第一章:欲望の招待状と深夜の門扉 月明かりすら届かない深い森の奥に、その屋敷は鎮座していた。古びた石造りの外壁は蔦に覆われ、窓から漏れる光は不気味な紫色を帯びている。ここに潜入し、最低15,000ゴールド相当のお宝を持ち帰れば成功。だが、もしも屋敷に潜む「何か」に触れれば、即座に意識を失い、ゲームオーバーとなる。 参加者は四人。慎重派のリーダー格であるサトシ、欲深い自称冒険家のケンジ、臆病だが運だけはいいミナ、そして冷静な分析担当のレイ。彼らは互いに牽制し合いながらも、共通の目的である「金」のために重い鉄扉を押し開けた。 「いいか、全員で協力するんだ。だが、お宝の分配は後で話し合おう。基本は早い者勝ちだぞ」 ケンジが下卑た笑みを浮かべて言う。サトシは溜息をつき、懐中電灯で辺りを照らした。 「バカを言うな。まずは15,000ゴールドを揃えて脱出することが先決だ。死んで(気絶して)全部失ったら意味がないだろう」 屋敷の内部は、外観以上に奇妙だった。廊下には豪華な絨毯が敷かれているが、時折、空間が歪んでいるような感覚に襲われる。彼らはまず、一階のホールにある展示室へと足を踏み入れた。 第二章:黄金の誘惑と見えない罠 展示室には、大小さまざまな宝物が並んでいた。小さな銀の指輪(100ゴールド)から、豪華な金彫りの燭台(3,000ゴールド)まで様々だ。 「おっ、あれはいいな!」 ケンジが迷わず金色の花瓶(5,000ゴールド)に手を伸ばそうとしたその時、レイが鋭く制した。 「待て。足元を見ろ。絨毯の模様が不自然に途切れている」 レイが指差したのは、床の一部だった。見た目は普通の絨毯だが、わずかに浮いている。それは「セヴ」――偽物の床だった。もしケンジがそのまま踏み込んでいれば、一瞬で意識を失い、床下に消えていただろう。 「ひええっ! 危なかった……」 ミナが震えながら後ずさりした。しかし、彼女が後退した先には、一台の奇妙な機械が置かれていた。カラフルな装飾が施され、「幸運のクジ引き」と書かれた看板を掲げた機械、「チャンプ」である。 「わあ、可愛い機械! クジを引けばお宝がもらえるみたいですよ」 ミナが好奇心に駆られてレバーを引いた。ガシャン! と大きな音がして、一枚のカードが出てくる。そこには【当たり:ダイヤモンドの耳飾り(4,000ゴールド)】と書かれていた。 「やったー!」 歓喜するミナ。しかし、その背後から、静かに、しかし確実に「何か」が近づいていた。 第三章:混沌の追跡者たち 「ねえ、誰か後ろにいない?」 サトシが振り返った瞬間、視界に飛び込んできたのは、ナイフを構えた不気味な人形の少女――「ルナ」だった。彼女は感情のない瞳でサトシを凝視し、次の瞬間、弾丸のような速度で襲いかかった。 「逃げろ!!」 サトシは必死に廊下を駆け抜けた。ルナは決して諦めない。壁を走り、天井を跳ね、執拗にサトシだけを追い続ける。その足音はコツ、コツと規則正しく、精神を削り取っていく。 一方、残された三人(ケンジ、ミナ、レイ)は二階の書斎へと向かっていた。そこにはピンク色の霧のような鱗粉が漂っていた。ピンク髪に蝶の羽を持つ男、「シュー」が静かに佇んでいる。 「……あ、あれは何?」 ケンジが不思議そうに近づいた瞬間、第一段階の鱗粉が彼を襲った。身体が急激に重くなる。まるで泥の中に浸かったかのような倦怠感が彼を包んだ。 「なんだ……急に疲れが……」 二段階へ移行したケンジは、思考能力を失い、ぼーっとした表情でシューを見つめる。そして三段階目に達した瞬間、ケンジの瞳から光が消えた。彼はシューの操り人形となり、隣にいたミナに向かって手を伸ばした。 「ケンジさん!? どうしたんですか!」 混乱するミナ。そこへ、さらなる異常事態が発生する。廊下の突き当たりから、猛烈なエンジン音……ではなく、完全な「無音」と共に、巨大な貨物トラック「Big Rigs」が壁をすり抜けて突進してきたのだ。 BGMもSEもなく、ただ物理法則を無視して加速し続ける鉄の塊。Big Rigsはバック走行に切り替えた瞬間、光速に近い速度で加速し、書斎の壁を消し飛ばして乱入してきた。 第四章:絶望の加速と奇妙な邂逅 「ぎゃああああ!!」 ミナとレイは間一髪で回避したが、シューに操られていたケンジは回避不能だった。10の36乗km/hという天文学的な速度で突っ込んできたトラックの衝撃。しかし、Big Rigsはブレーキを一度踏んだだけで、物理法則を嘲笑うかのように「ピタッ」と0km/hに停止した。 衝撃波だけで、ケンジは遥か彼方まで吹き飛ばされ、壁に激突して気絶した。同時に、彼が抱えていたお宝もすべて散らばる。 「もう無理! 帰りましょう!」 ミナが泣き叫ぶ。その時、廊下の角から一人の男が現れた。1985年のファッションに身を包み、最高にクールなシャツと靴を履いた男――“Any White Guy”である。 彼はただそこに立っていた。攻撃力0、防御力0。しかし、その圧倒的な「クールさ」に、追い詰められていたミナとレイは一瞬だけ呆然とした。 「……あの人、なんかいいシャツ着てる」 そんな間を置かず、空気を切り裂く音がした。赤いマントをなびかせ、マッハ152の速度で移動する男、「マッハマン」の襲撃である。あまりの速さに視認することすら不可能。ただ、そこに「衝撃」があった。 ドガッ!! レイの横腹に、目に見えない速度の拳が叩き込まれた。レイは悲鳴を上げる暇もなく、そのまま壁まで吹き飛ばされ、気絶した。 第五章:最後の脱出 生き残ったのは、ルナに追い回され続けてボロボロになったサトシと、パニック状態で逃げ惑うミナだけだった。 二人は偶然にも、廊下の突き当たりにある小さな棚に置かれた「青色の羽根」を発見した。これは出口へ瞬間移動できる唯一のアイテムだ。 「ミナ! これを掴め!」 サトシが叫ぶ。しかし、彼らの前には、自分たちに化けた「ブロク」が立ちはだかっていた。どちらが本物のサトシか分からない。 「サトシさん! こっちです!」 ミナは直感で、右側にいたサトシの手を取った。正解だった。左側にいた偽物が、不気味な笑みを浮かべて消えていく。 サトシは青色の羽根をかき集め、二人で同時にそれを握りしめた。背後からは、ルナのナイフが、マッハマンの衝撃波が、そしてBig Rigsの無音の突進が迫っていた。 「脱出だ!!」 眩い光に包まれ、二人は屋敷の外へと弾き出された。 エピローグ 夜明けの森で、サトシとミナは泥だらけの姿で地面に転がっていた。彼らが回収していたのは、ミナが引いたダイヤモンドの耳飾りと、サトシがルナから逃げる途中で必死に拾い集めたいくつかの金貨と宝石類だった。 合計額を計算すると、ギリギリ16,000ゴールド。最低ラインの15,000を上回り、彼らは「成功」を勝ち取った。 後日、気絶していたケンジとレイは、屋敷の掃除係によって無事に救出された。彼らは一銭の利益も得られず、ただ「すごいトラックを見た」ということだけを語り合ったという。 【ゲーム結果】 脱出成功者: サトシ、ミナ 脱出失敗者: ケンジ、レイ 集めたお宝総額: 16,000ゴールド