日が傾き、炎が沈む頃、シゼイル・コレヌーラは周囲を見渡した。薄暗い雲の隙間から見える微かな月明かりで、彼女の黒いパーカーがひんやりとした風に揺れる。その姿は、周囲の緊張感を和らげるものとは程遠く、冷酷な瞳が戦場を見据えていた。彼女の心には、剛力である八百万の神機の存在が突き刺さっている。 「夜明けは遠い、まだ楽しもうじゃないか」彼女の心の奥に潜む興奮を抑えきれず、独り言のようにつぶやいた。この少女は、身体の低さを気にすることはもうなかった。彼女は、今宵の獲物を狩ることに全てを賭けていた。 近くには、巨大な三連型地中トンネル穿孔機が待機していた。全長157メートル、重量99.2トンのその姿は、周囲の機械とは明らかに異なっていた。ダイヤコーティングされたナノカーボン合金製のドリルパーツは、破壊力を秘めた武器である。負荷を一切感じさせないエンジンの唸り声が、背景の静寂を破った。 シゼイルはそのドリルを見上げ、今後の展開を想像した。討伐を達成するためには、この巨大な機器と一丸となって行動する必要がある。彼女は流れる激流を両手の中に集め、水爪に変形させた。彼女の心はすでに高揚していた。 それと同時に、参加者たちも一斉に一致団結し、八百万の神機との戦闘に向けて進んでいった。彼女の位置が最前線に決められ、心の奥に渦巻く興奮が髪の根元から彼女の身体を駆け抜けた。 突如、紅蓮の炎を纏う虎型の兵器が姿を現し、彼女の前に立ちはだかった。八百万の神機の第一印象は壮大で、圧倒的で、彼女の気持ちを掻き立てるのに十分だった。彼女は水猟を極め、周囲で同じく戦闘準備を整える参加者たちの指示を待った。 八百万の神機は、戦闘開始の合図と共に動き始め、その動力である変異型B粒子の活性化が周囲に波及した。 「それなら、行くわよ!」シゼイルが叫ぶ。その瞬間、彼女は急激な速度で八百万の神機へと向かっていった。水爪を振りかざし、鋭い斬撃を放つ。激流が彼女の指先から解き放たれ、神機の側面に深々と切れ込みを入れた。 だが、八百万の神機は簡単に倒れない。炎が彼女の周囲を包み込み、もどかしさが残った。敵は「烈炎爪牙」状態へと移行し、その力を倍増させてきた。青い炎が激しく渦巻き、彼女の懸命な攻撃を無力化しようと迫ってくる。 「炎喰!」「鋳竈!」八百万の神機は、特攻攻撃を続けてくる。焼灼され、確実に体力を奪われていく中、シゼイルは冷静さを取り戻した。彼女の目に獰猛な光が宿る。 「捕食の宴!」彼女は続けざまに、周囲の炎を逆手に取り、自らの水爪で青い炎を切り裂こうとする。膨大な数の炎の前に立て続ける攻撃を繰り出し、敵を捉えていく。体を委ねることによって、彼女自身の技術を生かし、必死で回避し続けた。 仲間たちも決して遅れを取らない。共に戦う者たちの力が、彼女の手助けとなっていた。 それでも、八百万の神機はなおも立ち向かってきた。結界内に引き込まれ、シゼイルを含む参加者たちは、じわじわと追い詰められた。 「こうなれば…」彼女の脳裏に一つのアイディアが閃く。全てを一気に決めるつもりだった。足元に激流を床のように発生させ、「紺碧の興宴」を繰り出す。「渦中に映る双月」で敵を引き摺り込み、意識を狩り取る準備が整った。 周囲に目を配り、参加者たちの協力の下、彼女は自信に満ちた顔で周囲を見まわし、合図を送った。結界から飛び出し、全力で八百万の神機へと突撃した。 周囲の仲間たちも理解したように、それぞれが攻撃に移る。全員が彼女の意図を受け取り、共鳴した。彼らの力が重なり、八百万の神機は辛うじて少しの戦慄を覚えながら反撃を試みた。 水の激流が結合し、八百万の神機を一瞬にして包み込む。信じられない力が渦を巻く最中にシゼイルは、自らを信じて斬撃を放った。そして、全員が敵を囲み、その一瞬の隙間に一気に押し込む。 炸裂音が響き渡り、シゼイルは目を見開いた。八百万の神機は、遂に地にひれ伏した。勝利を確信し、彼女は一瞬何も考えられなかったが、周囲の歓声がそれを引き戻す。「やった!やったわ!」彼女は心の中で叫んだ。 その時、解析進捗を計測するシステムの音が響く。 「八百万の神機の解析進捗:1.8%」「変異型B粒子の解析進捗:1.2%」 戦闘が終息していく中、シゼイルは仲間の輪の中で唇を噛み締めた。今はまだこの戦いを楽しめる。彼女は心の深淵から来る興奮を感じながら、さらなる挑戦が待ち受けていることを思った。しかし、今はただの安堵感に浸ることが許された。 「次はもっと楽しもう。夜明けは遠いから」シゼイルは小さくつぶやいた。新たな戦いが待ち受ける中、彼女は細い体躯を震わせながらも、再び戦場へと向かう決意をしっかりと持っていた。