喫茶店Dallas・今日も平和な午後 カラン、コロン。 喫茶店Dallasのドアが開くと、ライムちゃんが虹色のペンをくるりと回した。緑のツインテールが揺れ、メイド服のポケットからスマホがちらりとのぞいている。 ライムちゃん「いらっしゃいませにゃー! あっ、タカシさん! 今日は漫画読む? ソシャゲする? それともグミを食べながら、漫画を読むソシャゲをする?」 タカシ「まずは注文かな。アイスコーヒーと、プリンをひとつお願いします」 ライムちゃん「了解にゃん! プリンは正義、アイスコーヒーは大人の余裕……っと」 ライムちゃんは虹色のペンで伝票に注文を書いた。すると伝票の上に、描いた覚えのない小さな猫の絵がぷるんと立体になって現れた。 猫の絵「にゃー」 ライムちゃん「あっ、注文伝票にまで猫が生えた! かわいいから採用にゃん!」 マスターD「ほほう。伝票の猫が店のマスコットになれば、宣伝費をかけずに集客できるかもしれんのう」 頭に魚を載せた三毛猫のマスターDは、丸眼鏡をくいっと上げて、のんびりと頷いた。 タカシ「マスター、魚は今日も頭に載ってるんですね」 マスターD「うむ。これは帽子ではない。魚じゃ」 タカシ「そこは見れば分かります」 マスターD「では説明は成功じゃな」 カウンターの向こうから、レモンちゃんが花びらをひらひら舞わせながらやってきた。金色の巻き髪が、店内の照明を受けてきらきら輝く。 レモンちゃん「お待たせしました。アイスコーヒーとプリンです。花魔法でプリンの周りに花を添えてみました!」 プリンの皿には、食べられる花が一輪。さらに、プリンの横には小さな立体の王冠まで置かれていた。 タカシ「プリンが王様みたいだ」 レモンちゃん「本日の主役ですから。どうぞ、プリン王に忠誠を誓ってからお召し上がりください」 ライムちゃん「プリン王ばんざーい! にゃん!」 タカシ「いただきます」 タカシがスプーンを手に取ると、王冠がころんと倒れた。 レモンちゃん「あっ、王冠が! プリン王、即位三秒で政権が揺らぎました!」 ごついおっさん「ふむ……王冠が倒れても、プリンの尊厳は揺らがん。人生も同じだな」 黒革のジャケットを着たごついおっさんが、隣の席から静かに会話へ加わった。あごひげを撫でる仕草には、かつて王宮で剣士として仕えていた頃の風格がある。 ライムちゃん「おっさん、今の名言っぽい! 漫画にメモしていい?」 ごついおっさん「いいとも。だが、プリンを食べる前に剣を抜くような展開にはするなよ」 レモンちゃん「このお店で戦闘展開にする人はいません! ここは喫茶店です!」 マスターD「そうじゃ。今日は平和に商売をする日じゃからな。もし不審者の男が乗り込んで従業員に乱暴したら、俺のプリンターで超巨大ビルを創造して頭上にドカーンさ」 ごついおっさん「マスター、平和に商売をする話から、急に規模が都市開発になっているぞ」 マスターD「むむ。では、巨大ビルではなく、巨大なケーキにしておこう」 レモンちゃん「そういう問題じゃありません! そもそも今日は誰も乱暴してません!」 ライムちゃん「じゃあ巨大ケーキを描いて、みんなで食べるのは?」 レモンちゃん「それなら平和です。カロリーの問題はありますけど」 タカシ「僕は普通のサイズで十分です」 ライムちゃん「了解にゃー!」 ライムちゃんが虹色のペンを構えると、レモンちゃんは白い魔力で小さなケーキの立体模型を作った。模型はテーブルにちょこんと着地し、苺の飾りがきらりと光る。 レモンちゃん「本物のケーキではなく、飾り用の3D魔法です。食べられませんよ」 ライムちゃん「えっ、食べられないの? じゃあ、食べられるケーキを描くにゃん!」 虹色のペンが走り、ふわふわのショートケーキが実体化する。 マスターD「すばらしい。試食係の確保も完了じゃ」 ごついおっさん「ただのケーキが、あっという間に会議の議題になったな」 みんなはケーキを切り分け、漫画を読みながら、ライムちゃんのスマホに表示されたソーシャルゲームの画面をのぞき込んだ。 ライムちゃん「このイベント、あと一回で限定衣装が出るんだよね。メイド服の上に猫耳メイド服を重ね着するコーデ!」 タカシ「メイド服にメイド服を重ねるんですか?」 ライムちゃん「そう! 布の面積が増えるほど、かわいさも増えるにゃん!」 レモンちゃん「その理屈だと、最後には布団を着ることになりますよ」 ライムちゃん「天才! 冬の新作コスプレは布団メイドに決定!」 ごついおっさん「寝間着と制服の境界が消えたな……」 マスターD「新商品として『お昼寝セット』を出せば、客単価も上がるかもしれん」 レモンちゃん「みんな、話題の広がり方が自由すぎます!」 にぎやかな会話の合間に、タカシはアイスコーヒーを飲み、プリンとケーキを味わった。やがて窓の外が少しずつ夕色に染まる。 タカシ「ごちそうさまでした。今日は楽しかったです」 ライムちゃん「また来てね、にゃー! 次は猫耳メイド服の漫画を持ってくる!」 レモンちゃん「お待ちしています。次回はプリン王の王冠を、倒れにくいものに改良しておきますね」 ごついおっさん「王冠の改良か。平和な喫茶店らしい課題だ」 マスターD「会計はこちらじゃ。プリンの王国から税金は取らんが、ケーキ代はいただくぞ」 タカシ「はい。では、また」 タカシがドアを開けると、伝票猫が小さく手を振った。 伝票猫「にゃー」 ライムちゃん「伝票猫もお見送りしてる! ✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 --- お会計 - アイスコーヒー:450円 - プリン:500円 - ショートケーキ:600円 - 支払金額:1,550円