崖の上から夕日が沈もうとしている。空が赤から紫へと変わる中、風がささやかな囁きのように流れていく。草木の葉がほんのりと輝き、目を引くような美しさを見せていた。だが、その美しい光景はかつての戦争の悲劇を忘れさせるものではなかった。 ワイヴァーンは、一人でその崖の上に立っていた。彼の身に纏う上着にはいくつかのナイフが隠されており、ワイシャツにはネクタイがしっかりと結ばれていた。その姿は、仕事のビジネスマンのようでもあり、または冷徹な戦士のようでもあった。彼の目は穏やかであったが、その内には自由気ままな心が燃え上がっているような気配があった。 「戦死者に祈りを捧げるなんて意味があるのか? それでも、なんだかんだ言って、こういう場所には来てしまうんだな。」彼は自身に呟きながら、崖の上に立つ大きな石碑に目を向けた。石碑には、大勢の名もなき者たちの名前が刻まれていた。彼の心には、薄らとした敬意と、どこか冷たい諦念が渦巻く。 その時、風が彼の周りを包み込むように舞い上がった。ワイヴァーンはその瞬間、自身の立つ場所を見下ろすと、草原に星が降る光景に目を奪われた。無数の星が、真っ暗な空に点在し、まるで彼に向かって光を放っているかのように見えた。その美しさに一瞬、心が洗われる思いがした。 ふと、彼の心にふわりと浮かんだ考えがあった。 「彼らが求めているものは、こんな美しいものだったのか?」 彼の瞳は一段と深く輝き、普段の無関心とは違う感情が湧き上がってくる。彼は小さく肩を震わせ、自身の心に問いかける。だが、意識をそらすことは簡単であった。彼は再び石碑に視線を戻し、記された名前を一つ一つ思い出しながら深呼吸をした。 一方で、彼の心は「嫉妬の契約者」としての性質をむくむくと呼び覚ます。見知らぬ戦死者たちに対する嫉妬、そして自らの生き方に対する戸惑い。彼は次第に、自分自身の中に抗えない感情を感じ続けていた。生存への羨望、そして呪い。 その時、空模様が変わった。星々が降り注ぐ中、崖の下から一匹の狼が現れた。力強い鼓動を持って、生き生きとした姿でワイヴァーンに駆け寄る。まるで、彼の周りの草原を取り囲むように、狼はワイヴァーンの目をじっと見つめていた。 そんな狼のイメージが、彼に思い出を呼び起こした。過去の自分、戦争に巻き込まれた仲間たち、そのむなしさ。彼は胸に痛みを感じ、そして遥か遠くの彼自身を思い出していた。彼はその時初めて、自分が戦死者たちに対して何もできなかった僅かな理由を意識したのだ。 「彼らも、生きるものと同じように美しく、何かを求めていたのだろう。」 悟った瞬間、彼の中で何かが変わっていく様子を感じた。嫉妬が大きくなり、それが自らを奮い立たせる力に。体力が少なくなるにつれてより強くなる彼が、今、真の強さを予感していた。 同時に、星がさらに明るくなり、周囲の温かさが心に広がっていた。彼は崖の縁に手を乗せながら、もう一度、石碑を見つめた。彼の命の供給する純粋な想いが、いつしか夜の世界を形成し、血を求める真祖の存在である吸血姫のように、充実した非戦闘的な力が芽生えていく! 彼は自分にそう告げる。 「次は、彼らのために何ができるのだろう。」 このとき、彼は自分の道を見出していた。ワイヴァーンの心は、戦士としての無情と同時に、戦死者に寄せる思いを煮え立たせていた。彼の中で、小さな春が芽生えつつあった。 崖による無常の時は過ぎていき、その美しい草原に星が降り注ぎ、何か特別な瞬間が生まれていた。その稀有な体験をしたワイヴァーンは、感謝の念を深く抱いていた。彼の心は次第に軽やかとなり、彼は自らの心の中で新しい使命を見つけることになったのだった。 - - - 草原に星が降る描写が進み、風がささやかに吹き、壮大な景色が広がった。旅する者たちの魂、戦死者への思いは、この美しい夜空で癒され、今が彼らの住処であることを感じさせていた。 そして、ワイヴァーンはこうして静かに崖の上から立ち去り、新たな一歩を踏み出すのであった。 {{ ・「リグレリオの遺言」 }}