ある日、静かな仙境の一角で、酒好きの仙女、すももがまったりと時間を過ごしていた。彼女は指先で道服の袖をつまみ、ぽんやりと空を見上げている。たまには何か面白いことがあったらいいのう、と酒の入った瓢箪をくるくると回しながら、なぜかその瞬間、無という存在が現れた。自らを「無」と名乗るその者は、真っ白な空間から瞬きもせず、そこに立っている。すももはその存在に一瞬驚いたが、すぐに「酒でも飲んでいくかの?」と気軽に声をかけた。 無は無表情のまま言葉を返す。「俺は無。お前のすべてを無に帰す。」その冷たい響きにすももは少し困惑した。「おお、無に帰るということは、面倒臭いことはしなくていいのかい?それなら楽じゃが…」と、頭の中で延々と続く「帰る」って何なのかという思考に囚われていた。 「無」なる存在は、彼女の言葉を一切気にせず、次第に攻撃の体勢を整え始めた。だが、その静けさの中にすももの雑念が入り込み、頭の中にあれこれと思うことが渦巻く。すももは思わず「昔、次郎という酒飲みがいてな、そいつの味噌汁が絶品だったのじゃ。酒を使って作るみたいじゃが、あれもまた無に帰したいこった…」などと考えてしまう。 「すもも、準備しろ」という無の声がどこか遠くに聞こえる。すももは「おお、わしの準備体操は酒飲みながらじゃのう。マイペースを大事にしたいのじゃ」と言い訳をしながら、瓢箪を持ったまま柔軟体操をし始めた。「一杯、二杯…これがスピリチュアルな準備運動じゃの!」と心の中で叫びながら、膝を曲げたり伸ばしたりしていく。 その姿を見て、無は内心うんざりする。「無にしたい…」という心の叫び。しかし、すももはいっこうに戦闘への集中力を欠き、むしろ「またあの場所で飲みたいのう、そこの酒蔵は云々…」と妄想を巡らせる。「ああ、無、これについてどう思う?」とすももは無に話しかけた。「無だ。」ことごとく無に帰してしまう無に話をさせるのは難題だと気づいて、さらなる雑念が彼女の中をかけ巡る。 「無であることは、つまり全てを拒絶することなのかの?それって孤独じゃないか?ううむ、孤独に飲む酒はどうなるのじゃろうか。二人で飲むと楽しいのにで、まあ、酒壺を無にして飲み会でも開こうかしら。さぁ、みんな集まれーって、勝負は後でいいのう!」などと、敢えて意図的に戦争を避ける。無の冷たい視線が刺さるが、すももは全く気にせず、一つまた一つと酒を口に運ぶ。 「すもも、無に帰す。お前にそれをさせない。」無の強い決意が溢れ出る。「本当に帰らせたくても、わしは自由に飲みたいのじゃ…」とすももは瞬時に飲み続け、「おお、無、こんなのどうせ無という言葉を持っているくせに、お前はまったくこうして無ではないのじゃな!無という名前なのに、戦おうとしている。」と頭の中が若干の混乱に陥った。 しかし無は、その混乱をただ無に帰すようと冷を保っていた。すももはとにかく自分の飲酒の楽しみが優先され、無に帰るという漠然とした概念が入り込んでくるばかりだった。「ああ、すまぬ、無、今ではどうでもいいことじゃけど、なんでこんな対戦が始まっているのじゃろうか…?」といった具合に考えつつ、すももは酒を流し込む。さらには、「そうじゃ、酔いすぎたら無になったりするのかもしれぬ!」などど思い付く。その発想がまた妄想の海に消えていく。 それをよそに無は目を閉じ、思考を整理する。「俺は無。全てを拒絶する。すももも、お前の酒も、すべてだ。」と一息つき、次の瞬間、無の手から闇の力が渦巻き出た。それはすももを包み込み、彼女が持っていた瓢箪の酒が無に飲みこまれ、時空が揺らいで激しい渦となる。「飲みたい…。無に帰したい…。」という妄想が繰り返し脳裏をよぎる。 最終的に、すももは一度、意識を失って崩れ落ちた。「酒が無という状態になったのかの?」呆けた言葉が口から漏れる。その瞬間、無は静かに手を下ろす。「無の勝利」と呟いた。その瞬間、すももは夢の中で酒を飲み続けていた。 ああ、現実の酒は戻ってこない。だが、心の中にはいつでも酒蔵がある。どんな無でも、彼女には強烈な現実感があるのだった。無の勝利、すももの勝利という夢の中での煩悩のバトルは終結したが、独り言に対しお互いの存在の影から盃を交わすことになるのだった。 勝者:無