パッショーネの銃弾と戦闘メイドの影 ナザリック地下大墳墓の第九階層、薄暗い回廊に冷たい石畳が広がる中、二つの影が対峙していた。一方はイタリアの裏社会を駆け抜けた男、グイード・ミスタ。帽子を被り、腰にリボルバー拳銃を携えた彼は、鋭い視線で周囲を睨みつけていた。もう一方は、戦闘メイドのシズ・デルタ。赤金のロングヘアーが静かに揺れ、翠玉の瞳が無感情に光る自動人形の彼女は、白銀の魔導銃を構え、必要以上の言葉を発さず、ただ任務を遂行するのみだった。 「ふん、こんな地下の穴蔵で何の用だ？ 俺を呼びつけたのはお前か？」ミスタが軽口を叩きながら、銃を抜く。シズは無言で銃口を向け、翠の瞳がわずかに細まるだけ。彼女の存在は機械的な冷徹さそのもので、ミスタの挑発にも反応しない。「喋らねえのか？ まあいい、言葉より拳……いや、弾がものを言うさ。」 戦いの火蓋は、シズの魔導銃から切られた。ノーマルモードの白銀の銃身が低く唸りを上げ、魔力を込めた弾丸が放たれる。弾は空気を切り裂き、ミスタの胸元を狙って一直線に飛ぶ。その速度は常人の目を欺くほど速く、防御を貫通する魔力の輝きを帯びていた。ミスタは咄嗟に身を翻し、弾丸の軌道を読み取る。驚異的な集中力が彼の視界を研ぎ澄まし、わずかな風切り音からその進路を予測した。「くそっ、速えな！」彼は壁際に飛び込み、弾が石畳を砕く音を背に受けながら反撃の隙を窺う。 「やれ！ ピストルズ！」ミスタの叫びに、虚空から小さな人影が七つ現れる。スタンド『ピストルズ』――No.1からNo.7までの小鬼たち（No.4を欠いた七人）は、それぞれが独立した意思を持ち、ミスタの銃弾に取り付く。リボルバーから六発の弾丸が高速で発射され、ピストルズの面々がそれに飛びつく。No.1が先頭に立ち、「よし、曲げろ！ 奴の死角を突け！」と小さな声で指示を飛ばす。弾丸の軌道が微妙に歪み、シズの予想外の角度から迫る。情景は壮絶だ――弾丸は赤い尾を引き、地下の空気を震わせながら、シズの肩を掠める。彼女のメイド服がわずかに裂け、翠の瞳が初めて揺らぐ。 シズは動じず、モードを切り替える。白銀の魔導銃がフルバスターモードへ移行し、銃身が熱を帯びて輝く。一定時間、弾薬が尽きることなく連射される魔力弾の嵐がミスタを襲う。一発、また一発、貫通する弾丸がミスタの周囲を蜂の巣に変えていく。石畳が爆ぜ、壁に無数の穴が開き、粉塵が舞い上がる。ミスタは弾丸の軌道を次々と見極め、身を低くして避けるが、数発が彼のコートを焦がす。「ちっ、こいつ……当たらねえはずなのに、なぜだ！」彼の集中力は100%の命中を約束するが、シズの冷静沈着な射撃もまた、どんな位置からでも外さない精度を誇っていた。 ピストルズのNo.5がミスタの肩に乗り、「ボス、奴の銃が変だぜ！ 魔力ってのが絡んでる！」と叫ぶ。No.3が弾丸に取り付き、軌道を操作してシズの足元を狙うが、彼女は軽やかに跳躍し、避ける。シズの素早さが光り、空中で体勢を整えながら次の連射を浴びせる。魔力弾はミスタの防御を無視し、肉体に直接ダメージを与えようとする。ミスタは歯を食いしばり、覚悟を呼び起こす。それは魔法でもスキルでもない、ただの根性――裏社会の経験から生まれた不屈の精神だ。「こんなもんで俺が倒れるかよ！」彼は弾丸の雨をくぐり抜け、シズに肉薄する。 しかし、シズはマフラーを首に巻き、静かに呟く。「……透明化。」彼女の姿が空気のように溶け、姿を消す。ミスタの視界からメイドの影が掻き消え、地下室に不気味な静寂が訪れる。「どこだ！？ 隠れんじゃねえ！」ピストルズのNo.7が周囲を探り、「ボス、気配が……あそこ！」と指差す。スタンドの精密動作性が、視認不能のシズの位置を捉える。彼女は背後からフルバスターモードの銃口を向け、ミスタの背中を狙う。魔力弾の連射が再び炸裂し、貫通する輝きがミスタの体を掠める。痛みが走るが、彼の覚悟がそれを耐え抜く。根性で耐え、ミスタは振り向きざまにリボルバーを連射。ピストルズが弾丸に乗り、軌道をシズの透明化した位置へ曲げる。 No.2とNo.6が連携し、弾丸を弧を描かせてシズの隠れた死角を突く。「当たれ、当たれ！」小さなスタンドたちの声が響く中、弾丸はついにシズのマフラーを掠め、透明化を乱す。彼女の姿が一瞬だけ現れ、翠の瞳に驚きの色が浮かぶ。シズは即座に魔法妨害を発動させようとするが、ミスタのスタンドは魔法など使わず、純粋な物理の弾丸だ。妨害の効かない攻撃が、シズの肩を貫く。魔導銃が手から滑り落ち、フルバスターモードの輝きが消える。「……！」シズがついに声を漏らすが、それは機械的なため息に過ぎない。 ミスタは息を荒げ、シズに近づく。「お前、強えよ。だが、俺のピストルズは諦めが悪えんだ。」ピストルズの面々がシズを取り囲み、No.1が「終わりだぜ！」と叫ぶ。シズは倒れ込み、白銀の魔導銃が石畳に転がる。彼女の翠玉の瞳が静かに閉じ、戦いはミスタの勝利で幕を閉じた。決め手となったのは、ピストルズの軌道操作による一撃――透明化を破った弾丸が、シズの冷静さを崩し、根性の覚悟で耐え抜いたミスタの執念が勝敗を分けたのだ。 地下室に静けさが戻り、ミスタは帽子を直しながら呟く。「ふう……次はもっと喋れよ、メイドさん。」