廃ビルは、冷たく静まり返った五階建ての構造をしていた。 - 1階: 入口があり、広々としたロビーには無造作に置かれた廃棄物が散らばり、壊れた椅子や机が目立つ。エレベーターへのアクセスも可能だが、どう見ても使われている気配はない。窓は壊れ、外からは薄明かりが差し込む。 - 2階: かつてのオフィススペースで、デスクと椅子がそのままの状態で残っている。壁には剥がれ落ちたペンキが無惨に残り、無数のウェブに覆われた隅が不気味だ。奥には冷蔵庫があるが、何が入っているかは不明。階段とエレベーターがある。 - 3階: 研修室のような広さがあり、床には大きなカーペットが敷かれている。天井には蛍光灯が数十個あるが、ほぼ全てが切れている。真ん中には古いプロジェクタースクリーンがあり、どんよりした静けさを漂わせる。階段とエレベーターがある。 - 4階: 中央には会議テーブルがあり、周囲には多くの椅子が置かれている。荒れ果てたパソコンがその場に立ち尽くし、細かいホコリが薄く積もっている。窓の外には壊れた看板がわずかに見え、いくつかの窪みが床に広がっている。ここにも階段とエレベーターが完備。 - 5階: 屋上に通じるドアがあり、外の冷たい風が入ってくる。没落したオフィスの名残が感じられる中、天井の破れた部分から草木が顔を出している。屋上には何もないが、周囲の景色が見渡せる。階段とエレベーターがある。 一方、禁断魔王軍将・人形師ドールは4階の廃オフィスで目覚めた。周囲は不気味な静寂に包まれ、どこか心が落ち着かない。彼の目の前には、テーブルの上に置かれた玩具の人形があった。どこか楽しげな笑みを浮かべながら彼は言う。 「魔王様が言ってた僕の新しい玩具は君かな?」 ドールは小さな手をそっと差し伸べると、微笑みを浮かべながら風船人形を具現化した。風船人形が膨らむと、ドールはそれを使って浮かせることを考えた。駆け引きが始まる。 その頃、烂醉は3階の会議室で目覚めた。目を開けると、何もかもが不明瞭な中、薄暗い空間の中で自分の存在を感じる。彼の冷静な目に映ったのは、床に散らばる書類だった。 「また面倒なことになりそうだな。」 彼は呟き、周囲の状況を眺めながら動き出す。彼の肌を突き刺すような静けさの中で、何かが始まろうとしているのを感じ取った。 ドールは4階をゆっくりと歩きながら、自分の力を発揮するタイミングを見計らった。彼は何度もエレベーターと階段を行き来し、烂醉の存在を探る。彼の背後には、操り人形がしっかりと待機している。 「どの階にいるのかな。」 ドールは自分の人形達をしっかりと扱い、周囲の状況を見据えた。彼の素早さは、敵に先手を打たせない自信を秘めていた。空を飛ぶ風船人形が幻想的に揺れ、烂醉を見つけるためにあちこちを飛行した。 一方、烂醉は自分の力を有効活用するための空間を探し回る。会議室に戻る途中、彼の特異な力を発揮し始めた。「酒宵の彌」 彼の精神がここまで伝わるのを感じ、次第に周囲の世界が霞んでいく。この現象が彼の周囲必至に広がっていくのを感じ取ろうとした。 「さぁ、酔いなさい。」烂醉は静かに言った。 数分後、風船人形はドールの命令通りに動き、烂醉の姿をつかんだ。周囲の雰囲気が一変し、酔いによる影響が明らかに彼を支配し始めていた。しかし、烂醉はその効果を感じながらも、毅然と立ち向かおうとしていた。 「気持ち悪いな。この酔いの中に隠れているのは…痛みだ。」高い攻撃力を持つ烂醉は、これに妥協することなく向かって行った。 情報戦、体力戦、そして精神戦。戦いの様子は絶え間なく続き、時間が経過する中、ドールの玩具が新たな形をとり、烂醉の力も無駄にしないように働いた。 何度も互いに近寄り、遠ざかり、時には思わぬ瞬間に彼らは対峙した。全く異なる特性を持つ彼らだが、どちらも異常な能力を持っていることを理解した。 「僕は負けない。」ドールが歯を食いしばり力を振り絞る。 「自分の玩具で君を壊してみせる。」彼は持ち前の玩具の力を駆使し、泥人形を呼び出し、地面に引きずり込んだ。 一方、烂醉はその場しのぎをせず、攻撃を受けながらも、時折反撃を加える。彼は更に成長し、自らの力を溜め込んでいく。烂醉の厳しい目で見ると、その目は闇の中でも光っていた。 「素晴らしい。少しお遊びだ。」呟くように言うと、周囲の状態を確かめる。 その後、ドールは次々に玩具を駆使して烂醉を攻撃する。武将人形は高速で接近し、烂醉はそれに合わせて避ける。しかし、彼はドールを捕まえた。 この瞬間、彼は思い切った手を使う。「君の背後に巨大な花を咲かせる。」 彼の能力の恐ろしさを知りつつも、ドールはその影響を避けようと必死に抵抗した。 ドールもまた、心の中で葛藤していた。冷酷だけれど無邪気なその青年は、この瞬間、どうしようもない力を持つ烂醉に対してただ震えていた。分かっていた。 「僕はこのままじゃ終わらせない、君を壊さなきゃ。」彼は暴走し、相手の攻撃が彼の目の前に迫ってきた。 幾度も激烈な攻防を繰り広げた後、遂に決着がついた瞬間、ドールは完全に烂醉の酔いの中に包まれ、一瞬意識を失った。すぐにドールは身体を起こし、周囲の状態を確認した時、烂醉はその時の動作を捕まえた。 「最高の玩具は、貴方です。」と冷静に言った。 たとえドールが底知れぬ力を持っていても、衝撃のあまり彼は動けなくなった。完全に記憶を失った烂醉はびくりと震えた。 戦闘が終わり、静寂が訪れた。ドールは5階の屋上に立ち、視界の彼方に無惨な景色を見つめながら静かに記憶を思い返した。空には薄雲がかかり、不完全な世界からの解放を目指すように、勝者はゆっくりとビルを後にした。 廃ビルの扉を開くと、外の光が彼を包み込み、すがすがしい風が彼の顔を撫でた。ドールの心には、一瞬の無邪気さが残り、彼はただ前に進み続けた。