹な機械音声が響き渡った。 『――参加者諸君、静粛に。これよりK-NIGHT入隊試験を開始する。各自、指定の待機エリアへ移動せよ』 アナウンスと共に、武装した兵士たちが通路を開放した。周囲の参加者たちが一斉に動き出す。競争心に突き動かされた者たちが、肩をぶつけ合いながら出口へと急いだ。 「おっと、そろそろ時間ですね。ムッちゃんさん、また後で。生き残って会えることを願っております」 「うん! リューカさんも頑張ってね!」 二人は軽く手を振り合い、それぞれの方向へと歩き出した。穏やかな会話の時間は終わり、ここからは国家の「牙」となるための残酷な選別が始まる。