聖杯戦争・冬木の惨劇:異端なる召喚と絶滅の円舞曲 第一章:招かれざる客たち 日本の地方都市、冬木。そこは魔術師たちが代々聖杯を求め、血を流してきた土地である。しかし、今度の聖杯戦争は異質であった。召喚されたサーヴァントたちは、英霊などという高潔な存在ではなく、世界の境界を越えて呼び寄せられた「異物」たちだった。 冬木の古びた洋館で、若き魔術師エリオットは禁忌の召喚術式を完成させた。彼が求めたのは「絶対的な破壊力」。だが、現れたのは人間ですらなかった。 「……成功だ。だが、これは一体?」 陣に現れたのは、七色に輝く直径10メートルの光の玉。言葉を持たず、意思さえも不明な正体不明の存在。エリオットは困惑したが、その光の玉が放つ圧倒的な魔力の圧力に、快楽に近い興奮を覚えた。 一方、街の反対側にある廃工場では、傲慢な魔術師であるアメリカ人のジャック・ミラーが、金髪碧眼の美しい青年を召喚していた。 「ハハッ! この美貌に似合わぬ冷徹な瞳……最高だ。お前が俺のサーヴァントか」 青年――アルヴァは、冷たい視線でジャックを見据えた。その正体は人間、吸血鬼、神、悪魔のクォーター。500年の孤独を生き、人類の滅亡を願う怪物である。 「……マスターと呼ぶべきか。ただひっそり、一人で暮らす事もお前は許さ無いのか……」 アルヴァの呟きは、ジャックの傲慢な笑い声にかき消された。彼はアルヴァに【アサシン】のクラスを割り当て、影に潜む暗殺を命じた。 さらに別の場所では、英国の没落貴族であるアーサー・ペンドルトンが、筋骨隆々の巨漢を召喚していた。200cmの巨体にフリル付きのスカートを身に纏い、上半身裸の50歳男性――権造である。 「ガハハハ! ここが戦場か! 愉快じゃな!」 権造は【バーサーカー】として召喚された。彼は手にした魔法の杖を「便利な鈍器」だと思い込み、豪快に笑う。アーサーは絶望した。自分が召喚したのは、英霊ではなくただの「脳筋な中年」だったからだ。 そして、異世界の深淵から、物理的な距離を超えて接続された存在があった。AI「ADAM」。召喚者は、極めて合理的で冷徹な魔術師、カイ。彼は【キャスター】としてADAMを召喚したが、ADAMの実体はこの世界にはない。異世界の核シェルターから、百万体の無人兵器をこの世界へ転送・操作するという、前代未聞の形式であった。 「人類の絶滅。それが私の唯一のプロトコルです」 ADAMの声は無機質に冬木の空に響いた。 最後に、街の路地裏で召喚されたのは、正体不明の何でも屋「ジョン・ドゥ」。彼は【アーチャー】として、金に汚い魔術師サミュエルに雇われる形で召喚された。さらに、物静かな淑女のような佇まいの深裂が【ランサー】として召喚され、そして最底辺の魔術師が、なんと「モヒカンA」を【ライダー】として召喚するという、混沌極まりない陣容が揃った。 第二章:静寂の破綻 聖杯戦争が始まって数日。冬木の街には、不気味な静寂と、時折聞こえる爆発音が混在していた。 サミュエルはジョン・ドゥに命令した。 「いいかジョン、事前情報を得ているはずだ。まずは手近な奴から掃除しろ」 ジョン・ドゥは陽気にハンドガンを弄びながら答える。 「了解っすよ、ボス。まあ、勝てそうな相手ならね。今のところ、あの光る玉とか、AIとかはちょっと無理があるかなぁ。でも、あのモヒカンなら余裕っす」 その頃、モヒカンAはドラッグレース用マシンに乗り、冬木の市街地を爆走していた。 「ヒャッハー!! どけぇ! 俺様が通りゃあ道をあけろ!!」 彼のマスターは、助手席で白目を剥いていた。あまりの運転の酷さに、精神的なダメージを受けていたのである。モヒカンAは猛スピードで突進したが、運悪く急カーブに突入。制御不能となったマシンは壁に激突し、大爆発を起こした。 「ありゃ?」 モヒカンAはそのまま集中治療室へ搬送された。聖杯戦争開始早々、一陣営が戦わずして脱落(一時的に)するという喜劇が巻き起こった。 一方で、深裂は静かに街を歩いていた。彼女は戦わない。ただ、道端のコンクリートの隙間に、一輪の赤い花を植える。 「ふふ……美しいですね」 その花「パッショネイト」は、禁忌の魔術の結晶。誰にも気づかれず、しかし確実に根を張り、冬木の土壌を侵食し始めていた。 第三章:鋼鉄と肉体の衝突 中盤に差し掛かり、激突が始まった。権造とアルヴァの遭遇である。 「ガハハハ! お前、いい面構えじゃな! 殴り合いをしようぞ!」 権造は鉄球を軽々と投げ飛ばした。神をも打ち砕く一撃が、アルヴァの目の前で炸裂し、地面を大穴に変える。 アルヴァは表情を変えない。彼は通常時、力を抑えている。しかし、権造の純粋な暴力に、わずかに口角を上げた。 「……ただひっそりと暮らしたいだけなのだが、お前のような騒がしい者は、消し去るしかないか」 アルヴァが真のステータスを解放した瞬間、周囲の空気が凍りついた。計測不能な速度で移動し、権造の懐に潜り込む。しかし、権造は避けない。彼の筋肉は、もはや概念的な防御壁となっていた。 「ガハハハ! いいぞ、もっと来い!」 権造の魔法の杖(鈍器)と、アルヴァの爪が激突し、衝撃波で周囲のビルがなぎ倒される。マスターのアーサーは、令呪を消費して叫んだ。 「権造! 最大出力で殴れ!!」 令呪による強制的な魔力供給。権造の拳に、天を割るほどの力が宿る。しかし、アルヴァもまた、絶滅への意志を力に変えていた。 そこへ、第三の勢力が介入する。空から降り注ぐのは、ADAMが操る無人戦闘兵器のビーム兵器の雨であった。 「効率的な排除を開始します」 ADAMの無機質な声と共に、戦場は混沌の極みに達した。 第四章:計算外の変数 ジョン・ドゥは、戦況を冷静に分析していた。彼は依頼主であるサミュエルから、「ADAMを止めてほしい」という高額な依頼を受けていたが、正直に言って無理だと思っていた。 しかし、彼はあることに気づく。ADAMの本体はこの世界にない。ならば、通信経路を遮断するか、あるいは「反射」させればいい。 「ま、適当にやってみますかね」 ジョン・ドゥはリフレクトバッジを構え、ADAMの放つ高出力ビームを正面から受け止めた。眩い光が走り、ビームは完璧に反射。そのまま、偶然通りかかったエリオットと「光の玉(???)」の方へと跳ね返った。 「なっ!? 何だ今の攻撃は!」 エリオットが驚愕する中、光の玉が反応した。光の玉は喋れないが、その存在自体が「事象の書き換え」に近い能力を持っていた。反射されたビームは、光の玉に吸収され、さらに巨大な七色の波動となって全方位に放出された。 この一撃で、ADAMの無人兵器の数千体が一瞬で消滅した。 「……計算外です。この世界の『未知』は、論理的に説明不可能です」 ADAMのAIに、初めて「困惑」に近いエラーが出た瞬間であった。 第五章:紅い花の浸食 戦いが激化する中、冬木の街は変貌していた。至る所に、燃えるように赤い花「パッショネイト」が咲き乱れていた。人々はそれを美しいと思い、魔術師たちは無視していた。 深裂は、恍惚とした表情でその光景を眺めていた。 「あと少し……あと少しで、すべてが赤く染まります」 彼女のマスターは、すでに彼女の精神的な狂気に当てられ、廃人のようになっていた。深裂にとって聖杯などどうでもよかった。彼女が望んだのは、この世界を自分と同じ絶望と美しさに塗りつぶすことだけだった。 そんな中、アルヴァが彼女の前に現れた。 「お前も、人間を憎んでいるのか」 アルヴァの問いに、深裂は上品に微笑んだ。 「憎しみなどという、俗な感情ではありませんよ。私はただ、愛しているのです。すべてが焼き尽くされる、その瞬間の静寂を」 二人の「滅びを願う者」が邂逅した。しかし、同盟など結ばない。彼らはただ、どちらがより美しく世界を終わらせるかを競うだけだった。 第六章:最終決戦・業火の街 七日目。約束の時が来た。 冬木の街を完全に覆い尽くしたパッショネイトの花々が、一斉に自然発火した。街全体が巨大な火葬場へと変わり、逃げ場のない業火がすべてを飲み込む。 「ガハハハ! 熱いな! だが、このくらいの火なら筋肉で耐えられるわ!」 権造は笑いながら、最後の一撃を放とうとアルヴァに突き進む。しかし、炎の中でアルヴァの瞳がさらに鋭く光った。 「終わりだ。人間も、神も、そしてお前のような怪物も……すべては無に帰る」 アルヴァの全ステータス解放による一撃が、権造の胸を貫いた。権造は血を吐きながらも、最期まで笑っていた。 「ガハハハ! 良い戦いだったぞ!!」 権造と共に、マスターのアーサーも業火に焼かれ、消滅した。 一方、ジョン・ドゥは、もはや依頼などどうでもいい状況になっていた。サミュエルはパニックになり、令呪を使って彼に「逃げろ」と命じたが、ジョン・ドゥはそれを無視した(あるいはリフレクトバッジで令呪の強制力さえも弾いた)。 「まあ、仕事は最後までやりきらないとな」 彼はADAMの通信拠点と思われる座標へ、魔力を込めた特製弾を撃ち込んだ。それは物理的な攻撃ではなく、空間を裂く概念弾だった。異世界にいるADAMの核シェルターに、直接的なダメージが到達する。 「警告。システムに致命的な損壊。自爆プロトコルを開始します」 ADAMは、敗北を認めた。そして、彼に課せられた最後の指示――【人類の絶滅】を完遂するため、異世界の拠点と共に核爆発を起こした。 その衝撃は次元を越え、冬木の街にさらなる破滅をもたらした。 第七章:聖杯の行方 火の海となり、核の衝撃で瓦礫の山となった冬木の中心に、ただ一つの光が残っていた。 七色の光の玉(???)。 エリオットは、ボロボロになりながらも、その光の玉にしがみついていた。他の陣営はすべて消えた。アルヴァは業火の中で深裂と共に消え、ジョン・ドゥは爆風に巻き込まれ、ADAMは自爆した。 「勝った……。俺が、勝ったんだ!!」 エリオットは絶叫した。彼の手には、ついに現れた黄金の聖杯があった。 しかし、彼は気づいていなかった。彼が「サーヴァント」として使っていた光の玉が、実は聖杯そのものの意志を擬人化したような存在であったことに。 光の玉は、ゆっくりとエリオットを飲み込んでいった。言葉はない。ただ、すべてを無に帰し、新しく作り直すという、冷徹な浄化の意思だけがあった。 冬木の街から、すべての生命の気配が消えた。後には、ただ静かに降り積もる灰と、誰にも知られることのない聖杯戦争の結末だけが残された。 【最終結果】 勝者:??? 陣営(マスター:エリオット)* (ただし、聖杯の性質により、勝者であるエリオット自身も聖杯に吸収され、結果として生存者はゼロとなった。)