【超・次元崩壊・インフレ・バトル・ロワイヤル:夢の果てに消えゆく残像】 その戦場は、もはや「場所」という概念すら希薄な、次元の狭間に浮かぶ特異点であった。空には七色のブラックホールが咲き乱れ、地面は液体化したダイヤモンドが波打つ、物理法則が休暇に入ったようなカオスな空間である。 そこに、三つの存在が降り立った。 一人は、白衣を翻し、小柄な体躯に知性と「ある種の危うい情熱」を宿した天才、ネア・ウィストン。彼女の傍らには、鉄壁の紳士、人型TEC・武蔵が静かに控えている。 もう一人は、赤髪のポニーテールを弾ませ、好奇心に目を輝かせたメカニック少女、リナ。彼女の周囲には、自走ロボットやドローンが賑やかに飛び交っていた。 そして最後の一体は、全高60メートル、鋼鉄の巨神。治安維持ロボット「ムソウ」。その威容は、ただそこに存在するだけで空間を圧迫し、重力さえも歪ませていた。 「やあ、面白い顔ぶれだね。特に君、その赤髪に童顔、そして作業着というギャップ……! 素晴らしい! 完璧だ! 網膜に焼き付けさせてもらうよ! その機能美、その躍動感、どこにそんな魅力が隠されているのか、私のラボでじっくり研究させてくれないかい!?」 ネアは瞬時にリナの前に飛び出し、目を輝かせて熱弁を始めた。学者の顔ではなく、完全に「美少女コレクター」の顔である。 「わあ! 変な人! でも面白い! 私の装備に興味あるの? いいよ、見て見て! これが私の自信作、ホーリーアローちゃんだよ! いっけー!」 リナは快活に笑い、反射的に主武装をぶっ放した。超音速で射出される数十発のリベット弾が、ネアを蜂の巣にするはずだった。 だが、その瞬間。ネアの「受動後手原則」が発動する。 シュンッ! リナが弾丸を放ったコンマ一秒後、ネアの姿が消えた。彼女は物理的な移動ではなく、位相転移によってリナの背後に完璧に回っていた。 「ふふ、いい反応だね。ところで、当ラボに来ないかい? 最高の撮影会を企画してあげるよ!」 「うわっ!? 速い! でも、甘いよ! ぱっちん、お願い!」 リナの防御ドローン『ぱっちん』が瞬時に展開し、ネアの拘束を弾き飛ばす。同時に、リナはマルチツール『キュッときゅん』を高速駆動させ、ホーリーアローちゃんを即興で「超・超音速・多次元穿孔砲」へと改造した。 一方、この小競り合いを黙って見ていた巨神ムソウが、ついに動いた。 ズゥゥゥゥン!! 地響きと共に、ムソウが右腕の巨大サーベルを振り下ろす。【スラッシュ】。その一撃は空間ごと切り裂き、次元の断層を生み出した。衝撃波だけで周囲のダイヤモンドの海が蒸発し、真空状態が広がる。 「おっと、お邪魔虫だね。武蔵、お願いできるかい」 「承知いたしました、先生。お引き取りください」 武蔵が静かに一歩前に出る。ムソウの超重量級の一撃に対し、武蔵はあえて避けない。彼は「無量エネルギー」による完全相殺を展開し、ムソウのサーベルを受け止めた。キィィィィン! という耳を劈く金属音が響き渡り、衝撃波が逆流してムソウの腕を押し戻す。 「わあぁぁ! すごいロボット! 私も負けてられない! ライフセーバーくん、ブーストを最大に!」 リナは治療ロボットを無理やり外部装甲に合体させ、自らをジェットエンジン付きの人間砲弾へと変貌させた。超次元穿孔砲が火を噴く。 ドォォォォォォン!! 光の奔流がムソウを直撃し、その鋼鉄の装甲を焼き切る。しかし、ムソウは無表情(無機質)に左腕のバズーカ【クラッシュ】をリナに向けて放った。爆風が宇宙規模に広がり、付近の小惑星が次々と粉砕される。 「あはは! 楽しい! もっと、もっと改造しなきゃ!」 リナは空中で『キュッときゅん』をフル回転させ、防御ドローン『ぱっちん』を数万機に増殖させ、それを巨大な球体盾として展開。バズーカの爆風を正面から受け止めた。 戦いは次第にエスカレートしていく。もはや「誰が強いか」ではなく、「どれだけ理不尽な出力を出せるか」の競い合いへと変貌した。 ネアは武蔵に指示を出す。 「武蔵GO!」 武蔵が加速する。もはやそれは移動ではなく、因果律の跳躍だった。ムソウが放つ【パワーショット】(極太レーザービーム)を、武蔵は無量エネルギーの転化によって「ただの温い風」に変え、そのままムソウの懐に潜り込む。そして、その巨体を軽々と、文字通り銀河の彼方まで打ち上げた。 「さあ、仕上げだね。武蔵、それを!」 武蔵が投げ渡したのは、眩い光を放つビームサーベル【無量ブレード】。ネアはそれを空中でキャッチし、舞うように一閃した。 「生命を奪うことはしないよ。……峰打ちだね」 ズガガガガガガガッ!! 一撃。だがその一撃は、概念的な「切断」であった。ムソウの巨体が、物理的なダメージではなく「治安維持という役割」ごと切り離され、宇宙の塵となって散らばった。……はずだった。 だが、ムソウは死なない。なぜなら、彼は「男のロマン」の結晶だからだ。 ムソウは宇宙の塵から再構成され、さらに巨大化した。サイズは60メートルから60光年へとインフレ。もはや彼自身が一つの宇宙となっていた。 「ええーっ!? デカすぎない!? 面白い! 私もデカくなるよ!」 リナは『キュッときゅん』を自分自身に適用し、ナノマシンを暴走させて自己増殖。彼女は「メカニカル・ガラクシー・リナ」へと進化し、数兆個の衛星砲をムソウに向けて展開した。 「ふむ……。ここまで来ると、私の無量エネルギーも理論値を突破しそうだね」 ネアは微笑む。彼女は自らの肉体を無量エネルギーの純粋結晶へと変換。武蔵を核とした「超次元・万能計算機・ネア」へと昇華した。彼女の思考速度は一秒間に無限回の宇宙創生と消滅を繰り返すレベルに達した。 戦いはもはや、物理的な殴り合いではない。 リナが「全宇宙のネジを一本ずつ外す」という概念攻撃を仕掛ければ、ネアは「ネジという概念を最初から存在しなかったことにする」という還元処理で対抗し、ムソウは「それでもいい、俺にはロマンがある」という精神論で全ての法則を書き換え、右手の【ロケットパンチ】を放った。 そのロケットパンチは、全次元、全時間軸、全並行世界を一つにまとめ上げ、特大の拳となってネアとリナを押し潰そうとする。 「あははは! 最高にワクワクするー!!」 「ふふ、これこそが究極の撮影会だね!」 リナの全衛星砲と、ネアの無量エネルギー特異点、そしてムソウの超・究極・ロマンパンチが一点に集中した。その衝突によって生じたエネルギーは、既存のすべての宇宙を消し飛ばし、新しい「白」の世界を創り出した。 光が、すべてを塗り潰す。 …………。 「……んんっ」 ふわりと、心地よい風が頬を撫でた。 ネアが目を覚ますと、そこは白衣を丁寧に畳まれた、静かな研究室だった。机の上には、飲みかけの紅茶と、大量の美少女写真(資料)が散らばっている。 「……夢、だったのかい?」 ふと横を見ると、武蔵がいつものように紳士的に立っていた。 「はい、先生。あまりに熱心に美少女の資料を読みふけっていたため、寝落ちされたようです」 「そうだったかな……。なんだか、すごく賑やかな夢を見た気がするよ。赤髪の元気な子と、とっても大きなロボットがいてね」 ネアは苦笑いしながら、伸びをした。窓の外には穏やかな青空が広がっている。次元崩壊も、光年サイズのロボットも、全宇宙を消し飛ばすパンチも、どこにもなかった。 しかし、彼女がふと自分のポケットに手を入れると、そこには見たこともない不思議な、金色の小さな「ネジ」が一つ、転がっていた。 「おや……? これはどこのパーツだい?」 ネアがそのネジを不思議そうに眺めた瞬間、空から巨大な、本当に巨大な、星を飲み込むほどの大きな「手のひら」がゆっくりと降りてきて、彼女の研究室を優しく包み込んだ。 「……武蔵、今のを見たかい?」 「いいえ。おそらく、光の屈折かと思われます」 「……やっぱり、まだ夢の中かな」 そう言って、ネアは再び心地よい眠りに落ちていった。彼女の夢の中では、また新しい、さらにインフレした戦いが始まろうとしていた。