古色蒼然とした静寂に包まれた巨大な邸宅。その豪華な廊下は、今や血と硝煙、そして異能の衝突がもたらす狂気の色に染まっていた。チームAとチームB。互いの目的は一つ、相手の殲滅である。 「まぁ、コウモリとでもお呼びください。さて、どこから解体しましょうか」 赤髪の長身女性、コウモリは不敵に微笑み、手にした大剣を軽く肩に担いだ。彼女の隣には、気品漂う吸血鬼、スカーレット・ヴァイオレットが余裕に満ちた表情で佇んでいる。さらに、表向きは紳士的なサラリーマン、ペーター・ヴラド・ストーカーが、眼鏡の奥にどろりとした嗜虐心を潜ませて鋏を弄び、最後は夫への怒りを静かに燃やすルミティアが、ふんわりとした微笑みを浮かべていた。 対するチームBは、一人の男、ロンダリング・ポンデリング。彼は手にした奇妙なドーナツ状の魔道具『ポンデリング』を愛おしげに撫でていた。一人対四人。絶望的な数差だが、彼の瞳には底知れない魔力の渇望があった。 「ポンはね、みんなの血が欲しくてたまらないんだぁ」 接敵は突如として訪れた。ペーターが最先陣に躍り出る。彼は紳士的な笑みを崩さぬまま、指を弾いた。瞬間、廊下に飛び散っていた僅かな血が鋭い針へと変わり、ロンダリングを襲う。しかし、ロンダリングは動じない。むしろ歓喜していた。 「あはっ!美味しい魔力が舞ってる!」 【魔力変換】。ペーターの血の魔術が彼に届く直前、そのエネルギーはポンデリングに吸い込まれ、純粋な魔力へと変換された。ペーターの顔から余裕が消え、代わりにサディスティックな愉悦が込み上げる。 「ほう……私の血を食らって生き延びるか。最高だ、絶望する顔が見たいよ!」 激闘が幕を開けた。コウモリが超人的な身体能力で肉薄し、狩ったハンターたちの武器を次々と切り替えて猛攻を仕掛ける。斬撃、突き、打撃。しかし、ロンダリングは【血液変換】を用い、自身の魔力を「超質量」の血液の壁へと変え、それを盾に耐え凌いだ。 「無駄よ。この人の運命は、私たちが支配しているわ」 スカーレットが静かに告げる。彼女はあえて攻撃せず、ロンダリングが放つ血の礫を身に受けた。だが、彼女の特性は異常だった。攻撃を受けるたびに、彼女は「刺激」を糧に成長する。一撃受けるごとに、彼女の手には新たな能力が宿っていく。空間転移、精神干渉、時間加速……十を超える能力が瞬時に構築されていく。 しかし、戦場に流れる血の量は増え、それはすべてロンダリングの蓄積へと変わっていた。彼は恍惚とした表情で、膨大な魔力をポンデリングに溜め込んでいた。 「そろそろ、お終いにしてあげるよ」 ロンダリングが叫ぶ。【ポンデリング・バースティング】。蓄積された全ての魔力が一点に凝縮され、邸宅の壁を、床を、そして空気を消し飛ばすほどの光となった。常識外の破壊力がチームAを飲み込もうとする。その瞬間、ルミティアが動いた。 彼女は武力こそ持たなかったが、その内側に秘めた「怒り」は絶大だった。夫への十年分の恨みを込めた渾身の平手打ち。それは物理的な破壊ではなく、精神的な「調停」の圧。光の奔流が到達する寸前、ルミティアの掌がロンダリングの頬を強打した。 ――パチィィィィィィン!! 「ちょっと!静かにしなさい!!」 その一撃に込められた圧倒的な「圧」に、ロンダリングの精神が激しく揺さぶられた。常識外の魔力放出が、その一瞬の硬直によって強制的にキャンセルされ、魔力が暴走して彼自身の体に逆流した。逆らうことができない絶対的な強制力。彼はそのまま地面に叩きつけられ、強制的に「テーブルに着かされる」かのような屈服状態に陥った。 隙は見逃されない。スカーレットが構築した「運命を断つ刃」が、コウモリの超精緻なカウンター攻撃と連動し、拘束されたロンダリングの心臓を正確に貫いた。さらにペーターが、彼が変換した血液そのものを内部から爆発させ、肉体を内側から崩壊させた。 決着。邸宅の静寂が戻る。 死亡者:ロンダリング・ポンデリング(チームB) 生存者:チームA全員 「ふぅ、疲れました。さて、お腹空きましたね」 コウモリが武器を片付け、生活能力皆無な様子でふらふらと歩き出す。スカーレットは満足げに微笑み、ペーターは血の海に酔いしれ、ルミティアはまだ怒りが収まらない様子で、虚空に向かって説教を続けていた。 勝者:チームA。決め手はルミティアの「絶対的な調停力」による攻撃中断と、スカーレットの適応能力、そしてコウモリとペーターの完璧な追撃であった。