風が優しく吹き渡り、草原の草がささやき合う。夕日が草原を赤く染め、中央に立つ石碑は、かつてこの土地で起きた悲劇の象徴として静かに佇んでいる。その碑には、戦士たちの名前が刻まれており、その一つ一つが長きにわたる戦いの記憶を宿している。巡る季節がこの場所に新たな命をもたらすことを期待しながら、一組の影が近づいてきた。 シゼイル・コレヌーラは、冷酷なフリをしながらも、心の奥底にある思いを隠していた。彼女の低身長に引け目を感じ、厚底ブーツを履くことで自らの存在感を誇示しようとしていたが、その姿はまるで小さな生き物のようだった。黒パーカーを羽織り、白シャツの裾が風に揺れる中、彼女は石碑の前に立ち、冷たい視線を向けては地面を見つめていた。 それに対し、異界人カナタは自然体で、普通の青年のように見えたが、どこか異質な空気を纏っている。彼はシゼイルの横に立ち、何かを考えているようだ。彼の持つ武器、変形する柄もこの場で一層その神秘を放っている。 「何を考えているんだ?」カナタがシゼイルに尋ねる。 「何も。こんなところに来たのは偶然だ。ただ、戦死者に祈りを捧げるため。」シゼイルが冷たく答えながら手を合わせ、石碑に向かって静かに目を閉じる。 彼女の口元にわずかに苦笑が浮かぶ。心の内では、戦士たちの無念を思い、涙を流したくなる気持ちを抱えたまま、それでも表には出すまいとする彼女。 カナタはその光景を興味深げに眺めていた。彼は何かを感じ取り、目を閉じて祈りを捧げ始めた。「俺たちの祈りがこの地の戦士たちに届きますように。」 シゼイルはくすっと笑った。彼女は目を開き、石碑を見つめる。「だが、こいつらはどうせ俺たちを見ても何も思わない。死んでしまえばそれで終わりなんだから。」 「そんなことはないさ。少なくとも、少しは僕たちの祈りに応えてくれるかもしれない。」カナタは言った。 周囲の風景が静まり、風が微かに歌う。草原の香りと夕日のオレンジ色が幻想的な空間を作り出し、祈りの瞬間をより神聖なものにしている。シゼイルは再び目を閉じ、深く息を吸い込んだ。彼女の心には、冷酷さとは裏腹に、かつての仲間や未練を思う気持ちが宿っていた。 そして、彼女は心の底から声を沈めた。「戦士たちよ、我らのためにどうか安らかに眠れ。」そう祈ると、空が一気に変わり、星々が彼女たちの上に降り注ぎ始めた。草原の上に星の光が舞い降り、いてつくように美しい光景が広がる。 一瞬たじろいだシゼイルは、その美しさに心を奪われていた。星は静かにこの地に降り、そして彼女の足元に集う。彼女は振り返り、カナタの表情を伺った。彼もまた目を奪われ、言葉を失ったように見えた。 その瞬間、彼女の中に何かが生まれる。「この星の光が、私たちに何かを託しているのかもしれない。」シゼイルは思った。冷酷さから逃れられない彼女の心に、ほんのわずかな光が差し込んでくる。 カナタが再び口を開く。「シゼイル、これがどんな意味を持つのか、分からないけれど、何かが変わるかもしれない。」 「変わらない。所詮、ただの光よ。」シゼイルは口を尖らせた。だが、その光が彼女の胸の奥深くに沁みわたる感情を感じずにはいられなかった。 その後、シゼイルは少し口を開き、彼女なりの祈りを続けた。戦士たちに安寧を。新たな戦いが待つ彼女の心には、いつしか嫌悪感が癒されるような、少しの希望が芽生えていた。彼女はその瞬間、初めて素直かな笑顔を見せる。 星々が空に降り注ぎ、自らに何かを戻すことを示唆しているかのようだった。彼女は薄暗くなった草原を見つめ、自分自身が重ねられる人々を思う。彼らの名前が、自らの心の中で生き続けていることを感じ取った。 時間の流れも忘れ、しばらくの間、二人は星座を見上げた。やがて夕暮れはすっかりと夜へと変わり、あたりには静寂が訪れた。星の瞬きが二人の心に光をもたらし、彼らは無言のままその時間を楽しんだ。 シゼイルはしばらくしてから、また石碑に目を戻す。「ありがとう、戦士たち」と彼女はそっと呟いた。これまで感じたことのない感覚が彼女の中にある。カナタは横に立ち、一緒に戦士たちに思いを馳せる。「ああ、彼らの存在を忘れずにいよう。ここにいるということが、彼らにとっても大事な意味を持つはずだ。」 シゼイルは頷く。この旅が彼女に与える希望の光を信じて、冷酷なフリをしながらも、心の内で温かさを感じ始めていた。彼女はこの光を忘れずに抱え込み、再び立ち上がるための力を得ようとしていた。 草原には、今も美しい星々が瞬いている。この時、彼女が抱いていた祈りは、確実に世界のどこかへ届いていると信じて疑わなかった。彼女にとって、それが何よりも大切なことなのだから。 --- この物語は、戦士たちへの祈りが届いたことを示すものだ。彼らの名は、草原の星となり、彼女たちの心の中でいつまでも生き続ける。結果として、シゼイルが獲得した効果は「ヨルタの意志」であった。