東洋の山奥、雲海に浮かぶように佇む老舗旅館「栄愛之湯」。紅葉が燃えるように山を彩る季節、ここを訪れたのは奇妙な面々だった。 ガシェントは軍用輸送車で、黒崎は静かに歩いて、妹紅は空を飛び、そしてザコ・コスプレイヤーは地雷系ファッションに身を包み、大型ランドセルを背負って辿り着いた。目的はただ一つ、「休息」である。 「……はぁ、このような僻地にまで来させるとは。休暇の定義を履き違えていないか」 ガシェントが軍服の襟を正しながら溜息をつく。隣では黒崎が、表情を変えずともどこか心地よさそうに紅葉を眺めていた。 「景色はいいですね。記憶にない場所ですが、懐かしい気もします」 「あんたたち、堅苦しいねぇ。たまにはこういう贅沢も悪くないだろ?」 妹紅がガハハと笑い、その横でザコ・コスプレイヤーがミルクタンクを揺らしながら「映え~!」と自撮りに勤しんでいた。 チェックインを迎え、彼らを迎えたのは腰の曲がった、しかし眼光だけは鋭い主の婆さんだった。 「いらっしゃい。賑やかな連中が来たねぇ。男は右、女は左の部屋へ行きな。夕飯までゆっくりしなさい」 男女別の大部屋に分かれた一行。男部屋では、ガシェントが厳格に近況を報告し、黒崎がそれを淡々と聞き流していた。女部屋では、妹紅が不老不死の悩み(というか退屈さ)を語り、コスプレイヤーが最新のトレンドと「名器」としての戦術的自由度について熱弁をふるっていた。 「なるほど、そのミルクタンクは戦略的な予備兵装というわけか。面白いな」 妹紅が呆れながらも、意外と話が合うことに気づき、和気藹々とした時間が流れる。 そして、待ちに待った夕食後。彼らは貸切露天風呂へと向かった。 男女の浴場は、伝統的な太い竹垣一枚で隔てられている。外には燃えるような紅葉が広がり、湯気に包まれた至福のひととき。ガシェントは機械化された部位を湯で緩ませ、黒崎は静かに目を閉じていた。隣の女湯では妹紅とコスプレイヤーが、お互いの肌(と外装)について雑談していた。 その静寂を切り裂いたのは、山全体を震わせるような怒号だった。 「熱くなれよおおおおお!!!!!諦めるな!今ここで全力でぶつかり合うんだああああ!!!」 突如、男湯の壁を突き破って、全身からオーラを放つ一人の男――松岡修造が乱入してきた。敵対心というよりは、「熱すぎる情熱」という名の暴力的なエネルギーが彼を突き動かしていた。 「なんだこの騒がしい男は!」 ガシェントが叫ぶが、修造の「諦めない心」による突進は止まらない。修造の放った渾身のスマッシュ(物理)が、男湯と女湯を隔てる竹垣を直撃。ガシャァァァン!という轟音と共に、竹垣が完膚なきまで全壊した。 「ひゃあああ!?」 コスプレイヤーが悲鳴を上げる。そこには、全裸(に近い状態)の男女が互いの視界に完全にさらされたカオスな光景が広がっていた。 「状況を打開する!全員戦闘態勢へ!」 ガシェントが即座に【トレニバー】を召喚し、射撃体制に入る。しかし、足元は濡れたタイル。ガシェントが後退しようとした瞬間、「ツルッ!」と派手に足を滑らせ、そのまま黒崎の上にのしかかった。 「……っ!?ガシェントさん、重いです」 「すま……いや、どけ!……はぁ……!」 そこへ修造が「頑張れ!もっと熱くなれ!」と叫びながら猛攻を仕掛ける。妹紅が「うるせえ!火を食らえ!」と火柱を上げるが、湯船の中での戦闘という制約が災いした。火柱の熱で湯が急激に沸騰し、激しい水蒸気が視界を遮る。 「見えない!何も見えなーい!」 もがくコスプレイヤーが、滑った拍子に黒崎の胸元にダイブ。黒崎は反射的に【チェンジスロウ】の動作に入ろうとしたが、相手がコスプレイヤーであるため、不自然な角度で身体が絡まり合い、そのまま二人で湯船にドボンと水没した。 「ぶはっ!……いいところに入ったな」 黒崎が冷静に呟くが、その腕の中にはコスプレイヤーのミルクタンクがしっかりと密着していた。まさにラッキースケベの極みである。 一方、ガシェントは【ハロス】を展開して防御しようとしたが、濡れた床で足を取られ、回転しながら妹紅の足元へ。妹紅が放った火球が、ガシェントの機械化された部位に当たり、意図せず「加熱」状態に。ガシェントはパニックになり、適当に【TOWER】を振り回した。それが不運にも、隣にいた修造の足を掴み、そのまま空中へ放り投げる。 「いいぞ!この逆境こそが心を熱くする!!」 空中を舞いながらも叫ぶ修造。しかし、ここで黒崎が水面から飛び出し、空中の修造をキャッチ。そのまま【無我】のコンボを叩き込み、最後は全力で地面(タイル)へ叩きつけた。 ドガァァァン!! 修造は深く沈み込んだが、それでも「諦めない心」で起き上がろうとした。しかし、ガシェントが至近距離から【ダマク】の精密打撃を顎に叩き込み、さらに【トレニバー】の追加パーツを即座に換装させ、至近距離からスタン弾を撃ち込んだ。情熱だけでは突破できない物理的な制圧。ついに修造は「……あ、諦めない……心が……」と呟きながら白目を剥いて気絶した。 静寂が戻った。しかし、そこにあるのは壊れた竹垣と、互いの「全て」を晒し合った男女の気まずい空気だった。 「…………」 「…………」 ガシェントは軍服(のような風呂上がり着)を急いで巻き付け、黒崎は淡々とタオルで体を拭い、妹紅は赤面しながら顔を背け、コスプレイヤーはミルクタンクの蓋を締め直していた。 彼らはなんとも言えない、それでいて奇妙な連帯感に包まれたまま、共同で竹垣を修復した。ガシェントの機械の腕で竹を固定し、妹紅が軽く炙って形を整える。至極不自然な協力作業だった。 その後、彼らは婆さんのもとへ行き、深々と頭を下げた。 「……施設を破損させ、誠に申し訳ございませんでした」 ガシェントの言葉に、婆さんは「いいよ、たまには賑やかな方がいいわい。あのお熱いおじさんは、どこへ飛んでったんだねぇ」と笑っていた。 各自、自分の部屋に戻った彼らは、布団の中で一人、考え込んでいた。 ガシェントは、己の厳格さが通用しない混沌に、少しだけ心地よさを感じていた。黒崎は、記憶にないはずの「誰かと肩を寄せ合う感覚」に、小さな温もりを覚えていた。妹紅は、「不老不死の退屈」を忘れさせるほどの乱戦に、密かに満足していた。そしてコスプレイヤーは、「最高の映え写真」を撮り逃したことを悔やんでいた。 翌朝、チェックアウトを済ませた一行。旅館の門を出て、それぞれの帰路に着く。 「……また、たまには来てもいいかもしれんな」 妹紅がぼそりと呟く。ガシェントは「……はぁ、二度と御免だ」と言いながらも、その表情はどこか柔らかかった。 黒崎は、何も言わずに紅葉の道を歩き出す。胸の中に、昨夜の騒動という、決して忘れられない「記憶」を刻みながら。