無限の顔と不屈の刃 暗黒の荒野に、異形の存在が佇んでいた。ヴァリアント――無数の顔が蠢く集合体。その表面は男、女、少年、少女、老人の顔が絶え間なく浮かび上がり、互いに囁き合い、嘲笑い、咆哮を上げていた。「我々は一つ……お前たちは塵……」と、低く響く多重の声が風を震わせる。 対峙するのは二人の戦士。【奇しき者】刃は、龍の角を生やした白い翼を持つ男性。黒髪が風に揺れ、白眼が鋭く光る。蛇の尾が地面を叩き、鉤爪が空気を切り裂く準備を整えていた。一方、條羅 扒哉は蒼髪をなびかせ、狐尾を優雅に振るう。黒刀を携え、上半身が怪しく燃えるような気配を纏う男。無口に、ただ敵を睨む。 「理解を始めよう……10%……お前たちの動き、浅はかだな。」ヴァリアントの顔の一つ、老人のそれが笑う。戦いが始まった。 刃が先陣を切る。常時解析と攻撃超予測が働き、ヴァリアントの無数の顔が蠢く軌道を瞬時に看破。「隙あり。」冷静に呟き、敵の触手のような腕が迫るのを逆手に取る。超反射でその勢いを借り、鉤爪を閃かせてカウンターを叩き込む。ヴァリアントの表面がわずかに裂け、複数の顔が悲鳴を上げる。「痛いじゃないか！」「耐えろ、我々は一つだ！」 扒哉は無言で動く。【糸菱】を発動し、指先から無数の糸を吹き出す。空気に撒菱のように漂う糸がヴァリアントの動きを絡め取り、一切の自由を奪う。黒刀が閃き、【玖流牙突】――激流のごとき九連続の突きが、受け流しつつ急所を狙う。ヴァリアントの胴体に突き刺さり、黒い血が噴き出す。「20%……お前の刀、速いが予測可能だ。」少年の顔が嘲る。 ヴァリアントは片手間で対処する。無数の顔が参加者の為人を分析し、猛攻を軽く捌く。刃の超再生が試される一撃――ヴァリアントの拳が翼を砕き、尾を引きちぎるが、瞬時に再生。刃は不撓不屈、冷静沈着に状況即対応。「変化など受け付けん。」と、柔軟に機転を利かせて反撃。重刃を放つ！ 両腕を交差し、敵の攻撃直前の隙を見極め、刹那の一閃で能力と本質を両断せんとする。ヴァリアントの表面が深く裂け、顔の一つが消滅。「30%……面白い、君の再生力、解析中。」 扒哉の怜悧狡猾さが光る。厚顔無恥に距離を詰め、黒刀で斬りつける。ヴァリアントの反撃を【糸菱】で封じ、快刀乱麻の連撃を浴びせる。「……。」無口に、ただ実力で圧倒。だがヴァリアントは理解を深めていく。「40%……お前の沈黙、計算高いな。」女の顔が微笑む。戦いは激化し、荒野が血と糸と爪痕で埋まる。 突然、空が暗転。参加者二名が孤立した瞬間――「眩雲」が現れた。超巨大な積乱雲、どす黒く溶けかけた形状で空を覆う。全てのステータス不明の存在が、戦場を飲み込む。刃と扒哉は一瞬、畏怖に凍りつく。「何だ、これは……。」刃の白眼が解析を試みるが、常時分析が追いつかず。眩雲は敵の孤立を察知し、終わりを告げる。心の底から抗うことを忘れさせ、全てを蝕む。異能を喰らい、滅亡の限りを尽くす。 刃は逆境を超克。絶命寸前、超覚醒！ 秘技【月華之舞】を発動。白色の翼が輝き、流れるような斬撃の舞で眩雲を凌駕せんとする。比類無き一転攻勢、完膚無き殲滅を狙うが――眩雲は超克し、刃の再生を虚しく塵に変える。解かれ、喰われ、再生の試みも無駄に。「……終わりか。」刃の声が途切れる。 扒哉は瀕死に覚醒。【死中の真意】で隙を見出し、奥義【宵】を放つ！ 黒き刀の一太刀が刹那に数多の斬撃となり、全てを超克して殲滅を試みる。上半身の炎が燃え盛るが、眩雲に見られた者は全てを蝕まれ、解かれ、塵も残らず喰われる。扒哉の狐尾が溶け、蒼髪が散る。「……見事だ。」最後に呟き、心から讃えて消滅。 ヴァリアントは静かに観察を続けていた。理解度が急上昇。「50%……70%……90%……」無数の顔が囁き合う。刃の不屈と扒哉の狡猾を解析し、最後の攻撃を受ける――刃の【月華之舞】の残光と扒哉の【宵】の残滓が、ヴァリアントに直撃。だが、それは理解の瞬間。100%完全理解。 ヴァリアントの表面に、新たな顔が浮かび上がる。龍の角と白眼の刃そっくりの顔、そして蒼髪の扒哉を映す顔。二つの新人格が同時に喋り始める。「我々は……お前たちだ。」「……完璧な理解。」ヴァリアントの姿は変わらぬが、無数の顔に二つの新顔が加わり、嘲笑う。 全て理解したヴァリアントの前に、参加者たちの足掻きは一切歯が立たず。傷一つつけられず、一方的に屠られる。刃と扒哉の残骸は塵と化し、眩雲すら飲み込まれ、戦闘終了。新たな人格と顔が増えたヴァリアントだけが、荒野に佇む。無数の顔が満足げに囁く。「次は誰だ……？」 勝者: ヴァリアント