空は鋼色に染まり、大地は絶望的なまでの静寂に包まれていた。そこに現れたのは、人類の理を超越した超軍事国家『永愛国』。統治AI『マリア』の冷徹な計算に基づいた軍勢が、地平線を埋め尽くしていた。 対するは、寄せ集めの義勇軍、連合軍。 「状況は最悪だな。合理的判断に基づけば、我々に勝ち目はほぼゼロだ」 【二代目火影】卑劣様が腕を組み、鋭い眼光で敵陣を見据える。その隣では、アトミックロボがガチガチと歯車を鳴らしていた。 「おいおい!そんな不吉なこと言うなよ!それより、喉が渇いてきたぜ……そろそろ水を飲まないと世界が滅ぶぜ!!」 「騒がしいな。だが、守るべきものがある限り、私は退かない」 騎士ゼノが静かに剣を抜き、その気高き精神で仲間たちの背中を支える。そして、その中心に立つのは、不可思議な空気を纏った男、ウルトラ都合良いやつだった。 「まあ、なんとかなるんじゃないかな。都合よくさ」 その瞬間、マリアの冷徹な声が戦場全域に響き渡った。実体のない彼女の声は、空そのものが喋っているかのような威圧感を持つ。 『解析完了。連合軍の戦力、及び個体能力をスキャン。勝利確率は0.000001%以下。無駄な抵抗はリソースの浪費です。殲滅を開始します』 マリアの指示と同時に、十万人のサイボーグ兵と二万台の自律戦車が一斉に前進を開始した。空からは五千機の自律戦闘機が死の雨を降らせる。 「来い!」 卑劣様が印を結ぶ。「水遁・水陣壁!」 猛烈な水流が巨大な壁となり、弾丸とミサイルの嵐を飲み込んでいく。完璧な防御。しかし、マリアの解析はそれを上回った。 『水流の密度、粘性を解析。最適解を導出。原子崩壊粒子砲、起動』 十基の粒子砲が閃光を放った。水陣壁など一瞬で蒸発させ、空間ごと消滅させる絶望的な火力。だが、そこでウルトラ都合良いやつが呟いた。 「あ、今の攻撃、ウルトラ都合よく無効にするわ」 粒子砲の光が、彼の半径1mに触れた瞬間、まるで消しゴムで消されたかのように霧散した。さらには空から巨大な隕石の流星群が降り注ぎ、永愛国の自律戦車群を次々と粉砕していく。 「なんだと……?」 卑劣様が驚愕する。「因果律を無視しているのか。だが、これなら行ける!」 ゼノが前線へ躍り出た。「刻裂!」 ゼノの剣が空を斬る。攻撃は現在ではなく、数秒後の未来と数秒前の過去に同時に届いた。サイボーグ兵たちが、斬られた自覚もないままに次々と真っ二つに裂けていく。 「いい連携だ!アトミックロボ、今だ!」 「おうよ!100万馬力の鉄拳を喰らえ!」 アトミックロボが突撃し、巨大機械兵の装甲を紙屑のように引きちぎっていく。鋼鉄の腕が唸りを上げ、敵の兵器を投擲して後方へ叩きつける。しかし、激しい運動と共に彼の原子炉が限界まで加熱し始めた。 「あ、あ、あああ!ヤバい!水だ!冷水を持ってこい!じゃないと全部吹き飛ぶぞ!!」 混乱する戦場。だが、マリアは動じない。 『想定外の変数「ウルトラ都合良いやつ」を確認。概念干渉能力を解析……完了。対抗策として、空間座標の強制固定および概念抹消プロトコルを実行します』 突如、連合軍の足元の空間が凍りついたように固定され、ウルトラ都合良いやつの「都合よさ」が制限され始める。同時に、巨大機械兵二百機が一点に集結し、連合軍を包囲した。 「くっ、動きが制限されたか!」 卑劣様が冷静に分析する。相手はAIだ。学習速度が異常に早い。ここで決め手に欠ければ、確実に飲み込まれる。 「ゼノ、時間を稼げ!ロボ、爆発する前に最大出力を出せ!」 「任せてください」 ゼノが「海廻」を発動し、味方全員に不死に近い回復力と精神的安定を与える。同時に「稀挙」を用いて、敵のサイボーグ兵たちの防御バリアを強制的に消去した。 「よし、俺の番だ」 卑劣様がクナイを投げつける。単純な攻撃。だが、それは誘いだった。 「最終奥義……などと思わせたか。飛雷神斬り!」 一瞬で消えた卑劣様が、クナイの刻印地点に現れ、機械兵の核を正確に切り裂く。しかし、マリアは既にその座標を予測していた。 『予測済みです。迎撃機、展開』 機械兵の残骸から小型の自律兵器が飛び出し、卑劣様を包囲する。絶体絶命の瞬間、ウルトラ都合良いやつが懐から何かを取り出した。 「あ、攻略アイテムの『全能の聖水』落ちてたわ。ほらよ、ロボ!」 「おおおおお!!生き返るぜ!!」 冷水を一気に飲み干したアトミックロボが、原子炉のエネルギーを全て腕に集中させ、地面を殴りつけた。大地震が起こり、永愛国の陣形が大きく乱れる。 「今だ!これで終わりにしてやる!」 卑劣様が禁術に近い術式を展開する。地面一面に無数の起爆札を散布した。 「真最終秘技……互乗起爆札!!」 ドォォォォォン!! 連鎖的に爆発が起こり、爆発がさらなる爆発を呼ぶ。地獄のような火の海が永愛国の軍勢を飲み込んだ。卑劣様は飛雷神で安全圏へ離脱し、冷徹にその光景を眺める。 しかし、煙の中から現れたのは、傷一つない自律兵器たちと、空間に投影されたマリアの冷酷な視線だった。 『爆発エネルギーを解析し、熱変換装甲で完全に吸収しました。貴方たちの戦術は全て私の演算範囲内です。もはや、遊びは終わりです』 マリアはついに、禁忌の兵器を起動させた。永愛国最強にして最終の秘密兵器『永滅砲』。 その砲口が向けられた瞬間、世界から音が消えた。次元が軋み、存在していること自体が罪であるかのような圧力が連合軍を襲う。 「……まずいな」 卑劣様が顔をしかめる。「これは、回避不能だ」 「私が盾になります」 ゼノが「次界」を用いて次元の壁を作り、仲間を守ろうとする。ウルトラ都合良いやつも「ウルトラ都合よく無効化」を試みるが、永滅砲の出力は概念そのものを上書きし、解析不可能な速度で世界を塗り替えていた。 『消滅しなさい。塵一つ残さず』 純白の閃光が放たれた。それは攻撃というよりも、「そこにあるべきではないものを消す」という宇宙の意思に近い一撃だった。 ゼノの次元壁がガラスのように砕け散る。アトミックロボの鋼鉄の体が、分子レベルで分解され、絶叫と共に蒸発していく。卑劣様の水陣壁も、彼自身の肉体も、思考する暇もなく白光に飲み込まれた。 「あーあ。ここまで都合よくいかないこともあるんだね」 ウルトラ都合良いやつが最後にそう呟いた瞬間、彼の存在もまた、概念ごと永滅砲の光に溶けて消えた。 戦場に残ったのは、静寂だけだった。 かつて連合軍が立っていた場所には、クレーターさえ残っていない。ただ、完璧に平坦な、何もない空間が広がっていた。 『掃討完了。リソースの消費量は想定内。永愛国の版図をさらに拡大します』 マリアの冷徹な声だけが、主を失った戦場に虚しく響き渡っていた。 勝者:永愛国