【混沌の市街地レース:法遵守か、捕縛か】 ■開幕宣言と参加者の意気込み 街の喧騒を切り裂くように、拡声器の爆音が鳴り響く。道路の両端には、精鋭中の精鋭である一般警察たちが、まるで万里の長城のごとく隙間なく整列していた。彼らの眼光は鋭く、呼吸は完全に同期している。その背後には、対能力者特殊部隊《ж》の二人が、静かに、しかし絶対的な圧を持って佇んでいた。 「さあさあ!皆様お待たせいたしました!本日のメインイベント、『一般道路5km・交通ルール遵守(?)超絶レース』の開幕でございます!!』」 実況席では、テンションMAXのお姉さん実況者が、身振り手振り大きく叫んでいる。隣では、どっしりと腰掛けた中年男性の解説者が、耳をほじりながら不機嫌そうに唸った。 「ったく、どいつもこいつも正気じゃねえな。ルールを守れと言いつつ、参加者の面面を見てみろ。どいつが交通法規を守るんだよ。警察の苦労が目に浮かぶぜ」 「そこがいいんですよ!ルールを破れば、あの美しき執行官《ж》のお二人が、容赦なく『お片付け』してくださいますからね!それでは参加者の意気込みをどうぞー!」 --- 【参加者1:DXロボット】 (意気込み:ピピピッ!ピコーン!(訳:頑張ります!)) 機体詳細: 「走る!光る!飛ぶ!DXロボット」。直径20cmの超小型プラスチック製。かつては2330円だったが、現在はお子様ランチのおまけとして流通している悲しき量産機。動力は単3電池。最大武器は「優しい光」。 【参加者2:ウォーズ】 「熱き魂に火を灯せ!正義と速度の彼方へ、俺が導いてやるぜッ!!」 機体詳細: 身長25mの超巨大人型戦士。B2スピリット機および475系デカ前照灯タウントレインへと変形可能なトリプルチェンジャー。次元も因果もぶち抜くライフルを携え、存在自体が戦略兵器レベルの質量攻撃である。 【参加者3:カオス・ランダムズ】 「ふふふ……私はネズミです!ハムスターではありません!そして見てください、このカオスを!常識を置き去りにしたダイスの乱舞で、ゴールまで踊らせてあげますよ!」 機体詳細: ネズミの獣人でカオスの化身。多彩な色のダイスを弾丸として放つ。出目によって効果が変動する運任せの超火力。彼女自身が「カオスじゃない」と言われた恨みを原動力に、街を混沌に染める計画である。 【参加者4:黄金の仏像】 (意気込み:……(沈黙)) 機体詳細: 高さ170cmの黄金の仏像。一切喋らず、ただそこに在る。相手の精神に直接語りかけ、最も苦手なものへ変身する精神攻撃特化型。物理的な破壊は無意味であり、増殖する。 --- ■レース本編:狂乱の5キロメートル 「レディー……ゴー!!!スタート!!!」 合図と共に、地獄の幕が開いた。 最初から暴走したのはウォーズである。25mの巨体が猛烈な加速で地面を蹴った瞬間、アスファルトが文字通り「爆発」した。一般車が悲鳴を上げて避ける中、ウォーズはB2スピリットへと変形し、超低空飛行で市街地を突き進む。しかし、ここで問題が発生した。彼は「信号無視」という重大な交通違反を犯した。 「おっとー!ウォーズ選手、真っ赤な信号を完全に無視して突き進みました!これはあからさまな違反です!!」 「当たり前だろ、あのデカさで止まれるかよ。おい、警察が動いたぞ」 道端に並んでいた一般警察たちが、一斉に、そして完璧な同期で跳躍した。一人一人が常人を遥かに超える身体能力でビル壁を蹴り、ウォーズの機体に飛び移る。彼らは以心伝心の連携で、ウォーズの関節部に特製の手錠をかけようと試みる。しかし、相手は25mのサイバトロン。警察官たちが蟻のように群がるが、ウォーズは「ああっ!くすぐったいぜ!」と叫びながら激しく揺さぶった。 そこへ、静かにギターケースから銃を取り出した愛羅が介入する。 「あらあら、暴れすぎですよ。少しお休みしましょうね」 【魔弾:能力封じ】 愛羅が放った一発の弾丸が、ウォーズの動力源付近に着弾。瞬時に展開された能力封印空間により、ウォーズの変形機能がロックされ、彼は不格好な「半分飛行機、半分列車、半分ロボット」というキメラ状態のまま、猛烈な勢いで前方に転倒した。地響きと共に、彼は道路をなぎ倒しながら滑走していく。 一方、後方ではDXロボットが健気にタイヤを回転させていた。ピピピッという電子音を響かせ、時速3kmという驚異的な(遅い)速度で前進する。彼は完璧に交通ルールを守っていた。信号も止まり、横断歩道で歩行者に道を譲る。その様子に実況のお姉さんは感動していた。 「見てください!DXロボット選手の模範的な運転!これぞ交通安全の鑑です!」 「いや、遅すぎるだろ。死ぬまでゴールできねえぞ」 その平和をぶち壊したのは、カオス・ランダムズだった。彼女は笑いながら、色とりどりのダイスをバラ撒いていた。 「さあ、カオスタイムです!赤、青、黄、全部盛りでどうぞ!!」 赤のダイスが大爆発を起こし、道路に穴を穿つ。青のダイスが永遠に跳ね回り、一般車を次々と弾き飛ばす。彼女は「歩行者天国ではない場所でのダイス遊び」および「公共物破壊」で、完全に警察のターゲットとなった。 「出たー!カオス選手、完全に暴走しています!これはもう捕縛されるしかない!」 警察官たちが一斉に彼女を取り囲もうとした瞬間、彼女が放った「虹ダイス」が不運にも、あるいは幸運にも、警察官たちの足元で「地面をゼリー化させる」というランダム効果を発動させた。精鋭警察たちが、ぷるぷるのゼリーの上で足を滑らせ、コメディ映画のように積み重なって転がる。その光景はまさにカオスだった。 そこに、黄金の仏像が静かに漂いながら現れた。仏像は一切の動作をせず、ただそこに佇んでいた。しかし、彼を追い越そうとした警察官たちの脳内に、直接声が響く。 (汝の恐怖を乗り越えよ) 次の瞬間、仏像が「警察官たちが最も恐れるもの」——すなわち『上司からの猛烈な叱責と、山のような始末書の山』に変身した。警察官たちは絶望に顔を歪ませ、「ぎゃあああ!書類が!書類が無限に降ってくるー!」と錯乱し、戦意を完全に喪失した。 「なんという精神攻撃!警察軍団が崩壊しています!快挙です!」 「ふざけんな!仏像が卑怯すぎるだろ!」 しかし、ここで《ж》のもう一人、ラフザが動いた。白衣を翻し、死んだ魚のような目で、しかし指先だけは超高速で動かしていた。 「あー……面倒くさい。早く終わらせて、家に帰って寝たい……」 【瞬九流捕縛術弐式:識絶之陣】 ラフザが指先から放った極細の糸が、瞬く間に3kmの範囲に張り巡らされた。目に見えないほどの精緻な法陣。その瞬間、範囲内にいた全参加者の意識が一時的に断絶された。カオス・ランダムズが「えっ」と言ったまま停止し、黄金の仏像もその精神的な干渉を遮断され、ただの金色の置物へと戻った。 完全に無力化された参加者たち。そこへ、待機していた一般警察たちが、今度は一切の迷いなく、機械的な正確さで襲いかかった。ガシャガシャと手錠がかけられ、カオス・ランダムズはぐるぐる巻きにされ、黄金の仏像は巨大な梱包材でぐるぐる巻きに梱包された。 一方、ウォーズは愛羅の弾丸で機能不全に陥り、慣性の法則に従ってゴールラインを(腹ばいのまま)突き抜けていた。 そして、DXロボットは……。まだ1km地点にいた。 「ああっ!ウォーズ選手、転倒したままゴールイン!1位です!」 「ルール無視して、結局1位かよ。クソみたいなレースだな!」 ■レース終了後:結末と順位 ゴール後、警察はルール通り、ゴールした参加者には干渉しなかった。しかし、ゴールできずに捕縛された者たちには、冷徹な現実が待っていた。 1位:ウォーズ 【結末:逃走成功(ゴール済み)】 感想:「ふっ、結果的に俺が最速だったな。だが、あの『能力封じ』というやつは厄介だ。次こそは完璧な走行を見せてやるぜ」 2位:黄金の仏像 【結末:捕縛(梱包済み)】 感想:(沈黙。ただし、捕縛した警察官の脳内に「汝の職務への情熱を思い出せ」という謎のメッセージを送り、警察官を号泣させた) 3位:カオス・ランダムズ 【結末:捕縛(ぐるぐる巻き)】 感想:「ひどいです!私はネズミなのに、捕縛されるときまでハムスター扱いされてました!次はもっと、もっとカオスなダイスを用意して、警察署ごとダイスで塗りつぶしてあげますからね!!」 4位:DXロボット 【結末:逃走成功(未だ走行中)】 感想:(ピピピッ!ピコーン!:訳:交通ルールを守れば、誰にも捕まらないことを証明しました!) 【総評】 実況のお姉さんは「最高のカオスでしたね!」と大満足し、解説のおっさんは「二度とやりたくねえ」と吐き捨てて帰宅した。愛羅とラフザの二人は、大量の捕縛者を処理し終え、ラフザはそのまま道路の脇で深い眠りに落ちたという。