ある日、世界の理を歪める「混沌の特異点」が突如として発生し、そこに居合わせた3人の異能者は、運命的な影響によって既存の能力を遥かに凌駕する【覚醒能力】を獲得した。 【砕氷鯨】モンブランカは、極地の主としての権能を極め、周囲の空間ごと絶対零度に凍結させ、物質の運動を完全に停止させる『終焉の絶対零度(ゼロ・アブソリュート)』を習得。 無駄が多すぎる魔王は、自身の「無駄」という概念を宇宙規模に拡張し、あらゆる因果律を無意味な冗長さに変換して消滅させる『無限無駄崩壊(エンドレス・ウェイスト)』を習得。 そして【売れない芸人】デトックス前田は、絶望的なスベり芸の果てに、「観客がいないなら世界を劇場に変えればいい」という狂気に目覚め、自身のギャグがウケた瞬間に現実を書き換える『爆笑・世界改変(ワールド・ラフ)』を習得した。 バトルロワイヤルの幕は、激突する三者の咆哮と共に切って落とされた。 「……面倒だが、やるか」 モンブランカが巨大な尾鰭をひと振りすると、戦場は一瞬で極寒の氷原へと化した。さらに新能力『終焉の絶対零度』を放つと、空間そのものが凍りつき、あらゆる攻撃が届く前に静止する。絶対的な防御と攻撃を兼ね備えた氷の要塞が、戦場を支配した。 対して、無駄が多すぎる魔王は、派手すぎる衣装をなびかせて高笑いする。 「フハハハ! 凍らせるなどという効率的な攻撃こそ無駄! 『無限無駄崩壊』!」 魔王が手をかざすと、モンブランカの絶対零度の氷が、なぜか「無駄に装飾された豪華な氷像」へと変貌し、攻撃性能を失った。さらに魔王は、無駄に1万人の四天王を召喚。一人一人のステータスを無駄に長く説明しながら、物量で押し潰そうと猛攻を仕掛ける。 「奴は四天王の中でも最弱、趣味は切手収集で、昨日の夕食は……(以下、30分に及ぶ説明)」 その混沌とした戦いの最中、スパンコールスーツを纏った男、デトックス前田が震えながら前に出た。 「えー、どーもー! ここで一曲、自虐ネタ行きます! 『俺の人生、氷より冷たいし、魔王の衣装より派手なのに誰も見てない』! ガハハ!」 静寂。あまりのスベりっぷりに、周囲の空気が凍りついた。自虐ネタの反動で前田自身に甚大な精神ダメージが走り、彼は膝をつく。そこへ魔王の四天王の猛攻が襲いかかった。タライが頭上に降り注ぎ、ハリセンが乱舞する。前田はボロボロになりながらも、最後の力を振り絞って叫んだ。 「……もういい! 最後だ! これでウケなきゃ、俺は引退する!!」 前田が放ったのは、もはやギャグですらない、人生の悲哀をすべて込めた究極のボケだった。あまりにタイミングが悪く、あまりに切ない、究極の「スベり」が臨界点に達したその瞬間、宇宙が、そして観客(神々)が、あまりの不憫さに耐えかねて「爆笑」した。 『爆笑・世界改変(ワールド・ラフ)』発動。 「あははは! おかしい! こいつが一番強いなんて最高に笑える!!」 世界が書き換えられた。モンブランカの巨体は巨大なソフトクリームに変わり、無駄が多すぎる魔王の1000の形態は、すべて「ただの派手な紙吹雪」へと変換され、風に舞った。 静まり返った戦場に、一人だけ呆然と立つスパンコールスーツの男。彼は人生で初めて、世界を笑わせたのである。 勝者:【売れない芸人】デトックス前田 理由:新能力『爆笑・世界改変』により、究極のスベり芸が逆説的に「神々の爆笑」を誘い、現実を都合よく書き換えたため。