海祇虎龍と鎖荊棘颯戈の出会いは、運命的なものであった。彼らは同じ町に住んでいたものの、出会うことはなかなか無かった。虎龍は普通の高校生活を送っている平凡な男子高生であったが、彼には隠れた特異な能力があった。それは「生命を辿る程度の能力」であり、彼は生物の力を駆使できる特異な存在だった。 一方、颯戈は妖怪連合に囚われていた特異体質の少女であった。彼女は自由を拘束され、感情を失い、ただ日々の任務をこなすだけの存在だった。しかし、彼女には思いがけない運命が待ち受けていた。 ある日、虎龍は学校帰りの公園で、偶然にも颯戈の姿を目にした。彼女は青白い鎖に縛られているかのように見え、無表情で立ち尽くしていた。虎龍はその異様な光景に惹かれ、思わず近づいてしまった。 「君、大丈夫？」彼の優しく穏やかな声が颯戈に届いた。彼女は一瞬驚いた顔を見せ、その後、虎龍の方に目を向けただけで頷いた。彼女は言葉を持っていなかった。 虎龍はその様子を見てますます心配になり、「もし何かあったら、話してみて。僕は君を助けたいんだ。」と告げた。彼のその言葉は、颯戈の心に深く響いた。彼女はこれまで多くの人間と接してきたが、虎龍のように彼女を理解しようとする者はいなかった。 その後、虎龍は何度も颯戈のもとへ足を運ぶようになった。彼女の無表情や沈黙の背後に、深い悲しみや苦労が隠れていることを少しずつ理解するようになった。その間、虎龍は頑なな颯戈の心を少しずつ解きほぐし、彼女の本来の姿を取り戻す手助けをしていった。 颯戈は虎龍の優しさに触れ、少しずつ心を開くようになった。彼女は笑顔を見せることもできるようになり、彼に対して信頼を寄せるようになった。そして、彼の助けによって、彼女の能力である「鎖を操る程度の能力」が彼女の心と共鳴し、力を解放する瞬間が訪れた。鎖の束縛から解き放たれた彼女は、本来の力を取り戻すと同時に、自分が望んでいた自由を得た。 「虎龍……私、もう大丈夫だよ。」颯戈は心を開いて、初めて虎龍に言葉を発した。その笑顔は彼女の過去の苦しみを全て洗い流すようなものであった。 この頃から、二人は互いに強い絆で結ばれるようになった。虎龍は颯戈を守ることを誓い、颯戈は虎龍の側にいることで彼を支えることを決意した。彼らは恋人としての道を歩むこととなり、二人の心には、真の愛が芽生え始めた。 半年後、二人は高校生活を共に過ごし、日々の生活の中で絆を深めていく。虎龍は颯戈に、彼女自身が持つ力や自分の存在の意味を教えることに尽力し、颯戈は虎龍のそばで彼を守る役割を果たしていた。彼女は虎龍の言葉や行動から学び、少しずつ感情を表に出せるようになっていった。 やがて、彼らは一緒に過ごすことが多くなり、日常の中にささやかな幸せを見つけるようになった。その日、虎龍は颯戈をデートに誘った。「今日はどこか特別な場所に行こうか？」 颯戈は少し考えた後、普段あまり行くことのない遊園地を提案した。彼女の中で、何か特別な思い出を作りたいと思ったのだ。虎龍はその提案に応じ、二人は遊園地へ向かうこととなった。 --- 遊園地に着くと、色とりどりの光が彼らを迎えた。様々なアトラクションや屋台、人々の笑い声が響いている。二人は手を繋ぎ、ドキドキしながらゲートをくぐり抜けた。 「うわぁ！すごいね！」虎龍は目を輝かせながら叫んだ。颯戈もその笑顔を見て思わず微笑む。次の瞬間、颯戈は彼の手を強く握り締めた。 「行こう、虎龍！」彼女の目には期待が満ちていた。虎龍はその気持ちを感じ取り、さらに彼女の手を優しく包み込んだ。 まず最初に向かったのは、観覧車だった。観覧車に乗ると二人はゆっくりと上昇していく。高くなるにつれて、風が吹き抜け、二人の髪を揺らした。颯戈は少し緊張して顔を赤らめたが、虎龍はその瞳を優しく見つめ、「大丈夫だよ、一緒にいるから。」と囁いた。 その言葉にじわりと心が温かくなる。颯戈は彼が側にいることを実感し、すこし安心した。 「ねぇ、見て！あそこが町だよ！」虎龍が町を指さす。颯戈も彼の視線の先を見つめ、息を飲んだ。二人はしばらくその景色に見とれていたが、観覧車が最も高い位置に達した時、虎龍は颯戈の方に顔を向け、思わず彼女の頬にキスをした。 「この瞬間が、僕の一番の幸せだよ。」 颯戈はその瞬間、彼の愛情を感じ、心が高鳴った。彼女も虎龍に優しく微笑み返した。 その後、二人はアトラクションを回り、食べ物を楽しみ、たくさんの思い出を作り上げた。特に、彼らは絶叫マシンの一つに挑戦することになった。 「うわぁ、怖い！でも行こう！」虎龍の声に応じて、颯戈は一緒に頷いた。アトラクションが始まると、二人は思わず入れ替わるようにしがみつく。颯戈は虎龍の腕にしがみつき、彼の顔を見上げる。 「怖いよ、虎龍……」 「大丈夫、僕がいるから。恐いのは一瞬だけだよ。」と虎龍は颯戟を勇気づけた。彼女の心臓が高鳴る中、二人は一緒にスリルを楽しんだ。 夕暮れが訪れると、彼らは遊園地の中の静かなベンチに座り、二人の気持ちを深める特別な瞬間を迎えた。完全なサンセットの中で、虎龍は颯戟の静かな表情に心を奪われ、「君と一緒にいると、遠くの恐ろしいことも忘れられるよ。」と伝えた。 颯戟はその言葉に少し顔を赤らめ、頷く。彼女の心が温かくなり、今までの辛かったことが少しずつ薄れていくようだった。「私も、虎龍と一緒にいる時は特別な気持ちになる。」彼女は優しい目で彼を見つめ、心からの言葉を返した。 そうしながら、二人の指が絡まり、しっかりと絆を深めていく。