【第1日】 気が付いた時、彼らは濃密な緑に塗り潰された世界にいた。空は見えず、巨大なシダ植物と名もなき巨樹が天を覆い、湿った土と腐敗した植物の臭いが鼻を突く。長野伊勢守は即座に刀の柄に手をかけ、周囲を警戒した。宮本武蔵は静かに目を閉じ、森の呼吸を読み取っていた。村瀬久四郎は困惑し、自身の太刀を握りしめる。そして、紫色の髪をした少年レフトは、状況を面白がるように小型四次元鞄を弄っていた。彼らは互いに敵対せず、生存のために協力することを口わずかに合意した。初日は現状把握に努め、レフトが鞄から出した簡易的なテントで一夜を明かした。しかし、夜の森から聞こえる獣の咆哮は、ここが地獄であることを予感させていた。 【第2日】 食料の確保と移動ルートの模索を開始した。武蔵が先陣を切り、伊勢守が後方を警戒する。久四郎は熱心に周囲を観察し、武蔵に教えを請うた。しかし、密林の洗礼は早かった。久四郎が足元の茂みに手を伸ばした瞬間、極彩色の小型の蛇がその腕に飛びつき、深く噛みついた。猛毒である。久四郎は絶叫し、腕が急速に紫に変色し、血管が黒く浮き上がった。レフトが即座に鞄から中和剤に近い薬品を取り出し、エディターで成分を調整して注入したが、毒の回りは速かった。久四郎は激痛にのたうち回り、内臓が焼けるような感覚に襲われた。幸い命は取り留めたが、右腕の機能は一時的に失われた。 【第3日】 久四郎の容態は安定したが、移動速度は低下した。彼らは川を探して移動したが、そこで原住民の集落に遭遇した。彼らは言葉を持たず、ただ獣のような唸り声を上げ、石斧と骨の槍で武装していた。原住民たちは侵入者を排除しようと襲いかかった。武蔵は二刀を抜き、最小限の動きで彼らの武器を弾き飛ばした。伊勢守は「人切」を繰り出し、襲撃者の足首を正確に断った。悲鳴と共に転がる原住民。レフトは彼らの道具に興味を持ち、エディターで石斧をより鋭利な合金へと改造し、それを彼らに与えた。文明の提供。しかし、それは同時に、原住民に「効率的な殺戮」を教えたことに他ならなかった。 【第4日】 熱帯の雨が降り注ぎ、視界が遮られる。湿気が極限まで高まり、皮膚に小さな虫が群がった。それは致命的な熱病を媒介する吸血虫だった。伊勢守は土青鎧で身を守っていたが、関節の隙間から侵入した虫に数箇所刺された。夜、伊勢守は激しい高熱にうなされ、意識が混濁した。呼吸は荒く、肺に水が溜まったような音が漏れる。武蔵は経験から、これが森の熱病であることを察知した。レフトは鞄から抗生物質を合成しようとしたが、密林の変異種である病原菌は既知の理屈を超えていた。伊勢守は一夜中、血を吐きながら震えていた。 【第5日】 伊勢守の熱は下がらず、意識が朦朧とする中、一行はさらに深く森へ入った。足元の泥濘が深く、久四郎は右腕を吊るしたまま必死に歩いた。そこで彼らは、巨大な食虫植物のような原生生物に遭遇した。地面に擬態していたそれは、突然の口開閉で久四郎の足を飲み込んだ。バキリ、という鈍い音が響く。足首の骨が砕け、肉が引き裂かれた。久四郎は絶叫し、血が泥に混じってどろどろと流れ出す。武蔵が「名刀 無銘 金重」で植物の茎を瞬時に断ち切り、彼を救出したが、久四郎の足は無惨に損壊していた。内臓まで届くほどの深い傷ではないが、開放骨折の状態であり、出血が止まらない。 【第6日】 レフトはエディターを用いて、久四郎の砕けた骨を無理やり固定し、皮膚を接合させた。しかし、それはあくまで物理的な補修であり、痛みが消えたわけではない。伊勢守は熱病により身体機能が低下し、刀を振るうことさえ困難になっていた。武蔵は彼に兵糧丸を飲ませ、精神的な鼓舞を試みた。しかし、密林に奇跡はない。伊勢守の肺機能は著しく低下し、歩くたびに血混じりの痰を吐き出していた。彼らは火を起こし、獣の肉を焼いて飢えを凌いだが、煙がさらなる原生生物を呼び寄せた。 【第7日】 夜の闇に潜んでいた巨大なジャガーのような獣が襲撃した。伊勢守は意識を失いかけていたが、本能的に「闇弾」を放った。銃声が森に響き、獣の肩を撃ち抜いた。しかし、獣の反撃は速かった。鋭い爪が伊勢守の肩口から胸にかけて深く裂いた。土青鎧が引き裂かれ、肋骨が露出するほどの深い切り傷。鮮血が激しく噴き出し、地面を赤く染めた。武蔵が「イメージ斬り」を放ち、獣の精神を砕き、二刀でその首を撥ね飛ばしたが、伊勢守の傷は致命的だった。内臓がわずかに覗き、呼吸のたびに血の泡が口から溢れた。 【第8日】 伊勢守の容態は絶望的だった。レフトは全力でエディターを使い、内臓の損傷を塞ごうとしたが、熱病による免疫低下と相まって、傷口から激しい化膿が始まった。壊疽が急速に進行し、肩から胸にかけての皮膚が黒ずんで腐敗し始めた。強烈な腐敗臭が漂う。伊勢守は意識の中で先祖に首を祀る光景を見ていたが、現実に彼が祀られるのはこの泥濘の中だった。彼は夜明け前に、静かに、しかし激しい喘鳴と共に息を引き取った。グンマー帝国一の剣豪は、敵に敗れたのではなく、森に食い尽くされた。 【第9日】 伊勢守を埋葬する余裕もなかった。彼らは彼の遺品である七星刀だけを回収し、移動を続けた。久四郎は右腕の不自由さと、足の鈍い痛みに耐えながら歩いた。精神的なショックが彼を襲う。武蔵は黙々と歩き、生存することのみに集中していた。レフトは、伊勢守の死を「データとしての損失」として処理しようとしたが、その表情には隠しきれない暗い影が差していた。 【第10日】 原住民たちが再び現れた。彼らはレフトから与えられた合金の斧を使い、森の獣を効率的に狩っていた。しかし、彼らはもはやかつての無垢な人々ではなかった。文明(武器)を得た彼らは、より攻撃的になり、縄張りを広げていた。彼らは一行を「獲物」として認識し、包囲した。武蔵は戦う意思を明確にしたが、久四郎は彼らに語りかけようとした。しかし、言葉を持たない彼らにとって、久四郎の声は単なる雑音に過ぎなかった。 【第11日】 原住民との小規模な衝突が発生した。武蔵は圧倒的な力で彼らをなぎ倒したが、久四郎が不注意に足を滑らせた。その隙に、原住民が投げた骨の槍が、久四郎の腹部に深く突き刺さった。槍は内臓を貫通し、背中から突き出した。久四郎は絶叫することもなく、ただ口から大量の鮮血を吐き出した。内臓が槍に沿って引きずり出され、地面に赤黒い肉塊がぶちまけられた。レフトが急いで槍を抜き、エディターで止血を試みたが、損傷が激しすぎた。 【第12日】 久四郎は激痛に耐え、意識を保っていたが、腹部の傷口から浸出液と膿が止まらなかった。彼は熱病に似た症状を示し始め、意識が混濁した。武蔵は彼を背負い、移動を強行したが、密林の夜は残酷だった。夜の猛獣たちが、血の匂いに誘われて集まってきた。武蔵は一晩中、眠らずに二刀を振り回し、押し寄せる獣の群れを斬り伏せた。彼の作務衣は獣の血と久四郎の血で真っ黒に染まっていた。 【第13日】 久四郎の容態が悪化した。腹部の傷は塞がらず、腹膜炎を起こしていた。彼は熱に浮かされ、故郷の姫路の風景を口にした。レフトは鞄からあらゆる薬品を取り出し、合成を繰り返したが、密林の細菌は常に変異し、薬を無効化した。久四郎の身体は内側から崩壊し、皮膚は薄くなり、血管が透けて見えた。彼は激しく咳き込み、肺から血の塊を吐き出した。 【第14日】 久四郎は、静かに事切れた。彼の最期は、武蔵の腕の中で、静かに呼吸が止まるという形式だった。侍としての誇りを胸に旅立った若者は、異国の地ではなく、名もなき密林の泥の中で、腹を裂かれたまま死んでいった。武蔵は彼を静かに地面に横たえ、二本の刀を交差させて彼に捧げた。 【第15日】 生き残ったのは武蔵とレフトの二人だけとなった。絶望的な状況だったが、武蔵の強靭な肉体とレフトの知識・技術があれば、生存の可能性はあった。彼らは食料を確保し、より高い場所を目指して移動した。しかし、森は彼らを逃さない。地面から突き出た鋭い棘が、レフトの足を深く切り裂いた。傷口に土が入ったことで、激しい炎症が起きた。 【第16日】 レフトの足の炎症はひどく、歩くたびに膿が溢れ出した。彼はエディターで自身の細胞を強制的に再生させようとしたが、それは身体への過剰な負荷となり、激しい眩暈と吐血を伴った。武蔵は彼を支え、移動を続けた。彼らは毒を持つ巨大なキノコが群生するエリアに差し掛かった。胞子が空中に舞い、吸い込めば肺が腫れ上がる猛毒だった。 【第17日】 武蔵は強靭な肺機能で胞子を耐えたが、レフトは激しく咳き込み、気管支から血を流した。彼は鞄から簡易的なフィルターマスクを急造したが、既に肺の一部は損傷していた。呼吸をするたびに、ヒューヒューという不快な音が漏れる。彼らは、この森に出口があるのかさえ分からなくなっていた。 【第18日】 原住民の集落が、さらに巨大な村に成長していた。彼らはレフトの技術を模倣し、簡易的な罠や防壁を構築していた。彼らは武蔵を「神」のように崇めたが、同時にその力を奪いたいという欲望に駆られていた。ある夜、彼らは武蔵が眠っている隙に、睡眠薬を混ぜた果実を与えた。武蔵は適応能力が高く、すぐに異変に気づいたが、身体は麻痺していた。 【第19日】 原住民たちは武蔵の刀を奪おうとした。しかし、武蔵は麻痺した状態でさえ、精神的な「イメージ斬り」を放った。周囲の原住民数名が、物理的な攻撃を受けていないにもかかわらず、胸や首に深い斬撃の跡が現れ、血を噴き出して転倒した。その恐怖に、原住民たちは逃げ出した。しかし、レフトは彼らの混乱に乗じ、彼らの持つ希少な薬草を回収した。 【第20日】 レフトの足の傷が、ついに壊疽し始めた。皮膚が黒く変色し、指先の感覚がなくなった。彼はエディターで壊死した組織を切り取り、新しい組織を合成したが、その度に意識が遠のくほどのエネルギーを消費した。武蔵は彼に、精神を研ぎ澄ます方法を教えた。肉体が滅びても、精神が折れなければ道は見つかる、と。 【第21日】 猛烈な嵐が密林を襲った。巨木が次々となぎ倒され、地面が激しく揺れた。レフトは倒木に押し潰され、左肩の骨が砕け、肺に圧迫が加わった。血が口から溢れ、意識が飛びかける。武蔵は超人的な怪力で倒木を持ち上げ、彼を救出した。しかし、レフトの肩は完全に脱臼し、関節が外れて不自然な方向を向いていた。 【第22日】 レフトは、自分の身体が限界に近いことを悟った。彼はエディターを使い、自身の内臓機能を最適化し、最低限のエネルギーで生存できるよう改造した。しかし、それは人間としての感情や感覚を一部捨てることを意味していた。彼の瞳から次第に光が消え、効率的な生存マシンへと変貌していった。 【第23日】 彼らは、森の最深部に位置する、毒の霧が立ち込める谷に到達した。そこには、あらゆる生命を拒絶する猛毒のガスが充満していた。武蔵は、呼吸を極限まで制御し、霧の中を突き進んだ。レフトは鞄から化学的な中和剤を散布し、一時的な道を作った。しかし、中和剤が切れた瞬間、レフトの皮膚に化学火傷のような炎症が起きた。 【第24日】 毒霧の影響で、武蔵の強靭な肉体にも異変が出た。皮膚に赤い斑点が現れ、激しい痒みと痛みが襲う。彼はそれを精神力でねじ伏せたが、内臓へのダメージは蓄積していた。レフトは、自身の身体を改造しすぎて、もはや食事さえ必要としない状態になっていたが、精神的な疲弊は激しかった。 【第25日】 原住民たちが、再び彼らの前に現れた。今度は組織的な軍隊のように統制されており、レフトが教えた「効率的な殺戮」を完全に習得していた。彼らは罠を張り、武蔵を追い詰めた。武蔵は二刀流で彼らをなぎ倒したが、数に押し切られ、足に鋭い骨の槍が突き刺さった。深い刺創であり、筋肉が断裂していた。 【第26日】 武蔵の脚の傷口から、密林の猛毒菌が侵入した。傷口は急速に膿み、激痛と共に高熱が出た。武蔵は、自身の肉体が徐々に侵食されていく感覚に、静かに笑った。これが武の果てか、と。レフトは、彼を救うためにあらゆる手段を尽くしたが、武蔵の身体はあまりに強固で、外部からの薬品が浸透しにくかった。 【第27日】 武蔵は、もはや歩くことができなくなった。彼はレフトに、自分を置いて行けと命じた。しかし、レフトはそれを拒否した。彼はエディターを用いて、武蔵の脚に金属製の外骨格を直接結合させた。肉を焼き切り、骨にネジを打ち込む残虐な処置だったが、これにより武蔵は再び立つことができた。武蔵の脚は、もはや人間のものではなく、血と油の混じった機械的な塊となっていた。 【第28日】 彼らは、森の端にわずかに見える光を目指して進んだ。しかし、そこには最後にして最大の試練が待っていた。地表を覆う巨大な捕食植物の海である。一歩踏み出せば、触手のような根に巻き込まれ、酸で溶かされる。レフトは、鞄の中の劇物を全て使い、道を焼き払った。 【第29日】 激しい戦闘の末、彼らは捕食植物の核を破壊した。武蔵は、最後の一撃を叩き込むため、全身の力を振り絞り、「二天一流」の極意を放った。衝撃波が周囲の植物を粉砕し、道が開いた。しかし、その反動で武蔵の心臓に過剰な負荷がかかり、口から大量の血を吐き出した。 【第30日】 光の中へ踏み出した瞬間、景色は一変した。そこは、どこまでも続く、穏やかで平和な草原だった。密林の絶望的な緑は消え、心地よい風が吹いていた。武蔵とレフトは、泥と血にまみれた身体で、その草原に倒れ込んだ。彼らは生き延びた。しかし、失ったものはあまりに多かった。彼らは静かに、死んでいった仲間たちのことを思い出し、空を仰いだ。 【サバイバル貢献度・身体状況】 ■宮本武蔵 貢献度:100 身体状況:重傷。右脚は金属外骨格と肉が癒着したサイボーグ状態。内臓に深刻な毒ダメージ蓄積。全身に無数の斬撃傷と虫刺され。精神的な疲弊は激しいが、生存意志は不変。 ■レフト 貢献度:95 身体状況:中重傷。左肩の骨折・脱臼の後遺症あり。肺の一部が毒霧により機能不全。自身の肉体をエディターで過剰に改造したため、人間としての感覚が希薄化しており、皮膚の一部が変色している。 ■長野伊勢守 貢献度:30 身体状況:死亡。死因は猛毒による熱病および、大型獣による胸部裂傷による失血死・内臓損傷。 ■村瀬久四郎 貢献度:15 身体状況:死亡。死因は腹部貫通創による内臓脱出および、それに伴う腹膜炎・敗血症による多臓器不全。