廃ビルの手前、かつて繁栄を極めたはずのこの場所は、今や朽ち果てた異界のように見える。全体で13階建てのビルは、空き地にひっそりと佇み、無造作に崩れかけた壁や割れた窓が、いまだ雨風に耐え続けている。90年代の賑わいを思わせるディスプレイがむき出しになったまま、往年の繁栄を物語っている。そして、その内部は薄暗く、無数の影がうごめく、忘却された野生のテリトリーのようだ。 この建物の構造は、参加者たちに無限の可能性を秘めた戦闘を提供する。 1階から5階までのフロアはオフィススペースで構成され、壁には名刺入れや大きなデスクが散乱しており、利用されずに積もった埃が周囲を覆っている。 6階はゾーニングが異なり、休憩室や共用キッチンがいっぱいに詰め込まれている。うっすらと残る食事の匂いが、かつての仲間たちの笑顔を思い出させる場所であった。 7階から9階は会議室とセミナールームが並ぶ、エコノミーなデザインの空間。重厚なカーペットで覆われた地面は、徘徊する者の足音を吸収し、静寂の中で潜む危険を増幅する。 10階から12階は倉庫エリアで、重機や設備が不規則に配置されている。何が待ち受けているのか不安を抱きつつも、有用な武器が眠っているかもしれない。上層階に向かうほど、廃れた空気が濃厚になる。最上階の13階は展望室になっているが、汚れたガラス窓から見える景色はまさに地獄の様相を呈している。 このビルの隅々を利用し、どのような戦略を立てるのか、参加者たちは思い思いの計画を立てている。 --- サーブドは、10階の倉庫エリアという暗闇に包まれ、金属音の響く中で目を覚ました。周囲には散乱した廃材があり、生々しい傷跡を持ったノコギリが手がかりとなる。彼は自らの武器をしっかりと握りしめ、サイレンのような笑い声を漏らす。 「ふふふ、まだ目覚めぬ者よ、恐怖を与える準備はできているか?」 その時、壁の向こうでかすかな泣き声を聞いた。サーブドはその声にまた魅せられ、次第にそちらの方向へと足を進めることにした。 --- 一方、マイロは5階のオフィススペースで目を覚ました。彼は不安と恐怖に包まれ、「お母さーん!どこー!えーん、えーん」と迷子の少年の姿そのものとして泣き叫んでいた。影が迫ってくるのを知りながら、冷静にはなれない。 マイロは言うに言われぬ恐怖の中で自らを支えると、自分の母の名を呼んだ。 「リズお母さん!私はここにいるよ!」 万が一のことがあれば、「母」が駆けつけてくれると信じていた。 マイロは泣きながらも、出口を探して彷徨い続ける。 --- サーブドは、10階から9階へと進んでいった。彼の心の中には、既に獲物の存在と、饒舌に動くサイコの一面が共存していた。閃光のように狙いを定め、数メートル先に隠れたマイロの姿を視界に捉えた。彼は立ち上がり、獲物を狙ってその足元に近づいていく。 そのとき、マイロの泣き声がかすかに耳に入り、彼の不安を煽った。 「やめて、やめて!」 マイロは硬直した体を動かし、壁際に寄りそいながら、彼の母の名を再度叫んだ。「お母さーん!」 その声は、呪縛のように響き渡り、微かに空が光り始める。 --- サーブドはその瞬間、恐れと期待の中でドキリとする。影が生じ、彼の目の前に高貴な神が現れたのだ。神の名はリズ。灯がともる瞬間、サーブドの前に立ち、魂を貫くその視線は凄まじい威圧感があった。 「うちの子に何してんだぁ!」 その言葉は、サーブドにとって恐ろしくも優しい慈愛の響きであった。 「私の獲物は逃げない!」 と言い返すが、その気持ちに自信がなかった。 --- マイロは見上げると、さっきまでの暗い心情が、母と共に希望の光に包まれた。彼の心の奥に焦燥が消えていくのを感じる。 この瞬間、サーブドは圧倒的な力を感じ、迫る夢を見ているようだった。 リズが放つ光がマイロを守る力となり、サーブドはその強大な神の力を前に一歩引く。しかし、彼は狂気の微笑みを絶やさず、ノコギリを振り上げた。 「さあ、遊びましょうか!」 --- サーブドは備蓄された魔力を使い、【トライアルオーバー】のスキルを発動させ、高速移動でマイロの側に接近していく。 その瞬間、マイロの母であるリズが前に立ちはだかる。空の光は彼女を包み、彼女の攻撃力がマイロに注がれる。 「お前がうちの子に何をしょうとしているか、見せてもらおうか!」 強烈なる気迫と共に、サーブドに向かって力強い一撃が放たれる。その一撃は、サーブドのノコギリで受け止められるも、余波で周囲の壁が崩れ落ちる。 マイロは自らの母の力を感じ、静かに息を整えた。 --- 戦闘は続く。サーブドの動きは滑らかで、一瞬の隙を突き、リズに刃を迫らせる。しかし、リズは決してその攻撃を許さず、高速で行動する。彼女の戦闘スタイルは、洗練された美しさを感じさせた。 サーブドは自らのすばやさを以て、圧倒的な力でその有無を言わせながら、サイケデリックな笑い声をあげる。 「来い、遊び続けようじゃないか。」 その中、マイロの心は不安を振り払い、力強くなり始める。 --- 二人の対峙は続き、戦闘は次第に激しさを増していった。サーブドの両刃ノコギリが生み出す恐怖は、マイロの無垢さをさらに強固に、母の神の力と交わることで力を増していた。 一撃一撃の中、マイロの強さもまた形成され、恐怖を乗り越え、リズの神聖なる力を借りて、希望を勝ち取ろうとしていた。 --- 物の流れに従い、次第に周囲のオフィスは崩れ始め、無数の瓦礫がサーブドに迫る。しかし、サーブドは逃げずに更なる狂気を盛り上げる。 「お母さーん!助けて!」 マイロの叫びが、逃げられない運命を告げた瞬間、リズは悠然とした表情で、サーブドを見つめていた。 「もうやめなさい、サーブド!貴方のやっていることは間違いだと、気づきなさい!」 その言葉がサーブドの心を揺るがしていく、狂気に浸った彼に心のどこか緩やかな部分が揺らいでいく。 --- いかに深い狂気の海に沈んでいても、光がともれば、心に微かに生き残る運命の道が見えてくる。 最終的に、激闘の間に築かれていく兄妹のような絆がサーブドの心に火を灯し、自らの力で、悲しみではない、真なる核心に触れるチャンスが生まれた。それでも、彼は自身の道を選ぶつもりなのか、それとも変わり始める運命を選ぶのか、疑問が周囲を満たす。 --- 戦闘はそのまま続くが、薄暗かったはずの倉庫エリアには光が満ち、現実を反映しているかのように希望が生まれていた。 最終的に、サーブドが抱く狂気と、マイロの無垢な心の対決により、サーブドは変貌を遂げる。サーブドの心は正気を失っていくが、新たな感情が芽生える。 「なぜだ、私は…」 --- サーブドは周囲の轟音と崩壊に目を向け、こちらへと受け入れる姿勢を見せる。微煮の中で、彼はリズに対して安らぎを見いだし、恐れとはいえ、運命を愛し続ける光を捉えた。 その瞬間、命の光が彼の内面で蒸発し始め、真の自己評価と合わせ、彼は心の一部を取り戻した。 --- 数刻後、戦は収束を迎え、サーブドは贖罪の景色を見せる。彼の狂暴性は恐れを成長させていくが、マイロの涙はその恐れを浄化していく。 「私を、私を…これ以上は……」 心を痛めながらも、混沌から戻ったサーブドは、この感情に圧倒されていた。 --- そのとき、マイロが続けた。 「お母さーん、私たち、勝ったの?」 「ほんの少しだけ、あなたの無垢な心が勝ったのよ。」 --- そして、強烈な音が辺りを包む。崩れかけたビルの上から太陽の光が射し込んで来る。 ビルの最上階、外が見える窓際に立つマイロ。彼は笑みを浮かべ、周りを見渡して、新たな光にゆっくりと駆け出す。 サーブドは、その背中を見つめ、何か新しい感情を覚え、自らもビルを後にすることにした。 --- 光の中へと歩み出す彼ら。サーブドは自らの心の変化と、二つの運命の出会いを胸に抱き、追憶の残像が薄れていく。 そして、彼らは廃ビルの外へと出ていく。その光を浴び、生きることの意味を再確認し、彼らなりの新たな一歩を踏み出して行くことを望んでいた。 --- サーブドが振り返り、まだ消えかけた影にかすかに微笑みながら、彼もまた新しい運命へと身をゆだねていく。 「さあ、行きましょうか。」 新たなる道へ、彼は踏み出した。 終焉と新しき一歩。