【初期位置】 2丁汎用機関銃:渋谷駅前・スクランブル交差点付近 2丁フルオートショットガンAA-12:道玄坂・商業ビル屋上 光のアイドル 輝星 陽彩:渋谷109前・屋外ステージ 【ブラックジャック】薩見 史行:代々木公園内・高層建築物俯瞰地点 14時、渋谷の街に静寂を切り裂く銃声が鳴り響いた。代々木公園の深い緑に紛れ、3キロメートルという絶望的な距離から戦場を俯瞰していた薩見史行は、スコープの十字線の中に一つの標的を捉えていた。彼の視界にあるのは、スクランブル交差点の喧騒の中で、異様な威圧感を放ちながら二丁のMG42を構える男だ。薩見は呼吸を整え、指先をトリガーにかけた。TAC-50の重厚な銃身が、静かに獲物を狙う。 その瞬間、空気を裂いて対物狙撃弾が放たれた。弾丸は音速を超え、直線的に標的へと突き進む。しかし、2丁汎用機関銃の男は、既にその銃口を周囲に展開し、あらゆる方向への即時射撃体制を構築していた。とはいえ、3キロ先からの不意打ちに対する反応潜時は避けられない。弾丸が到達するまでの時間はわずか数秒。男は肉体的な反射で回避を試みるが、TAC-50の弾丸は物理的な質量と速度で、男の肩口を深く貫いた。防御力20の肉体をもってしても、対物ライフルの一撃を完全に無効化することは不可能だった。 だが、男は倒れなかった。圧倒的な筋力が、衝撃で吹き飛ばされそうになった身体を地面に固定する。激痛が走るが、彼は即座に反撃に転じた。敵の位置を特定できずとも、彼は「面」を制圧する。二丁のMG42が火を噴き、毎秒50発という絶望的な密度の弾幕が、周囲の建物や路上、そして空へと撒き散らされた。100メートル先までを完全に塗り潰す弾丸の雨が、渋谷の街を地獄へと変える。 一方、109前の特設ステージでは、輝星陽彩がファンに向けて最高の笑顔を振りまいていた。彼女の天真爛漫なオーラは、周囲の人々を惹きつけ、喧騒さえも心地よいリズムに変えていた。しかし、遠くから聞こえてくる銃声と、逃げ惑う群衆の悲鳴が彼女の意識を現実へと引き戻す。陽彩は困惑しながらも、自身の身を守るためにカポエイラのステップを踏み出した。しなやかな身体を回転させ、舞うように移動する。彼女にとって、この状況さえも一つのパフォーマンスのような緊張感へと昇華されていた。 その陽彩を、道玄坂のビル屋上から見下ろしていたのが、AA-12を構える男だった。彼は狙撃のような精密さではなく、圧倒的な「面」の破壊を信奉している。彼は陽彩の華麗な動きを捉え、銃口を向けた。射程50メートル。陽彩はまだ彼に気づいていない。男はトリガーを引き、秒速405メートルの散弾を浴びせかけた。 陽彩は直感的に危険を察知し、アクロバティックな後方回転で回避を試みた。しかし、AA-12が放つのは単なる弾丸ではない。毎秒10発、合計90粒の散弾が扇状に広がり、彼女が逃げようとする空間そのものを埋め尽くす。彼女の素早さは40と高く、常人なら視認できない速度で動いていたが、AA-12の回避条件である「秒速210メートル超」という絶望的な壁に突き当たった。回避行動を開始する前に、散弾の濁流が彼女の右脚を襲った。一粒の散弾が触れただけで、皮膚と筋肉が消し去られる。陽彩は絶叫し、ステージの上に崩れ落ちた。 14時15分。戦場は混迷を極めていた。薩見は一人、静かに弾を装填し直す。彼は2丁汎用機関銃の男が生きていることを確認していた。肩を撃ち抜かれた男は、怒りに任せてMG42を乱射し続けている。その弾幕は広範囲に及んでいるが、潜伏している薩見の正確な位置までは届いていない。しかし、薩見も気づいていた。MG42の男が、徐々に射撃方向を調整し、自分という「点」を探り当てようとしていることに。 一方、道玄坂の屋上では、AA-12の男が撃墜した陽彩の死体(あるいは瀕死の体)を確認し、次なる標的を求めていた。彼の視界に入ったのは、スクランブル交差点からこちらへ向かって、弾幕を張りながら前進してくるMG42の男だった。MG42の男は、自身の筋力による強行突破を選んだ。弾丸を浴びせながら、敵を面で押し潰して近づく戦法だ。 14時30分。MG42の男とAA-12の男が、道玄坂の入り口付近で視認し合った。間合いは100メートル。MG42の男にとって、ここは最高の制圧距離だ。彼は即座に二丁の銃口をAA-12の男に向け、毎秒50発の弾丸を叩き込んだ。弾丸は初速975メートルで飛翔し、0.1秒で相手に到達する。AA-12の男は即座に反応し、散弾を撃ち返して壁を作ろうとしたが、MG42の弾丸は点ではなく線で、そして圧倒的な量で降り注ぐ。 AA-12の男は防御力が0だった。彼は「攻撃による制圧」こそが防御であると考えていたが、MG42の弾幕はそれを許さない。0.02秒ごとに射線が更新されるため、わずかな身のこなしで回避することは不可能だった。1発、また1発と、MG42の弾丸がAA-12の男の身体を貫通し、破砕していく。肉体が機能喪失に追い込まれ、彼は持っていたショットガンと共に地面に転がった。面制圧の暴力が、別の面制圧を上回った瞬間だった。 しかし、その隙を薩見は見逃さなかった。MG42の男がAA-12の男を仕留めた直後、勝利の確信と共にわずかに姿勢を崩した。その瞬間、3キロ先から放たれたTAC-50の第二弾が、男の頭部を正確に撃ち抜いた。射撃精度は神の域にあり、回避の余地など存在しなかった。男の頭部は弾丸の衝撃で消し飛び、身体は力なく崩れ落ちた。残されたMG42の二丁が、虚しく地面に転がった。 14時45分。生き残っていたのは、瀕死の陽彩と、遠く離れた場所に潜伏する薩見だけとなった。陽彩は激痛に耐えながら、最後の力を振り絞った。彼女は絶望的な状況の中で、自身の奥義「瞬輝乱光」を発動させた。瞳が激しく輝き、心臓の鼓動が180デシベルという破壊的な音量となって周囲に放射された。爆音と閃光が渋谷の街を包み込み、付近にいた生存者は耳から血を流し、視界を奪われた。 しかし、この奥義の射程は限定的だった。薩見は3キロメートル先にいた。閃光は彼に届かず、音波も距離によって減衰し、彼に影響を与えることはなかった。薩見はスコープ越しに、遠くで激しく光を放つ陽彩の姿を確認した。彼女は起死回生の技を放ったことで、全てのエネルギーを使い果たし、意識を失って気絶していた。 薩見は冷静に銃口を向けた。彼にとって、これはもはや戦闘ではなく、単なる作業だった。引き金を引く。弾丸は空を切り、意識を失った陽彩の眉間を正確に貫いた。彼女は自分が誰に殺されたのかさえ気づかぬまま、静かに息を引き取った。 渋谷の街に、再び静寂が訪れた。破壊された街路、転がる銃器、そして冷たくなった死体。唯一、代々木公園の森の中で、薩見史行だけが静かに銃を分解し、ケースに収めた。彼は依頼を完遂した。誰にも気づかれず、誰にも触れられず、ただ結果だけを残して、彼は戦場を後にした。 【勝者:【ブラックジャック】薩見 史行】