【第1日】 気が付いた時、彼らは濃緑の絶望に囲まれていた。見上げるほどの巨木が空を覆い、陽光はわずかな隙間から針のように降り注いでいる。湿度は限界に近く、肌にまとわりつく空気は腐敗した植物と土の匂いが混じっていた。白峰華澄は困惑しながらも、静かに周囲を見渡した。隣には無気力そうな表情のカルシア、困惑した顔の女性(製作者)、そして虚ろな目の男、サイタマがいた。 「ここは……どこでしょうか」 華澄の問いに答えはなかった。ただ、遠くで聞いたこともない獣の咆哮が響いた。彼らは互いに争うことはなかったが、状況の深刻さはすぐに理解した。食料も水もなく、あるのは彼らが身に着けていた衣服のみである。サイタマはあくびをしながら、とりあえず歩き出すことを提案した。 【第2日】 移動を開始したが、密林は残酷だった。足元の泥濘には鋭い棘を持つ植物が潜んでおり、歩くたびに靴底を突き破る。カルシアはわざと棘を踏み、その痛みに頬を染めていたが、華澄はそれを不安げに見つめていた。彼らは水場を探して彷徨ったが、見つけた池の水はどろどろとした黒い色をしており、触れただけで皮膚が焼けつくような刺激があった。毒である。華澄は自身の白磁の肌に泥が跳ねるのを嫌がりながらも、必死に歩を進めた。夜、彼らは火を熾した。サイタマが凄まじい速さで木々を擦り合わせ、摩擦熱で瞬時に火をつけた。火を囲み、彼らは静寂の中で未知の恐怖に震えた。 【第3日】 密林の生物が彼らの存在に気づいた。夜明けと共に、手のひらサイズの極彩色の虫たちが群れをなして襲いかかってきた。その虫たちは皮膚を貫通し、強力な熱病のウイルスを注入する。カルシアは笑いながら虫に噛ませ、その毒による激痛を快楽に変換していた。しかし、製作者の女性は運が悪かった。首筋に深く噛まれた彼女は、数時間後には高熱にうなされ、意識が混濁し始めた。華澄は彼女の手を握り、祈るように「月白浄界」を展開した。周囲が純白に染まり、虫たちの攻撃性は低下したが、既に注入されたウイルスは止まらない。密林に奇跡はなかった。 【第4日】 製作者の女性の状態が悪化した。皮膚はどす黒く変色し、内臓が炎症を起こして血を吐き出した。彼女は絶望的な表情で、自分の能力を使おうとした。しかし、この密林において「ルール」を書き換える能力は機能しなかった。彼女が作り出そうとした「バトルドーム」は、密林の圧倒的な自然エネルギーに塗り潰され、発動しなかった。彼女は激しい痙攣と共に、肺から血を吹き出し、絶命した。死体はすぐに腐敗し、蟻のような虫たちが群がった。彼らは彼女を埋葬する時間さえ惜しみ、移動を続けた。 【第5日】 食料不足が深刻化した。カルシアが骨を突き出して獲物を狩ろうとしたが、密林の獲物は狡猾だった。彼らが遭遇した巨大なトカゲは、皮膚から強力な神経毒を分泌していた。サイタマが軽く拳を振るっただけでトカゲは肉塊へと変わったが、飛び散った血液が華澄の白い肌に付着した。その血は強酸性を帯びており、彼女の白磁の肌にジリジリと音を立てて穴を開けた。華澄は悲鳴を上げず、ただ静かにその痛みに耐えた。彼女の身体に、また新たな「ひび」が入った。彼女の魔法防御力は上昇したが、肉体的な損傷はそのまま残った。 【第6日】 原住民との遭遇があった。彼らは言葉を持たず、ただ殺意に満ちた目で彼らを見た。原住民たちは石製の槍と、毒を塗った吹き矢を持っていた。彼らは集団で襲いかかってきた。サイタマにとって彼らの攻撃は羽虫に刺されるよりも軽かったが、華澄は危険にさらされた。吹き矢が彼女の肩に突き刺さる。猛毒だった。心拍数が跳ね上がり、呼吸が困難になる。カルシアはそれを面白そうに眺めていたが、サイタマが瞬時に原住民の武器をすべて粉砕した。原住民たちは戦意を喪失し、恐怖に震えて逃げ出した。彼らは文明を持たない、ただの生存本能だけの生き物だった。 【第7日】 華澄の毒が回っていた。彼女の身体は白磁であるため、毒の浸透が遅かったが、それでも内臓がゆっくりと破壊されていく。彼女は血を吐いた。白磁の身体から流れる血は、どろりとした赤色で、純白の肌に不気味なコントラストを描いた。カルシアは自分の再生能力を用いて、自分の血を華澄に飲ませようとしたが、適合せず拒絶反応が起きた。華澄は意識を失い、サイタマに担がれることになった。 【第8日】 熱帯の豪雨が彼らを襲った。視界はゼロになり、足元は底なしの泥沼へと化した。サイタマは華澄を抱え、カルシアと共に歩いたが、泥の中に潜んでいた巨大なヒルたちが彼らの足に吸い付いた。ヒルは強力な抗凝固剤を注入するため、一度噛まれると血が止まらなくなる。カルシアは骨を突き出してヒルを切り刻んだが、その際、自分の皮膚を深く切り裂いた。彼女にとってそれは快楽だったが、出血量は相当なものだった。 【第9日】 華澄の意識が戻った。しかし、毒による後遺症で、彼女の左足の感覚が消失していた。彼女は自分の足が白く乾き、ひび割れているのを見た。陶器としての性質が強まり、人間としての肉体が失われつつあった。彼女は静かに微笑み、「これも人生の一部です」と呟いた。しかし、その瞳には深い絶望が宿っていた。 【第10日】 再び原住民に遭遇した。今度は彼らの集落に迷い込んだ。原住民たちは最初、彼らを食料として見ようとしたが、サイタマの圧倒的な力に屈し、彼らを「神」として崇め始めた。彼らは言葉を持たないが、ジェスチャーで意思疎通を試みた。カルシアは彼らの原始的な生活に興味を持ったが、華澄は彼らに「礼節」を教えようとした。彼女は泥の上に指で文字を書き、お辞儀の仕方を教えた。文明の種が、密林に蒔かれた瞬間だった。 【第11日】 集落での生活が始まったが、そこは衛生状態が最悪だった。原住民たちが飼っていた家畜の排泄物から、未知の寄生虫が繁殖していた。ある日、カルシアの腹部から、細長い白い寄生虫が皮膚を突き破って這い出してきた。彼女は絶叫し、同時に絶頂した。寄生虫は彼女の内臓を食い荒らし、骨の芯まで入り込んでいた。彼女の驚異的な再生能力が、逆に寄生虫に無限の餌を提供することになり、寄生虫は爆発的に増殖した。 【第12日】 カルシアの身体状況が悪化した。皮膚の下で何千という虫が蠢き、彼女の肉体を内側から破壊していた。彼女は骨を突き出して虫を追い出そうとしたが、突き出した骨に沿ってさらに虫が這い上がってきた。彼女は笑いながら泣いていた。痛みは快楽に変わるが、肉体の崩壊は止まらない。彼女の腹部は大きく裂け、内臓の一部が虫に食い尽くされて外に露出していた。 【第13日】 カルシアはもはや歩くことができなかった。彼女の脚は寄生虫に骨髄まで食い荒らされ、もろく崩れていた。サイタマは彼女を運ぼうとしたが、彼女は「もういい」と笑った。彼女の身体はもはや人間ではなく、寄生虫の巣となっていた。彼女は最後、自分の全身の骨を一度に射出する「骸装穿滅」を放った。それは自死に近い攻撃だった。骨が飛び散ると同時に、体内の寄生虫もろとも肉体が飛散し、彼女は血と骨の飛沫となって密林に消えた。 【第14日】 生き残ったのはサイタマと華澄だけだった。華澄はもはや自力で歩くことができず、身体の半分以上がひび割れていた。彼女の皮膚は完全に陶器化し、関節を動かすたびにガリガリと不快な音が鳴る。彼女はサイタマの背中で、遠くに見える空を眺めていた。密林の夜はさらに厳しくなり、気温が急激に低下した。寒さと湿気が、彼女の陶器の肌に微細な亀裂を増やしていった。 【第15日】 サイタマは食料を求めて森の深部へ向かった。そこで彼は、密林の主とも呼べる巨大な多頭蛇に遭遇した。蛇の毒は空気に触れるだけで草木を枯らす猛毒だった。サイタマにとって毒は意味をなさなかったが、彼が蛇を殴り飛ばした衝撃波で、周囲の木々がなぎ倒された。その拍子に、華澄が休んでいた場所へ巨大な倒木が落下した。 【第16日】 倒木に押し潰された華澄は、右腕と右脚を完全に砕かれた。白磁の身体が粉々に砕け、白い破片が地面に散らばった。彼女は悲鳴さえ上げなかった。ただ、静かに空を見た。サイタマは急いで彼女を救出した。彼は金継ぎの技術を模倣し、泥と樹液を混ぜて彼女の身体を繋ぎ合わせた。しかし、それは応急処置に過ぎず、彼女の身体は継ぎ接ぎだらけの不格好な姿となった。 【第17日】 華澄は熱病に侵された。カルシアが死んだ原因と同じ、虫媒介の熱病である。彼女の身体が陶器化していたため、ウイルスはゆっくりと浸透したが、一度定着すると逃げ場がなく、内部で増殖し続けた。彼女の体内では、白磁の壁とウイルスが激しく衝突し、内部からひび割れが進行した。彼女は時折、口から白い陶器の破片と血を混ぜたものを吐き出した。 【第18日】 サイタマは密林の出口を探して全速力で走り回った。しかし、どこまで行っても同じような緑の壁が立ちはだかっていた。この密林は空間的に歪んでおり、単純な移動では脱出できない仕組みになっていた。絶望的な状況の中、華澄は彼に微笑みかけた。その顔の半分はひび割れ、泥で汚れていたが、心だけは「割れぬ心」のスキルによって保たれていた。 【第19日】 原住民たちが彼らを再び訪ねてきた。彼らはサイタマに、森の最深部に「光の門」があることをジェスチャーで伝えた。彼らは文明を与えられたことで、わずかに知性が芽生えていた。彼らはサイタマに、門へ至るための危険なルートを教えた。そこは毒霧が充満し、一歩足を踏み入れれば肺が溶ける地獄のような場所だった。 【第20日】 毒霧のエリアへの進入。サイタマは華澄を抱え、全力で疾走した。毒霧は強力な酸を含んでおり、華澄の身体をさらに腐食させた。彼女の白磁の肌が溶け、中の赤い肉が露出した。彼女は激痛に耐え、意識を保つために自分の指を噛んだ。指の先がポロリと取れたが、彼女はそれを気に留めなかった。 【第21日】 毒霧の中での休息。サイタマは呼吸を止めて華澄を守ったが、華澄は呼吸をせざるを得なかった。彼女の肺は酸で焼け、呼吸をするたびに血が泡となって溢れた。彼女の「月白浄界」は、もはや自身の身体を維持することに全ての魔力を費やしており、周囲を浄化する余裕はなかった。 【第22日】 彼らは泥濘の底に潜む巨大な甲殻類に襲われた。甲殻類は強力なハサミで華澄の腰を挟み込んだ。ミキミキという不快な音と共に、彼女の脊椎にひびが入った。幸い、サイタマが瞬時に甲殻類を分子レベルまで粉砕したが、華澄の下半身は完全に麻痺した。彼女はもはや、生きた人形に等しかった。 【第23日】 精神的な限界が訪れた。華澄は、自分がもう人間ではないと感じ始めていた。腕は継ぎ接ぎ、脚は砕け、肺は焼け、心臓だけが執念で動いている。しかし、彼女はサイタマの手を握り、「ありがとうございます」と囁いた。その声は、割れた陶器が擦れ合うような、かすれた音だった。 【第24日】 密林の最深部へ近づくにつれ、環境はさらに過酷になった。地面からは常に熱い蒸気が噴き出し、周囲の温度は100度に達していた。サイタマは平気だったが、華澄の身体は熱膨張により、さらにひび割れが広がった。彼女の皮膚から、じわりと血が滲み出し、熱で蒸発して血の霧となった。 【第25日】 未知の猛毒キノコの胞子が降り注いだ。この胞子に触れると、皮膚から植物が芽吹くという恐ろしい病だった。華澄の肩から、小さな緑色の芽が出始めた。彼女はそれを静かに指で摘み取ったが、根は既に彼女の血管に入り込んでいた。彼女の身体は、人間と陶器と植物の混ざり合った異形へと変わりつつあった。 【第26日】 原住民たちが、彼らをサポートするために同行し始めた。彼らは自分たちが知る「安全な道」を案内した。しかし、密林の自然は彼らの知識さえも裏切った。突然の地滑りが起き、同行していた原住民の数人が土砂に飲み込まれた。彼らは叫ぶこともなく、ただ静かに土の下に消えた。 【第27日】 華澄の意識が混濁し始めた。彼女は、死んでいった製作者の女性とカルシアの幻影を見た。彼女たちは笑いながら、こちらへ来いと手を振っていた。華澄は首を振った。彼女にはまだ、この地獄を生き抜いたサイタマと共に、外の世界を見たいという願いがあった。 【第28日】 光の門が見えた。それは巨大な白いアーチ状の岩で、そこから眩い光が溢れていた。しかし、門の前には、この密林の最終防衛線とも言える、山のような巨人が立ちはだかっていた。巨人は岩を砕き、大地を揺らした。サイタマはため息をつき、一歩前へ出た。 【第29日】 サイタマと巨人の戦い。サイタマの一撃が巨人の胸を貫いた。衝撃波で周囲の森が消し飛び、巨大なクレーターができた。巨人は一撃で絶命したが、その死体が崩落し、華澄がいた場所を押し潰した。サイタマは瞬時に彼女を救出した。しかし、彼女の身体はもう、限界だった。もはや繋ぎ止めるべき「核」が残っていなかった。 【第30日】 サイタマは華澄を抱きかかえ、光の門をくぐった。眩い光に包まれ、視界が白くなる。次に彼らが目を開けたとき、そこにはどこまでも続く、穏やかな緑の草原が広がっていた。風が心地よく吹き、空には澄み渡った青色が広がっている。密林の絶望的な緑とは対照的な、本物の「平和」だった。 華澄はサイタマの腕の中で、ゆっくりと目を閉じた。彼女の身体は、草原の光を浴びて、最後の輝きを放った。彼女は微笑んでいた。身体はボロボロで、もはや人間としての形を保っていなかったが、その心だけは最後まで割れることなく、純白のままだった。彼女は静かに息を引き取り、その身体は光の粒子となって草原に溶けていった。生き残ったのは、ただ一人。最強でありながら、最も孤独な男、サイタマだけだった。 --- 【サバイバル貢献度】 サイタマ:100(圧倒的な力で全員を保護し、道を切り開いた) 白峰 華澄:60(精神的支柱となり、原住民に文明を与え、共存の道を作った) カルシア:30(狩猟や偵察に貢献したが、自身の快楽に溺れる傾向があった) 超☆エキサイティングの製作者:5(状況把握に努めたが、能力が機能せず早期に脱落した) 【最終身体状況】 サイタマ:健康(全くの無傷) 白峰 華澄:死亡(全身の陶器化・破砕、内臓焼損、寄生植物の浸潤、多臓器不全) カルシア:死亡(全身の寄生虫による肉体崩壊、自爆による飛散) 超☆エキサイティングの製作者:死亡(猛毒による急性熱病、内臓破裂)