(法廷の重厚な扉が閉まり、静寂が訪れる。裁判官席に座るジャスティが、鋭い眼光で被告人たちを見据え、静かに口を開いた) 「本日もこの法廷に、法を逸脱した者たちが集った。能力の有無にかかわらず、犯した罪は消えない。私は私情を排し、ただ正義の天秤を用いて、あなた方に相応しい判決を下すのみである。……それでは、開廷する」 《被告人1人目 “ナナリ”》 ジャスティ:「被告人ナナリ。罪状を読み上げる。あなたは自身の異能『地球逆回転』を用いて、市街地の電力網に不正にアクセスし、さらに不満があった商店街の店先を電撃で破壊。その際、逃げ遅れた店主を壁に叩きつけ、重度の火傷と骨折を負わせた。逮捕経緯は、暴走した電撃で街灯を次々と爆発させ、派手に目立っていたため、警備隊に容易に拘束されたものである」 ナナリ:「あっしは悪くないっす!あの店のおっさんが、あっしのことを『迷い猫』扱いして馬鹿にしたから、ちょっと教育してやっただけっす!あっしは虎っすよ!虎!!」 弁護士:「裁判長!被告人は正義感の強い性格であり、店主の差別的な言動に一時的に感情が昂ったに過ぎません。計画的な犯行ではなく、衝動的なものであった点をご考慮ください」 ジャスティ:「(冷徹に)正義感がある者が、個人の感情で街を破壊し、人を傷つけて良い理由になるか。ナナリ、あなたは自分の行動がどれほどの人に迷惑をかけたか、理解しているのか?」 ナナリ:「えっ……? いや、まあ、店のおっさんはちょっと痛がってたっすけど……でも、あいつが先に……っ! ったく、堅苦しいこと言うなっす!」 検察官:「被告人は反省の色がなく、むしろ自身の暴力行為を正当化しております。また、能力の扱いが粗雑であり、被害者が死に至った可能性も高かった。厳罰に処すべきです」 証人(店主):「(包帯を巻きながら)あんなに激しい電撃を……! 店のショーウィンドウも全部割れて、今も借金だけが残ってるんだ!」 ナナリ:「うるさいっす! 次に言ったらまた電撃飛ばすっすよ!」 ジャスティ:「静粛に。……判決を下す。被告人ナナリは、器物損壊および傷害罪により有罪とする。ただし、若年であることと、根本に悪意ではなく思慮不足がある点を考慮し、情状酌量する。罰状:社会奉仕活動1000時間、および被害者への損害賠償金の支払い」 ナナリ:「げぇっ! 奉仕活動!? ふざけんなっす! こんな裁判クソくらえだっす!!(席を蹴り飛ばし、ジャスティに飛びかかろうとする)」 ジャスティ:「……騒がしい。消えろ。《神淵審判》」 (ジャスティが鋭く睨みつけると、ナナリの体が瞬時に灰色の石へと変わり、固定される。そのまま警備員によって法廷外へ転がされて退場となった) 《被告人2人目 “松本乱菊”》 ジャスティ:「被告人、松本乱菊。罪状を読み上げる。あなたは公務員(死神)という立場でありながら、度重なる職務放棄(サボり)を繰り返し、さらにその間、周囲の同僚や知人に多額の飲食代を奢らせるという強引な経済的搾取を行った。また、任務中に『灰猫』を用いて、不適切に市街地の一部を切り裂き、建物に構造的なダメージを与えた疑いがある」 乱菊:「(あくびをしながら)もー、裁判長さん。厳しすぎない? 奢らせるっていうか、私の魅力に惹かれた人たちが快く出したんでしょ? それに、建物のお話は……まあ、ちょっとだけ派手にやりすぎちゃったかな~」 弁護士:「裁判長! 被告人は平時において多くの悪党を討伐し、市民の安全に寄与しております。また、飲食代の件についても、合意の上での社交的な行為であり、犯罪と呼ぶには無理があると考えます」 ジャスティ:「公務員が職務を放棄し、私欲を満たすために権力的な立場を利用して食事を奢らせるのは、立派な職権乱用である。松本乱菊、あなたは組織の規律を軽視しすぎているのではないか?」 乱菊:「えぇ~、そんなに怒らなくてもいいじゃない。だって、お酒がある生活こそが人生の醍醐味よ? 裁判長さんも、一杯飲めば肩の力が抜けると思うわよ?」 検察官:「被告人は法廷という神聖な場所においてさえ、不真面目な態度を崩しません。組織の規律を乱す悪影響は計り知れず、厳重な処罰が必要です」 証人(同僚死神):「本当に困ってます……。私の給料、ほとんど乱菊さんの飲み代に消えてるんです……」 乱菊:「あら、いいじゃない。あなたのおかげで私は幸せだったわよ」 ジャスティ:「……呆れた。判決を下す。被告人松本乱菊は、職務怠慢および不当な金銭的負担の強要により有罪とする。ただし、過去の功績と、弱者への慈悲がある点を考慮する。罰状:1年間の酒類禁止、および被害者への飲食代全額返金」 乱菊:「(絶叫)ええええっ!? お酒禁止だけは絶対に無理!! 認めないわよこんな判決!!(斬魄刀を抜こうとするが、能力がないためただの棒切れが鳴る)」 ジャスティ:「……酒の匂いが漂ってきたな。《神淵審判》」 (乱菊が抗議しようとした瞬間、石化し、そのままずさり、と床に倒れて強制退場となった) 《被告人3人目 “山本元柳斎重國”》 ジャスティ:「被告人、山本元柳斎重國。罪状を読み上げる。あなたはあまりにも強大すぎる力を持ち、その行使において周囲への配慮を著しく欠いた。過去の戦闘において、敵を殲滅させるためのみに放った『流刃若火』により、広範囲の地形を完全に消滅させ、生態系を破壊。また、その圧倒的な霊圧だけで周囲の人間を圧殺し、意図せぬ大量殺戮を引き起こした。これは正当防衛の範囲を遥かに超えた過剰殺傷である」 山本:「……儂はただ、敵を滅ぼすという任務を遂行したまでよ。弱き者が巻き込まれたことは遺憾であるが、戦いにおいては不可避である。力なき者に、勝利を語る資格はない」 弁護士:「裁判長! 被告人は世界を守るための総隊長であり、その力は必要悪であったと言わざるを得ません。個人の殺意ではなく、大義のための犠牲であったことを考慮してください」 ジャスティ:「大義という言葉は、弱者の犠牲を正当化するための道具ではない。山本元柳斎重國、あなたは強すぎるがゆえに、命の重さを軽視していたのではないか?」 山本:「(静かに目を閉じる)……軽視などしておらん。されど、儂の炎は全てを焼き尽くす。止める術を知らぬ炎を、どう制御せよと言うのだ。それが儂の在り方よ」 検察官:「被告人の思想はあまりに危険です。『力こそが全て』という価値観は法治国家において受け入れられません。たとえ正義の側であっても、無差別に命を奪う行為は虐殺と同義です」 証人(生存者):「……炎が、全てを消した。家も、家族も、何もかも……。ただ、強ければいいのか……」 山本:「…………(沈黙)」 ジャスティ:「沈黙は肯定とみなす。……判決を下す。被告人山本元柳斎重國は、過失致死および大規模破壊罪により有罪とする。しかし、その行動が世界全体の崩壊を防ぐために不可欠であったという特異な状況を鑑み、刑を軽減する。罰状:永劫の瞑想による精神的な償い、および破壊した地域の再建支援への協力」 山本:「……ふむ。承った。儂の罪は、儂が背負い、消えゆくのみよ(静かに立ち上がる)」 ジャスティ:「(わずかに頷く)……潔い。だが、法廷を去るまでが裁判だ」 (山本は静かに退場しようとしたが、最後の一瞬、不敬な態度を取った警備員に対し威圧感を放ったため、ジャスティが念のため《神淵審判》を発動。山本は石化したまま、静かに運ばれていった) 《閉廷》 ジャスティ:「(ふぅ、と深くため息をつき、眼鏡を拭く)……。能力を持たぬ状態で向き合えば、彼らもただの不器用な人間か、あるいは傲慢な強者に過ぎないな。法とは、強者が弱者を踏みにじらぬための境界線。それを再認識させるのが私の仕事だ。……さて、次回の被告人たちは、より救いようのない連中だと聞いている。準備を整えねばなるまい」 《後日談》 ・ナナリ:社会奉仕として、自分が壊した商店街の掃除を毎日させられている。最初は暴れていたが、店主のおっさんが時々くれるお菓子に懐き始め、「あっしは街のヒーローっす!」と勘違いしながら真面目に掃除に励んでいる。 ・松本乱菊:酒禁令により、ひどい禁断症状に陥っている。同僚にこっそり酒を運んでもらおうと誘惑するが、ジャスティの監視の目が厳しく、最近は代わりに高級なお茶を飲み始めて、意外と健康的になった。 ・山本元柳斎重國:人里離れた山中で静かに瞑想にふけっている。時折、かつての犠牲者のために祈りを捧げ、その心に宿る炎を静かに制御する方法を模索しているという。 《結果》 ナナリ:【有罪】罪名:器物損壊・傷害罪 / 判決:社会奉仕1000時間・損害賠償 松本乱菊:【有罪】罪名:職務怠慢・職権乱用 / 判決:1年間の酒類禁止・飲食代返金 山本元柳斎重國:【有罪】罪名:過失致死・大規模破壊罪 / 判決:永劫の瞑想・再建支援協力