江戸時代寛永10年。桜の花びらが舞う中、徳川将軍の御前には、異なる立場と背景を持つ二人の剣士が並んでいた。御前では、彼らの試合の開始が待たれている。古老の剣客妖忌は、白髪を撫で付けた髪型に立派な髭を携え、周囲の注目を集めていた。一方、忍装束を身にまとった蝉の助は、軽快な口調で周囲を楽しませつつも、その目は真剣だった。 「さぁ、始めるぞ、そなた」と妖忌は蝉の助を見つめ、声を落ち着かせて言った。「私の剣、楼観剣を受けてみるがいい。」 「おお、妖忌さん!それはお手柔らかにお願いしたいぜ!」蝉の助はにやりと笑う。「何せ俺は、卑怯とは言わせぬ戦い方で行くからな!」彼の言葉には自信が溢れていた。 試合が始まると、妖忌は静かに構えた。しかし、その動きは一瞬で速やかだった。彼の長刀が振り下ろされ、空気を切り裂く音が響いた。 「来い!」蝉の助は瞬時に体を横に回し、するりと妖忌の刀を避ける。「おっとっと、さすがに百戦錬磨といったところか!」彼は軽快に話しながらも、内心は冷静に状況を分析していた。 妖忌は冷静に振り返り、再び刀を構える。「音なるもの、刃の前に無ければ、何を以てして撃つか。」彼の言葉には一抹の威厳があり、観る者はその歳月の重みを感じた。 「俺の方が若いし、これからも長生きするからな!」蝉の助は再び距離を取りながら言った。「さあ、試してみな!俺の音刀、蝉逆難を!」彼の刃が放たれると、刀の中心からほどけた音が無音のように周りに響き渡る。 妖忌はその音に一瞬気を取られた。彼の身体に不調が訪れ、力が抜ける。瞬時、呼吸が乱れ、視界が霞んでくる。しかし、妖忌はそれを差し引く余力があり、反射的に楼観剣を振り回した。蝉の助は待ってましたとばかり、巧みに距離をとる。 「おっと、もっと近くに来てくれるか?我が剣の音、恐るなかれ!」蝉の助が言うが、心の底では少し焦っていた。彼の誘導を受け、妖忌はただ一歩、前に進んだ。 「見せてみよ、そなたの真の力を。斬れぬものなどない。」妖忌は毅然とした声で蝉の助に挑む。 音刀から発生する無音の気配が、再び蝉の助を包み込む。そして、妖忌もまた意を決し、白楼剣を抜く。これこそが迷いを断ち切るための剣だ。 瞬間、互いの刃が交わる。蝉の助の身体は邪念に蝕まれ、技の精度が鈍る。一方、妖忌はその刃を見逃さなかった。 「良いぞ、迫ってきたな!」妖忌が叫ぶと、今度は長刀が蝉の助の手を軽く斬る。「痛っ!これは意外に厄介だな!」蝉の助は一瞬の隙を突かれ、右手に小さな傷を負った。 果敢に挑む蝉の助だが、妖忌の剣の威力は絶大で、次第に押され気味になってしまった。だが、彼は決して諦めない。「ここで倒れるわけにはいかないぜ!俺はまだまだ強いんだから!」 再び襲い掛かる蝉の助は、執拗に音刀を振った。だがその時、妖忌の半霊が彼の行動を読み、流れるように動く。それを機に妖忌は一気に攻め込み、健康状態を削るように刀を振る。 「今だ、迷いを斬れ!」妖忌は一声を上げて、蝉の助の額に刀が触れる瞬間、真実を斬る。「ああ、俺の負けだ……」蝉の助は顔を青ざめ、膝をつく。 意識が薄れかけながらも、空に舞う桜の花びらを見上げた。 賞賛の声が上がり、将軍が口を開く。「妖忌、素晴らしき剣技よ。お前は今回の勝者だ。」 妖忌は蝉の助に手を差し伸べた。「そなたもよく戦った。これからの修行でさらなる力を得るに違いない。」 「感謝します、妖忌さん……」蝉の助は微笑み、敗北を受け入れた。「次こそは、もっと強くなって戻ってくるからな!」 すると将軍が言葉を続ける。「勝者にはこの誉れをもって与えたい。和歌を一つ、お願い申し上げる。」 妖忌は静かに考え、ゆっくりと詠んだ。「桜舞いし、道の彼方に、真実見え、剣の道を、共に往かん」 観衆から拍手が沸き起こり、妖忌はその心を一つにした瞬間の旨さを感じた。桜の花が舞う中で、自らの剣が切り開いた新たな道がその先に待っている。”