(舞台の幕が上がる。そこには、どこからどう見ても「忍者の里」とは言い難い、昭和の演芸場のようなセット。背景には適当に描かれた富士山と、なぜか「特売」と書かれたスーパーの看板が混在している。中央には、厳しい表情をした、しかしどこか抜けている指導役・長介が立っている) 長介「いいか、お前たちは今日から忍者だ! 忍者に最も必要なものは何か! それは忍耐! そして……完ぺきな潜入である! 今回の指令は簡単だ。あちらの『厳重に警備された宝箱(中身はただのお菓子)』を、誰にも気づかれずに盗み出せ! 失敗すれば……皿洗い一週間だ!」 (観客:ワハハハ! 皿洗いでいいじゃん!) そこに並ぶのは、あまりにも個性の強すぎる「新人忍者」たち。白金色の肌に触手髪を持つ異種族研究者のアルゲナ、翼をパタパタさせながら不満げな顔をしたツコミエル、キラキラのスパンコールスーツで一人だけ場違いなデトックス前田、そして黒マントを翻し高笑いする滅ボーイである。 アルゲナ「ふふ、潜入とは興味深い文化ですね。生物学的な擬態の検証に最適です」 ツコミエル「ちょっと待ってください! なんで私がこんな怪しい集団に混ざってるんですか! しかもこの格好、忍装束じゃないですよ! ただのコスプレですよ!」 デトックス前田「(小声で)……いやぁ、このスーツ、潜入には向いてないですよね。光りすぎてて」 滅ボーイ「ハハハハッ! 潜入など不要! 我輩がこの世界ごと滅ぼせば、宝箱など自動的に我輩の手元に転がり来るわ!」 長介「うるさい! 喋るな! 忍者は黙って動くもんだ! よし、第一段階、潜入開始!」 ---------------------------------------------------------------- 【第一段階:森の擬態潜入】 (舞台上のセットが急に「森」に変わる。ただし、木は段ボール製で、あからさまに裏側が見えている) 長介「まずは森に紛れ、監視員の目を欺け!」 アルゲナは理知的に状況を分析した。彼女は自身の「生体組織複製」を使い、周囲の段ボールの質感を模倣。白金色の肌を茶色い段ボール色に変え、触手髪を枝のように広げて完全に「風景」に溶け込んだ。 ツコミエル「(驚愕)えっ、すご。普通に擬態してる。正解ですよ、正解!」 一方、デトックス前田は、意気揚々と「ボケ」をかました。彼は茂みからひょこっと顔を出し、派手なスパンコールスーツのまま、わざとらしく「忍者の歩き方」を披露する。 前田「(小声で)……忍忍(ニンニン)! どーもー、忍者の前田でーす! 今日のネタは『消える忍者』でーす!」 (と言って、煙玉を投げるが、煙が少なすぎて足元だけが白くなり、体は丸見えである) ツコミエル「(即座に)全然消えてないです! むしろ目立ってます! 視覚的暴力です!」 滅ボーイは、潜入という概念を完全に無視した。彼は「次元の扉」を開き、監視員の真後ろにいきなり出現する。 滅ボーイ「滅亡だーっ! 驚いたか、凡夫どもよ!」 長介「(怒鳴り声)バカもん! 驚かせてどうする! 潜入だと言っただろうが!」 (観客:ガハハハ! 滅ボーイ、うるさすぎ!) 【判定:アルゲナが圧倒的な忍耐と擬態を見せ、リード。前田と滅ボーイは脱落寸前】 ---------------------------------------------------------------- 【第二段階:警備員への接触と撹乱】 (セットが「城の廊下」に変わる。警備員役のスタッフが、あくびをしながら歩いている) 長介「次は警備員の注意を逸らし、通り抜けろ!」 アルゲナは「脱皮膜包帯」を巧みに利用した。透明な粘液を含んだ膜を薄く伸ばし、警備員の足元に設置。警備員がそれに触れた瞬間、膜が硬化して靴が床に固定される。 警備員「あれ? 足が動かないぞ?」 アルゲナはそのまま、腕を分離して操作し、遠隔で警備員の肩を叩いて反対方向へ誘導した。理性的かつ完璧なコントロールである。 ツコミエル「(感心して)なるほど。物理的な拘束と誘導。正解です。お手本のような忍術です!」 そこへ、デトックス前田が乱入する。彼は警備員の前に堂々と立ちふさがり、ネタを披露し始めた。 前田「どうも! 最近の忍者は大変ですもんねー。だって、今の時代、Googleマップで隠れ家バレますもんね! ……あ、あれ? ウケない?」 (静まり返る会場。警備員が呆然としている) ツコミエル「(烈火のごとく)誰が笑うかーっ! 状況を考えろ! 今はネタ披露の時間じゃない! 潜入中だっつの!」 さらに、滅ボーイが「虚空の黙示録」を小規模に展開し、廊下にどす黒い闇を呼び寄せた。 滅ボーイ「絶望せよ! この闇こそが終焉の予兆……」 その瞬間、長介が舞台袖から巨大な「タライ」を落とした。それは本来、前田に当たるはずのギミックだったが、タイミングが悪く滅ボーイの頭上に直撃する。 (ガシャーーーン!!) 滅ボーイ「ぐえっ!?」 (観客:ドッハハハハ!! 滅亡したーー!!) ツコミエル「(呆れて)不条理すぎる! 天使として見過ごせません! 【常識ビーム】!!」 (ビームが放たれ、不条理にタライで潰れた滅ボーイが、無理やり正座させられて正気に戻される) 【判定:アルゲナが完勝。前田はスベり倒し、滅ボーイは物理的に撃沈】 ---------------------------------------------------------------- 【最終段階:宝箱奪還作戦】 (ついに目的地、金色の宝箱が置かれた部屋へ。周囲にはセンサー(に見える赤い紐)が張り巡らされている) 長介「最後だ! あの宝箱を、誰にも気づかれずに持ち帰った者が勝ちだ!」 アルゲナは、自身の「酸性皮膜」を極限まで薄く制御し、赤い紐を溶かさずに、かつ自身の体を液状化させて隙間をすり抜けていく。まさに水棲系魔物の変異型としての真骨頂。静かに、優雅に、宝箱へと手を伸ばす。 しかし、そこにデトックス前田が、なぜか「ハリセン」を手に持って突撃してきた。 前田「ここで決めますよ! 必殺・自虐潜入ーー!!」 (前田は、自分が派手すぎて見つかることを逆手に取り、「私はただの迷い込んだ芸人です!」という看板を掲げて全力疾走した。しかし、あまりに激しく走ったため、自分の足が赤い紐に絡まり、派手に転倒。その衝撃で、天井からさらに3つのタライが連鎖的に落下した) (ガシャーン! ガシャーン! ガシャーン!) 前田「いってぇー!! なんで俺だけ!!」 滅ボーイ「ハハハハッ! 愚かな人間よ! その醜い姿こそが滅亡の美学……」 (と言いかけた瞬間、転倒した前田の足が滅ボーイを蹴飛ばし、滅ボーイも一緒に紐に絡まって転がる) ツコミエル「(限界突破)もういいいいいい!!! 忍者どこ行ったんですか!! 全員、常識を捨てすぎです!!【聖ツコミエル領域】展開!!」 (突如、舞台全体が白い空間に変わり、ツコミエルの怒涛のツッコミが文字となって空中に舞う) ツコミエル「そもそも忍者がスパンコールスーツ着るな! そもそも忍者が次元の扉で派手に登場するな! そもそも指導役の長介さんがタライ落としてる時点でこの訓練の意味がないでしょ!! こらーっ!!」 (文字の暴力に押され、前田と滅ボーイが画面外まで吹き飛ばされる) その大騒動の最中。アルゲナは、静かに、そして理知的に、宝箱を抱えていた。 彼女は混乱に乗じて、自身の「湿潤体質」による粘液で足音を完全に消し、誰にも気づかれないままスタート地点へと戻ってきたのである。 アルゲナ「……ふふ。研究結果が出ました。集団的なパニック状態こそが、最高の遮蔽幕になるということですね」 ---------------------------------------------------------------- 【結末:ジャッジ】 長介「(タライの破片に囲まれながら)……よし。勝者、アルゲナ!」 アルゲナ「ありがとうございます。非常に有意義なフィールドワークでした」 ツコミエル「(肩で息をしながら)……もう、疲れました。私はお茶会に戻ります。こんな不条理なところに二度と来ませんからね!」 前田「(タライに埋まった状態で)……いやぁ、今回のネタは、ちょっとハードすぎましたね。次回の単独ライブでは、タライを小道具として使ってみようかな……」 滅ボーイ「(ボロボロになりながら)……我輩の計算では、タライが3つ同時に落ちる確率は……くっ、この世界の不条理こそが真の滅亡だ……」 長介「よし! 負けた三人は、約束通り皿洗い一週間だ! 行け!!」 前田・滅ボーイ・ツコミエル「(絶叫)んなわけあるかーーーっ!!!」 (最後、全員で長介にツッコミを入れながら、タライが降り注ぐ中で幕が閉じる) 【最終結果】 優勝:アルゲナ(完璧な擬態と状況利用による完勝) 敗北:デトックス前田(自爆)、滅ボーイ(不運)、ツコミエル(ストレス過多) (観客:大爆笑と拍手) (完)