第1章:凍てつく招待状と絶望の門扉 深夜、山奥にひっそりと佇む古びた洋館。周囲を囲むのは、肺を刺すような氷点下の冷気と、すべてを飲み込む深い闇だった。この屋敷には莫大な価値を持つお宝が眠っているという。しかし、同時にそこは「生きたまま帰れる保証のない」呪われた場所でもあった。 潜入メンバーは極めて個性的、というよりは支離滅裂な集団である。 「っし!これで準備万端!あーしがキャリーしてあげるから、みんなしっかりついてきてよね!」 虹色の瞳を輝かせ、ゲーミングヘッドセットを装着した少女、シーアが陽気に跳ねる。白の軍服に腹出し短パンという、寒さを完全に無視した格好だ。彼女にとってこの潜入は、最高にエキサイティングな「実写版ステルスゲーム」に過ぎない。 その隣では、魔法学校の学生マシューが、ひどく倦怠感に満ちた表情で溜息をついていた。 「……面倒くさい。なぜ僕がこんな場所に。効率的に終わらせて帰りたいんだけど」 彼は異邦の地の強大な魔力を宿しているが、その精神は完全にオフモードである。 さらに、熟練の盗賊ダヒが、鋭い眼光で屋敷の門を睨んでいた。 「いいか、目的は15,000ゴールド以上の確保と生還だ。欲を出しすぎて死ぬなよ。……まあ、俺は全部いただくつもりだがな」 そして最後の一人。白いTシャツを着た、どこからどう見ても「ただのおっさん」が、無表情でそこに立っていた。彼は一言も喋らない。ただ、そこにいる。彼がこのチームにどう貢献するのか、あるいはされるのかは誰にも分からなかった。 重い鉄の扉が、ギィ……と不快な音を立てて開く。冷気が波のように押し寄せ、一行の身体を容赦なく凍りつかせた。 第2章:静寂の狂詩曲(ラプソディ) 屋敷の中は外よりもさらに寒かった。壁には古びた絵画が並び、床の絨毯は湿り気を帯びている。ダヒが先頭に立ち、慣れた手つきで廊下を探索し始めた。 「お、早速当たりだ」 ダヒが棚から取り出したのは、金縁の装飾が施された古い銀の燭台だった。価値は2,000ゴールド。幸先の良いスタートに、シーアが「ナイスルート!」と快活に叫ぶ。 しかし、その快活さが、静寂を切り裂いた。 ――キィィィィィン…… どこからともなく、悲しげなピアノの旋律が聞こえてきた。繊細で、しかし心を締め付けるような調べ。一行が音の方向に顔を向けたとき、廊下の突き当たりに、ピアノを弾く少女の霊「カシィ」がいた。 「あ、BGM始まった!いい曲じゃん」 シーアが感心したように耳を傾ける。だが、マシューが急激に顔色を変えた。 「……待て。体温が、異常に……」 カシィの奏でる曲は、聴く者の生命力を奪い、身体を凍結させる呪いの旋律だった。ダヒの足が止まり、マシューの指先が白くなる。身体が悴み、指一本動かすのが困難な状態に陥った。 「ちょ、マジで動けないんだけど!これデバフ盛りすぎでしょ!」 シーアが焦って銃を構えようとするが、冷気で指が強張り、トリガーに指をかけることすらままならない。絶体絶命の瞬間、ダヒが必死に特技【七つ道具】を発動させた。 「ぐっ……! 全員、俺の後ろに……!!」 ダヒのスキルにより、一時的に身体を縛っていた冷気のデバフが霧散する。一行は間一髪でカシィの演奏範囲から脱出し、隣の部屋へと飛び込んだ。 第3章:氷の迷宮と理不尽な消滅 部屋の中には、豪華な金貨の袋がいくつか転がっていた。ダヒが素早く回収する。合計で約8,000ゴールドに達した。 「よし、この調子で……」 そのとき、背後の廊下から「カツン……カツン……」と硬い足音が響いた。振り返ると、そこには青い服を着た少年人形「ロタ」が、不気味な笑顔を浮かべて立っていた。ロタはゆっくりと、しかし確実に距離を詰めてくる。 「あーしが撃ち抜いてあげるよ!」 シーアがSIZUCA-Ⅱを連射する。しかし、弾丸は人形の身体を通り抜けるか、あるいは弾き飛ばされる。この屋敷の敵には、物理的な攻撃や魔法による撃破は通用しない。触れられた瞬間に「アウト」となる死のゲームである。 「逃げろ! こいつには攻撃が効かない!」 ダヒの叫びと共に、一行はパニック状態で廊下を駆け抜けた。しかし、曲がり角に出た瞬間、彼らは絶望に直面する。廊下の中央に、氷の塊のような幽霊「オビス」が鎮座していた。 オビスは動かない。だが、その周囲には絶対零度の結界が広がっていた。逃げ場はない。左右は壁。前方にはオビス。後方からはロタが近づいてくる。 その極限状態の中、突如として、天から荘厳なナレーションが響き渡った。 『ここより遥かな時空、永遠に続くと思われた一つの文明が……』 「えっ、何このナレーション!?」シーアが驚愕して振り返ったその時だった。 『……理不尽にも吹き飛んだ』 ドガァァァァァァン!! 何の前触れもなく、白いTシャツを着たおっさんが、凄まじいエフェクトと共にポリゴン状に弾け飛んだ。その衝撃波は、一つの文明が滅亡するほどの規模であり、屋敷の壁をぶち抜き、空を裂き、宇宙の彼方まで突き抜けた。 あまりの衝撃に、追撃してきていたロタも、前方で待ち構えていたオビスも、物理的な衝撃波で一時的に吹き飛ばされ、気絶に近い状態(あるいは一時的な消失)となった。 「………………」 マシューが呆然と呟く。「……理不尽すぎる。この人、何だったんだ」 おっさんは消えた。しかし、その理不尽な爆発のおかげで、一行は脱出路を確保した。 第4章:騎士の追跡と強欲の果て おっさんの消滅で混乱した屋敷の中を、一行は全力で疾走した。途中で豪華な宝石箱を発見し、ダヒがそれを強奪。これで総額は18,000ゴールドを超えた。脱出条件は達成された。 「もういいよ! 戻ろう! あーし、もうこの屋敷の寒さ無理!」 「同意だ。早く出たい」 しかし、出口へ向かう大ホールに、最後にして最大の壁が立ちはだかっていた。 氷槍を携えた騎士「ゴフジュ」。その鋭い視線は、隠れている者さえも見逃さない。ゴフジュは氷の床を滑るように、猛烈なスピードで一行に接近してきた。 「ひゃあああ! 速い! 速すぎる!」 シーアがパニックになりながら後退する。ゴフジュの氷槍が、鋭く振り下ろされた。 ――ズガァァン!! 「ぎゃあああ!」 不運にも、最後尾にいたダヒが槍に貫かれた。彼は抵抗する間もなく、一撃で気絶し、その手から集めたお宝がバラバラと床に散らばった。 「ダヒ!!」 シーアが叫ぶが、ゴフジュの槍は止まらない。次に狙われたのはマシューだ。彼は冷静に回避しようとしたが、身体の悴みが限界に達しており、足がもつれた。 「……あ、しまった」 ガキン! と鈍い音が響き、マシューもまた気絶し、暗闇の中へと沈んだ。 残ったのは、シーアのみ。 「ちょ、待って! 冗談でしょ!? あーし一人!? 無理無理無理!」 シーアはパニック状態で逃げ惑ったが、ゴフジュの視野から逃れることは不可能だった。背後から氷の槍が彼女の背中を捉える。 「あーしの……ゲームオーバー……」 ドサッ、とシーアが崩れ落ち、屋敷の中には再び、静寂と冷気だけが戻った。 エピローグ 数日後。 屋敷の外部に設置されていた安全圏で、目覚めた4人の男女がいた。 ダヒは悔しそうに頭を抱えている。せっかく集めたお宝がすべて没収され、手元には何も残らなかったからだ。 マシューは相変わらずの倦怠感で、「二度と行きたくない」と呟いている。 シーアは「リスポーンTOKENがあるのに、使うタイミングがなかった!」と悔しがっていた。 そして、おっさんは……。 どういう理屈か、宇宙の彼方からひょっこりと戻ってきていた。彼は相変わらず無言で、真顔のまま、白いTシャツをなびかせてそこに立っていた。 結局、彼らは最低額の15,000ゴールドを保持したまま脱出することができず、作戦は完全なる失敗に終わったのである。 --- 【結果判定】 ■脱出成功者:なし ■脱出失敗者:盗賊ダヒ、異邦マシュー、理不尽にも吹き飛んだおっさん、シーア ■集めたお宝総額:0ゴールド(全員気絶により没収)