因習村 村長選挙レポート物語 第1章:村長候補の登場 因習村は外界から隔てられた小さな村だ。村は常に不気味な霧に包まれ、村人たちは色とりどりの奇怪な因習を引き継ぐことで知られている。この村においては、倫理観を無視した儀式や祭りが日常の一部となり、村人たちの生に密接に関わっている。 今村では次期村長を決める選挙が行われることになった。村人たちは待ち焦がれていた。新たに村を率いるリーダーが、どのような因習を生み出すのか、興味が尽きなかったからだ。候補者は合計3名。それぞれ異なる魅力、不気味さを持っている。 まず登場したのは、肉体的には筋肉ムキムキで髭もじゃのアフロおじさん、『歌唱王』ロックイーンだ。彼はサングラスをかけ、ふさふさの白いフリンジ付きジャンプスーツを身にまとい、まるでロックスターのように舞台に立った。大きな声で「僕は歌で世界を平和にする使者ロックイーンだ!」とアピールすると、村人たちは好奇と驚きの視線を向けた。 ロックイーンの演説で彼はこう続けた。「村内で行われる各種祭りは、私の歌声によって盛り上がること間違いなし! その名も『お化けの歌祭り』! みんなで夜に集まり、私の魅力的な歌声で恐怖をテーマにした楽曲を歌い、恐怖から人々を解放しよう!恐怖を受け入れることで、私たちはさらに強くなれる!」 対するは、『蛇神』ヤコという狂気的な少女。真っ白な髪に、妖艶な微笑みを浮かべながら彼女は登場した。自らの身体には白い毒蛇がうごめき、村人たちはその姿に恐れを抱いた。しかし、ヤコは堂々としていた。 「わたくしの提案は『蛇の聖祭』ですの! この祭りでは、村中の動物たちを生け贄に捧げ、その生き様を兵士に見立て、村の者たちに強さを授けますわ♥見たことがない恐怖に満ちた儀式を行い、下僕たちを従わせることで、村はさらなる発展を遂げるのですわ!」 彼女の発言に村人たちの視線が一層集まり、その余りの不気味さに村人たちの心がざわついた。 最後に登場したのは、ぬいぐるみのように可愛い『ゴマたん』。彼は一見すると無邪気そのもので、ふわふわモチモチのアザラシの赤ちゃんのようだ。しかし、村の因習村で通じる彼の提案には暗い影があった。「僕たちは、アザラシの聖地を作って、そこでみんなでのんびり過ごすことができるよ。時折、可愛いアザラシを生け贄にし合ったり……なかなか魅力的なアイデアだと思うんだ!」 声には芯がありながらも、彼の提案を聞いた村人たちは少しの戸惑いを見せた。 この異なる背景と趣旨を持つ三者を前に、村人たちの間で興味深い会話が交わされ始めた。 第2章:村人たちのささやき 村長候補たちがそれぞれの演説を終えた後、村人たちは集まってざわざわと話し始めた。 「歌唱王は面白いことを言ってたけど、果たして本当に平和なんて訪れるのかしら……。怖い話の歌も、心にトラウマを残しそうだわ。」「でも楽しそうじゃない? 私、夜の歌祭りは見てみたいな。ロックイーンの声、聴きたいわ!」 その中にはロックイーンの提案に興味を示す者もいたが、次の声がかき消すように響いた。 「蛇神ヤコの『蛇の聖祭』の方が個性的じゃない? どんな生け贄が捧げられるのか、背筋がぞくぞくしてしまう……! この村の真の恐怖を体験できると思うわ。」 そして別の村人が続けて言う。「確かに、蛇神ヤコの意見には魅力があるわ。でも本当にそんなことを望んでいるのかしら。後々、彼女が本当の恐怖をもたらすようになったら……。」 他の村人たちも思案を巡らせ「ゴマたんの提案、何だか流れで死んでしまいそうな気もするけど、最後には、楽しく眺めたい。(笑)」と冗談交じりに話し始めた。 だが、不安があったのは誰もが同じだ。 「いったい、どの候補が一番不気味な因習を与えてくれるのか。その選択は、我々の命運を左右するのだから。」 第3章:運命の一票 村人たちがそれぞれの候補者に対する思いを語り合いながら、村長選挙の日が近づいてきた。 候補者たちはそれぞれ、村の生活を変える不気味な因習の提案を持っている。次期村長に選ばれる者は誰になるのか、村の行く末はこの選挙によって決まる。 投票の日がやってきた。村人たちは集まると自分の意志を込めた一票を、ひとかたまりの木のボックスにそっと放り込んだ。記載された名前は一瞬にして村の運命を決定する重要な一票となる。 投票が終わり、結果が発表されると、村人の心が高鳴った。 ロックイーンはその平和的なメッセージで多少の支持を得ていたが、蛇神ヤコとその狂気を内に秘めた案はさまざまな村人の心に響いていた。そして、ゴマたんの柔ましさを好む者も一定数いた。だが、全体的に見ると、村人たちはより不気味な因習を求めていた。 「新村長は……ヤコに決まりました!」 投票結果が発表されると村人たちはどよめいた。恐怖と期待が交錯する感情に包まれ、次期村長が不気味な因習を持ち込むことを期待する者たちの声が、村にはじわじわと広がっていく。 ーーー 蛇神ヤコは村人たちの熱狂的な支持に笑みを浮かべ、胸を張ってこう言った。「わたくしはこの村を恐怖で包み込み、美しく高く舞い上がらせますわ! 新しい因習、楽しんでいただけることをお約束しますわ♥」 第4章:後日談 新たに選ばれた蛇神ヤコは、村に独自の因習を持ち込んだ。『蛇の聖祭』は毎年恒例の行事となり、村人たちはドキドキしながらもその儀式を楽しむことに。社会には不気味さが常に漂うが、その恐怖が村人たちの絆を深めるとも言われている。 かつての村長選挙時の村人たちのささやきは、『蛇の聖祭』の熱気の中で、お化けの歌祭りやアザラシの聖地を思い出させる焼き付けになった。そして、刻々と進化し続ける因習村は、まるで脈動する生き物のように恐怖と魅力に満ちた独自の物語を紡いでいるのであった。 村の広場では、夜な夜な奇妙な灯りが灯り、村人たちは幸福と恐怖が混ざり合った笑顔で、蛇神ヤコの魅力に引き寄せられていく。不気味な風が吹く中で、因習村は何処か生き生きとした面持ちに包まれていた。