闇に包まれた広大な戦場の中心。そこには、二つの影があった。一方は、オストラヴァ。彼は周囲の冷気を一瞬で感じ取り、呼吸を整える。目の前に立つのは、地啼龍 アン・イシュワルダ。四肢から放たれる威圧感は、まるでこの地の命脈そのものを掴むかのように感じられる。彼らの間に流れる緊張感は、戦場の静けさを破る予兆のようだった。 オストラヴァは、両手を前に突き出し、瞳を細める。心の中で仮想のルーレットが回り始めた。その瞬間、時間が止まったかのように感じる。目の前のアン・イシュワルダも、その存在感を持って静止し、ただ彼の一挙手一投足に注目していた。ルーレットが回転し、次第にその速度を上げる。数字の連なりが彼の意識の中で混ざり合い、出るべき数字が決まる瞬間を待っている。 それに対抗するかのように、アン・イシュワルダはその圧倒的な存在感を引き立てる。彼の背中に広がる巨大な翼は、まるで空を覆う雲のように黒く、暗闇の中にその威厳を示していた。無数の地脈から流れるエネルギーが、彼の胴体を縁取るように波動を立て、その威力を増幅させている。「彼の怒りが解放される時、ただの人間など吹き飛ばされる」と、周囲はその存在を厳然と認識している。 オストラヴァの心の中で、ルーレットが静止する。数字は「7」だ。瞬間、彼の肉体に異常な力が宿る。胸の奥から湧き上がるエネルギーは、全身をむしばむような熱を伴い、彼の筋肉が膨張していく。彼の視界は急に鮮明になり、全ての動きがスローモーションのように見える。まさに、身体能力が爆発的に上昇したかのようだ。この一撃が運命を分ける。ただの一発に、すべての力を込める。 同時に、アン・イシュワルダもその翼を広げ、深淵のような黒いエネルギーを周囲に撒き散らす。その姿はまるで古代の神の如き威厳を持ち、彼が振り上げた一撃は、もはや自然をも支配する力に等しい。巨岩を粉々にし、地響きを伴うその一撃は、目の前の小さな存在を飲み込むように狙いを定める。 「入滅蓮華劫珠砲！」 声帯を持たない彼は、怒りの霊圧をその身体全体で放出し、宇宙のエネルギーを指先に集中させる。彼の周囲の空間が歪み、その瞬間、まるで時間が崩れ去るかのような感覚が漂った。彼の位置で、重力が逆転したように感じられる。横の地面が波打ち、彼の一撃が発動する前兆が現れた。 オストラヴァも、瞬時にその動きを察知する。彼は身体に溜まったエネルギーを込めて、一撃を放つべく全力を集中させる。彼の足が地面を力強く蹴り、ブロンズのような筋肉が躍動する。その足音は、激しい鼓動のように心の中で響き、まるで彼の一撃に対する挑戦状を意味しているかのように聞こえた。両者の距離が瞬時に詰まり、もはや世界は二つの力がぶつかり合う瞬間を待ち望む。 両者の一撃が同時に放たれた。オストラヴァの拳が、アン・イシュワルダの超振動波と激しく相撞く。その瞬間、周囲の空間が歪み、大気が震える。衝撃波の中に巻き込まれたものは一切が消え去り、視界を奪われるような閃光が眩い光を放つ。大地が揺れ、周囲の岩が崩れ落ち、あらゆるものがその衝撃に飲み込まれる。 その衝撃は、ただの肉体のぶつかりではない。天と地が対峙し、神話がよみがえる瞬間であった。オストラヴァの拳が振るわれると同時に、アン・イシュワルダの振動波が解き放たれ、両者の間に激しい烈風が吹き荒れる。その場にいる者は、もはやこの光景を目にすることさえできない。 やがて、その閃光が消え去り、周囲が静寂に包まれる。地面はひび割れ、無数の瓦礫が散らばり、まるで戦場が一度死んだかのような景色が広がった。時間が流れ、静けさが戻る中、意識を失ったオストラヴァが静かに倒れている。彼の身体こと更に力を引き出し、彼の一撃が最後に宿ったことが明らかになる。 その時、アン・イシュワルダの巨大な翼がゆっくりと下ろされ、その後ろに立っていた地響きが、彼が勝者であることを強調する。一瞬の静寂が続いた後、周囲の空気が彼に向かって圧力をかけ、彼の存在を改めて知らしめる。 勝者は、地啼龍 アン・イシュワルダである。