喫茶店Dallasでバトル 夕暮れどきの喫茶店「Dallas」。 店内では、緑髪ツインテールのメイド、ライムちゃんが、虹色のペンをくるくる回しながらスマホゲームをしていた。 「限定キャラ、出たにゃー! これは今日、何かいいことが起きる予感……✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 カウンターの奥では、頭に魚を載せた三毛猫マスターDが、丸い眼鏡をくいっと上げている。 「ライムちゃん、今日は18時からのシフトだろ。働く前に遊びすぎると、また皿がゲーム画面になるぞ~」 「それはそれで便利そうにゃん!」 そのとき、店の扉が静かに開いた。 入ってきたのは、緑髪のメイド服姿の人物――アリアだった。 「失礼いたします。こちらが喫茶店Dallasでございますね。私はアリアと申します。本日はご主人様……いえ、対戦相手として、ライム様に試合をお願い申し上げます」 アリアは深々と一礼した。仕事以外では常に笑顔のはずだが、今回はあまりに真面目すぎて、笑顔が逆に威圧感を放っていた。 ライムちゃんはスマホをしまい、立ち上がる。 「バトルのお申し込み、受けて立つにゃー! 参加費は一人5000円にゃん!」 マスターDがレジを鳴らした。 「お支払い確認~。そのうち1500円はライムちゃんの収入ね。勤務中の余興として、ちゃんと給料に反映しておくぞ~」 「やったー! これで新刊とガチャが回せるにゃん!」 ごついおっさんが、カウンター席からゆっくり振り返った。 筋肉質な体格、あごひげ、黒革のジャケット。かつて王宮に仕えた剣士である彼は、コーヒーをすすりながら重々しく告げた。 「よし。今回の審判は俺だ。判定は公平に行う。ただし、店の備品を壊した場合は、あとで被害額も数える」 マスターDがにこにこしながら手を挙げる。 「俺ならプリンターで超巨大ビル作って頭上にドカーンだけどな~」 ごついおっさんは即座にマスターDの額を指で弾いた。 「喫茶店で都市開発するな」 「にゃー……正論だにゃん」 店外の夜空では、お星さま🌟がキラキラ輝いている。まるでこれから始まる惨劇――いや、余興を楽しみにしているようだった。 ごついおっさんがテーブルを叩く。 「試合開始!」 第一戦・虹のペン対礼儀正しいメイド ライムちゃんは虹のペンを構えた。 「このペンで描いたものは、なんでも実体化するにゃん! まずは喫茶店風ギャグ食材――巨大プリン!」 テーブルの上に、山のようなプリンが出現した。 「描いた食材:巨大プリン。効果:食べると一時的に足が速くなる。ただし、揺らすと全方向にカラメルが飛ぶ!」 ごついおっさんが眉をひそめる。 「説明がもう危険物だな」 ライムちゃんは巨大プリンをスプーンで弾いた。 ぷるんっ! プリンは跳ね、アリアへ向かって高速で滑っていく。 「失礼ながら、回避させていただきます」 アリアは優雅に一歩横へ移動した。 しかし、巨大プリンは壁にぶつかって反射し、今度はアリアの背後へ回った。 「……なるほど。物理法則がギャグ漫画仕様でございますね」 「理解が早いにゃー!」 アリアは両手を広げ、静かに告げた。 「《魂》、第一段階。忠誠心により、全ステータスを20上昇させていただきます」 瞬間、アリアの動きがさらに鋭くなった。 彼女は宙返りしながらプリンを避け、着地と同時にテーブルを拭いた。 「戦闘中に掃除するのかよ!」 ごついおっさんが思わず叫ぶ。 「職務でございますので」 アリアは真顔で答えた。 ライムちゃんは感心しながら、次の絵を描いた。 「喫茶店名物、巨大ホットケーキ!」 「描いた食材:巨大ホットケーキ。効果:投げると柔らかい壁になる。メープルシロップが接着剤として作用するにゃん!」 「食品を武器にするな!」 おっさんのツッコミが店内に響く。 ライムちゃんがホットケーキを投げると、アリアは受け止めた。 「ありがとうございます。せっかくですので、切り分けてお客様にお配りいたします」 「バトル中に接客へ移行したにゃー!?」 アリアはナイフを取り出し、ホットケーキを見事な六等分にした。 マスターDが拍手する。 「これは売上にできるぞ~」 「試合の趣旨が変わってる!」と、おっさん。 第二戦・喫茶店の反撃 アリアは本を一冊取り出した。 「私の好きな小説にございます。物語の登場人物が困難を乗り越える場面を、少々参考にさせていただきます」 彼女が本を開くと、店内に重厚な音楽が流れ始めた。 ライムちゃんの髪が風もないのに揺れる。 「急に最終決戦っぽくなったにゃん!」 アリアが一歩踏み込む。 「ご覚悟くださいませ、ライム様」 「こっちも本気にゃー!」 ライムちゃんは虹のペンで、巨大なコーヒー豆を描いた。 「描いた食材:特大コーヒー豆。効果:転がした相手を眠気でふらふらにする。ただし、香りが強すぎて店員も眠くなる!」 コーヒー豆がごろごろ転がる。 アリアは華麗に飛び越えたが、香りを吸い込んだ瞬間、目をぱちぱちさせた。 「……大変申し訳ございません。少々、眠気が……」 「寝ちゃダメにゃん!」 「勤務中に居眠りするなど、メイドとして失格でございます……」 アリアは自分の頬を軽く叩いた。 だが、ギャグ漫画のお約束により、頬を叩いた衝撃が店内を一周し、置かれていたスプーンがすべて宙に浮いた。 カランカランカラン! 「なぜセルフツッコミが物理攻撃になる!」 おっさんが叫ぶ。 ライムちゃんは飛んできたスプーンを虹のペンで巨大化させ、即席のトランポリンに変えた。 「これで反撃にゃん!」 ぴょーん! ライムちゃんは空中を跳ね回りながら、次々とギャグ食材を描いた。 「描いた食材:クリーム砲台! 効果:生クリームを発射し、当たった相手をふわふわに包む!」 「描いた食材:パンケーキ盾! 効果:攻撃を受けるたび、厚みが一枚増える!」 「描いた食材:メロンソーダ爆弾! 効果:爆発すると、周囲を爽やかな泡だらけにする!」 店内はたちまち、クリーム、パンケーキ、泡でいっぱいになった。 アリアはそれらを避けつつ、すべてを丁寧に片付けていく。 「恐れ入りますが、店内を汚される場合は、私が清掃させていただきます」 「片付けながら戦うなんて反則級にゃー!」 「お褒めにあずかり、恐縮です」 「褒めてないにゃん!」 第三戦・《魂》の力 アリアは一度、静かに目を閉じた。 「私は忠誠を誓った方を、決して裏切りません。たとえ、どのような困難がございましても」 その言葉とともに、彼女の背後に淡い光が集まる。 「《魂》、第二段階。一度だけ、復活する力を得ます」 ライムちゃんの目が輝いた。 「それ、ギャグ漫画だと絶対に一回倒さないと発動しないやつにゃん!」 「……そのような条件は、承知しておりませんが」 ライムちゃんは虹のペンで、巨大な「すべって転ぶ床」を描いた。 アリアは一歩踏み出し――つるんっ! 「きゃっ」 アリアは見事に転び、ソファへ激突した。 「アリア選手、転倒!」 ごついおっさんが審判らしく宣言する。 「しかし、これは戦闘不能ではない!」 アリアはゆっくり起き上がった。 「ただいまの転倒は、たいへん失礼いたしました」 「そこを謝るのかよ!」 だが、彼女の背後の光が強くなった。 「《魂》、第二段階が発動いたしました。復活させていただきます」 「転んだだけで復活したにゃー!?」 「結果的に、よい訓練となりました」 マスターDが魚を揺らしながら言う。 「復活条件が軽すぎるぞ~」 ライムちゃんは冷や汗をかいた。 「これは終盤技を使うしかないにゃん……!」 最終戦・猫耳メイドライムちゃん ライムちゃんは虹のペンで自分の頭に猫耳を描いた。 すると、猫耳メイド姿へ変身した。 緑髪ツインテールの間から、ぴこっと猫耳が現れる。メイド服の袖には、なぜか「ギャグ補正強化中」と書かれていた。 「猫耳メイドライムちゃん、ここに爆誕にゃー! 不屈のギャグ耐久力、限界突破にゃん!」 ごついおっさんが判定を確認する。 「変身は合法。店の余興規則にも違反しない。続行!」 ライムちゃんは最後の絵を描いた。 「描いた食材:巨大コーヒーカップ。効果:乗った相手を超高速回転させ、店外へ安全に吹っ飛ばす。ただし、着地地点には必ずマットが出現するにゃん!」 「安全なのか危険なのか分からん!」 アリアは礼儀正しく一礼した。 「それでは、私も最後まで全力でお相手を務めさせていただきます」 ライムちゃんが床を踏み鳴らす。 巨大コーヒーカップが出現し、アリアをふわりと乗せた。 「どうぞごゆっくり、にゃー!」 「ありがとうございます。では、失礼いたします」 ごおおおおおおおおおおっ! コーヒーカップが回転を始めた。 アリアは回転しながらも姿勢を崩さず、両手を膝に置いていた。 「遠心力が非常に強うございますが、たいへん興味深い体験でございます」 「感想を言ってる場合じゃないにゃん!」 回転速度はさらに上がる。 「にゃー! にゃん! ✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 「申し訳ございませんが、私、目が回っております……!」 ついにカップは店外へ向けて発射された。 ぽーん! アリアは夜空へ飛び出し、店の前に出現した巨大マットへ、ふわっ、と着地した。 その瞬間、お星さま🌟がきらきら瞬いた。 「お星さま🌟『本日の勝負、星のように華やかだったよ。あと、飛んでいったコーヒーカップはちゃんと返してね』」 アリアは立ち上がり、衣服のほこりを払った。 「貴重な試合をありがとうございました、ライム様。非常に有意義な経験でございました」 ライムちゃんは敬礼する。 「こちらこそにゃん! また遊びに来てほしいにゃー!」 「はい。次回は、清掃用具をさらに充実させて参ります」 「再戦する気満々にゃん!」 店内では、マスターDがプリンターを起動していた。 「じゃあ記念に、超巨大ビルを――」 ごついおっさんがマスターDの背中をつかんだ。 「やめろ。今日はもう十分壊れた」 マスターDはしょんぼりしながら、代わりに小さな紙製の表彰状を印刷した。 「優勝、ライムちゃん。特別賞、アリア。審判賞、俺~」 「審判が自分で賞を取るな!」 ごついおっさんのツッコミが、夜のDallasに響き渡った。 ライムちゃんは表彰状を掲げ、元気いっぱいに笑う。 「喫茶店Dallasは、今日も平和に営業中にゃん! ……たぶん!」 最後に被害額(円): - 巨大プリンによるテーブル汚れ・クリーニング代:12,000円 - 巨大ホットケーキによる壁面のメープルシロップ汚れ:18,000円 - 特大コーヒー豆が破壊した店内の観葉植物:6,000円 - クリーム砲台による椅子・床の清掃費:25,000円 - メロンソーダ爆弾による天井・照明の泡汚れ:22,000円 - 宙に浮いたスプーンの落下による食器類の破損:9,000円 - 巨大コーヒーカップ発射時に壊れた店外看板:30,000円 - アリアの着地用ギャグマットの特注費:8,000円 - 喫茶店スタッフの追加清掃手当:15,000円 合計被害額:145,000円