影光と波濤の激突 荒涼とした古戦場に、風が低く唸りを上げていた。灰色の空の下、シルヴァリスと水在月流は対峙していた。ハーフエルフの副団長、シルヴァリスは双剣を構え、魔族の血が静かに脈打つ。対するは波濤剣術の使い手、水在月流は清激剣を握りしめ、冷水のような瞳で相手を射抜く。二人は互いに約束した――全力の一撃のみを放ち、回避も防御もせず、ただ正面から激突する。敗者は気絶し、命は残る。 シルヴァリスは深く息を吸い込み、闇雷剣と光風剣を交叉させた。彼女の瞳に雷光が宿り、透明な魔族の翼が微かに震えるが、地上での剣舞を信じて抑え込む。心臓の鼓動が加速し、魔力が全身を駆け巡る。まず、闇雷剣に【ヘルサンダー】の暗黒の雷撃を注ぎ込む。剣身が黒く輝き、稲妻の渦が巻き起こる。次に光風剣へ【ヘブンウィンド】の天聖の風を纏わせ、刃が白く輝き、風の渦が剣周りを高速で回転する。彼女の足が大地を蹴り、筋肉が鋼のように引き締まる。双剣を後ろに振りかぶり、魔族の血がもたらす闇の加速で一気に前進。【影光の裁き】が発動する――闇雷剣で高速の雷撃を放ち、光風剣で風の刃を連続で斬りつけ、突進しながら光魔法の衝撃波を爆発させ、最後に双剣の乱舞で敵を仕留めるはずの必殺技が、すべてを込めて解き放たれる。彼女の髪が風に舞い、翼の影が一瞬だけ地上に映る。雷鳴のような咆哮を上げ、シルヴァリスは流へ向けて全力で突き進む。 一方、水在月流は静かに構えを取る。冷静な視線がシルヴァリスの動きを捉え、清激剣の柄を握る手に力がこもる。彼の呼吸は穏やかだが、内なる波濤が渦巻く。無尽連撃の剣士として知られるが、この戦いは一撃のみ――故に最終奥義【終.海底摸月】を放つ。刀身に波の如き気配が宿り、彼の足がゆっくりと踏み込む。まず、腰を落とし、剣を腹の位置まで引き抜く準備。筋肉が連動し、肩から腕、指先までが一つの流れとなる。凪を払うかの如き強烈な一文字切り――海底で月を探るように、静から爆発的な動へ移行する。流は息を吐き、地面を蹴る。刀が弧を描き始め、周囲の空気が引き裂かれる音が響く。波濤の力が刀に集中し、刃が青白く光る。彼の瞳に満月が映り、冷徹な決意が宿る。一瞬の静寂の後、流は全力で斬り込む。 二人の一撃が激突した瞬間、大地が震えた。シルヴァリスの【影光の裁き】が頂点に達し、闇雷剣の雷撃が流の清激剣に直撃。黒い稲妻が刀身を這い上がり、爆発的な閃光が戦場を照らす。同時に光風剣の風の刃が刀の軌道を切り裂き、光魔法の衝撃波が流の周囲を薙ぎ払う。だが流の【海底摸月】は止まらない。一文字の斬撃がシルヴァリスの双剣乱舞に割り込み、雷と風の渦を正面から引き裂く。刀の切れ味が空気を焼き、波濤の力が衝撃波を押し返す。二つの力がぶつかり合い、雷鳴と風嚎が交錯。シルヴァリスの翼が一瞬発現し、魔力が爆発するが、流の冷静な一撃がそれを上回る。衝突の中心で火花が散り、大気が裂ける轟音が響き渡る。シルヴァリスの双剣がわずかに遅れ、流の刀が彼女の肩を掠め、魔力の奔流を断つ。 爆風が二者を吹き飛ばし、シルヴァリスは後退しながら膝をつく。闇雷の余波が彼女の体を蝕み、視界がぼやける。流の斬撃が魔族の血を刺激し、激痛が全身を駆け巡る。彼女は抵抗するが、力尽きて気絶する。一方、流は傷を負いつつも立ったまま、息を整える。波濤の剣は勝利を刻んだ。 勝者: 水在月 流