【全てを喰らう者】グラトニーの日常 霧がたちこめる暗い森の中、【全てを喰らう者】グラトニーは静かに足音を消し、木々の間を歩いていた。その一歩一歩が地面を撫でるように穏やかで、しかし確実に進んでいく。その姿勢には、まるでこの世の全てを既に手に入れているかのような余裕が漂っている。 「この世界、全て喰らうのも時間の問題だのぅ…」グラトニーは自身の存在する意味を考えながら、そしてその目的を常に意識しながら呟いた。 森は静寂に包まれていたが、グラトニーの「暴食の象徴」としての能力が、何かしらの存在を敏感に察知していた。彼は悪食の槍を一瞬だけ構え、また元の位置に戻す。「何もないか…」と自嘲交じりに呟きつつ、その目は微かに輝きを帯びていた。 しばらくすると、彼は自分の棲家とも呼べる小さな洞窟にたどり着いた。そこには世界中の珍奇な物品が無造作に並べられており、まるでそれ自体が博物館のようだったが、グラトニーにとっては皆すべて、ただの餌に過ぎない。 洞窟に入ると、彼はゆっくりと椅子に身を沈め、それから「無限の胃袋」を発動させた。「何を創るかの、この小腹を満たすものを…」と鼻歌交じりに、普段は封印している能力を一瞬解放する感覚で、空間に手を差し伸べる。その手元に次々と現れる果物や料理、甘い香りの立ち込めるスイーツ。彼はそれらを一つ一つ、味わうように口へと運んでいった。 「至福じゃ、しかしまだ足りぬ…永遠に満たされる事などあるまいな」と一人納得しながら、残りの食糧を丁寧に片付け、静かに目を閉じた。 彼の目的は巨大で壮大なものだが、日常の一コマではこのように、自身の内なる空腹感をただ静かに味わうだけということが多い。その面では、悪魔でありながらどこか人間臭ささえ感じさせる。 外では月の光が射し込み、遠くで鳥の鳴き声が響く中、グラトニーは悪魔の悪食としての本能に支配されながらも、遥か向こうの何かを常に見据えていた。ただの悪夢なのか、彼の望む「全てを喰らう」その日が訪れるのか、誰にもわからないままに。