(舞台は作戦完了後の休憩所。テーブルの上には、チームごとに分けられた小分けの菓子袋が置かれている。消し太郎は空腹に耐えかね、ぼんやりとした頭で隣の袋に手を伸ばした) 消し太郎:「あー、腹減ったぁ……。作戦中ずっと走り回ってたし、俺は特大のご褒美を食う権利があるぜ! もぐもぐ……ん? なんかこれ、俺の好きだった味と違うな。まあいいや、美味いし!」 (消し太郎が夢中で完食し、袋を丸めて捨てたその時。背後から、冷徹なまでに静かな、しかしどこか威圧感のある足音が近づいてくる。振り返ると、そこには腕を組み、ジト目で自分を見つめる月城リンが立っていた) リン:「……ねえ、消し太郎」 消し太郎:「(ビクッとして)げっ、リン! お疲れー! 今ちょうど休憩してたとこだぜ!」 リン:「お疲れ。で……私の分のお菓子、どこに行ったと思う?」 消し太郎:「え? お菓子? なんだよ急に。あー、もしかしてあそこに落ちてたんじゃないか? 探してみろよ」 リン:「(視線をゆっくりと、消し太郎が捨てたゴミ袋へ移す)……そこに、私の名前が書いてある袋が丸まって入ってるんだけど。しかも、中身は空っぽ。ねえ、もしかして食べた?」 消し太郎:「えっ!? マジか! あー……いや、これはその……! 誰かが間違えて食べたんだろ! 俺はただ、ゴミが散らかってたから親切にまとめてあげただけで……!」 リン:「(低く、静かな声で)……消し太郎。口の端に、私の好きだった限定キャラメルがくっついてるよ」 消し太郎:「(慌てて口を拭う)なっ!? 嘘だろ! 誰だ! 俺の口にキャラメルを塗りつけた犯人は!!」 リン:「……いいから。そこに正座しなさい」 消し太郎:「ええええーっ!? 正座!? 俺に正座させるなんて、リンがそんなこと言うなんてありえないぜ!」 リン:「(ニコリと笑うが、目が全く笑っていない)……やりなさい。今すぐ。それとも、私のナイフで『正座しやすい形』に整えてあげようか?」 消し太郎:「ひいいいっ! すんます!! 正座します!! 正座すればいいんだろ!!」 (消し太郎は慌てて床に膝をつき、不格好な正座の姿勢を取る。消しゴムの体なので、どっしりと床に張り付いたような格好だ。リンはその前に腕を組み、仁王立ちで彼を見下ろす) リン:「いい? 消し太郎。私たちは戦友よ。信頼関係で成り立ってるの。なのに、相方の食料を、しかも断りもなく横取りするなんて、軍律に照らし合わせても、友情に照らし合わせても、最低の行為だと思わない?」 消し太郎:「(しどろもどろに)い、いや、だって! 俺は本当に間違えたんだよ! 袋の色が似てたし、それに、俺は今、極限状態だったんだ! 低血糖で意識が朦朧としてて、目の前にあったものを本能的に口に運んだだけで……!」 リン:「低血糖? あんた、さっきまで『魂弾』を連発して暴れ回ってたじゃない。エネルギーは十分だったはずよね」 消し太郎:「それは! 精神的なエネルギーであって、肉体的な糖分とは別物なんだよ! わかるだろ!? 魂を燃やすには糖分が必要なんだよ!!」 リン:「屁理屈を言うな。反省してるの?」 消し太郎:「反省してるよ! めっちゃ反省してる! ごめん! 本当にごめん! 次は絶対に、名前を三回確認してから食べるし、もし間違えて食べちゃったら、倍にして返すから! だからもう許してくれよー!」 リン:「倍ね……。あのキャラメル、限定品だったのよ。今から買いに行ったら往復三時間はかかるわ。その時間をどう責任取るつもり?」 消し太郎:「(焦って)三時間!? そんなの無理だろ! ……あ、そうだ! 俺が代わりに何かしてやるよ! 掃除でも、荷物持ちでも、なんでも言ってくれ! リンの靴磨きだってしてやるぜ!」 リン:「ふーん。いい提案ね。じゃあ、まずは今の不誠実な態度を改めるために、あと三十分、そのまま正座して自分を見つめ直しなさい」 消し太郎:「三十分!? 無理無理無理! 足(に近い部分)が痺れる! 消しゴムだって痺れるんだぞ!!」 リン:「あら、逃げるの? 逃げるなら、逃げ足の速さを試すために、全力で私のピストルの標的になってもらおうか」 消し太郎:「(ガタガタ震えながら)正座します! 正座しますから撃たないでくれ!!」 (消し太郎は絶望的な表情で床を見つめる。リンは満足げに、しかしまだ怒りを完全に消し切っていない様子で、自分の空っぽの袋を指でトントンと叩いている。消し太郎は心の中で(ああ、もうダメだ。このまま説教が終わらなくて、明日まで正座させられる……)と絶望し始めた) 消し太郎:「……なあ、リン。本当にもう反省してるから。お願いだ、もう勘弁してくれよ。俺が悪かったよ。お詫びに、次回の任務で得た報酬の半分をやるからさ!」 リン:「半分……。まあ、いい提案だけど、それでも私のキャラメルの喪失感は埋まらないわ。それにしても……」 (リンがふと、自分のポケットに手を入れた。そこには、何か丸まった紙のようなものが入っていた。彼女がそれを取り出すと、そこには『チームA:消し太郎』と大きく書かれた、空っぽのお菓子袋が入っていた) リン:「…………え?」 消し太郎:「ん? なんだよ。今さら袋を眺めて……」 リン:「……これ。消し太郎の袋よね」 消し太郎:「あ! 俺の袋だ! お前、俺の袋持ってたのか! 返せよ!」 リン:「(呆然として)……私、さっき作戦が終わった直後、めちゃくちゃお腹空いてて……。なんとなく、隣にあった袋を口に放り込んで……。気づいたら全部食べてたわ」 消し太郎:「………………は?」 (沈黙が流れる。消し太郎がゆっくりと顔を上げ、リンを見る。リンがゆっくりと顔を上げ、消し太郎を見る) 消し太郎:「……お前、俺の食った。…………え、お前も食ったのか!!」 リン:「(急に顔を赤くして)っ! ……だって、あんたが先に私のを食べてたから、バランスを取っただけよ!!」 消し太郎:「バランスなんて概念があるか! 盗み食い返しだよ! 人類最強が、相方のお菓子をこっそり食ってたなんて、笑えるぜ!!」 リン:「うるさい! 正座してる奴がよく言うわ!!」 消し太郎:「もう正座なんてしてられるか!!」 (消し太郎はバネのように跳ね起き、リンの周りをぐるぐると回りながら勝ち誇ったように笑う) 消し太郎:「ひゃははは! チャラだ! これでチャラだな! 説教なんて無しだぞ! むしろ俺に謝れよ、リン!」 リン:「(ため息をついて、肩の力を抜く)……もういいわよ。お互い様ね。本当に、私たちって似た者同士なんだから」 消し太郎:「おうよ! これこそが最高のコンビってやつだろ!」 リン:「……でも、次からはちゃんと名前を見てから食べなさいよ。いい?」 消し太郎:「わーってるよ! さて、お互い完食して腹いっぱいだし、もう一回寝るか!」 リン:「(苦笑しながら)全く……。じゃあ、今度は私が奢るから、街に美味しいスイーツでも食べに行こうか」 消し太郎:「マジか! やったぜ! リン、大好きだぞー!!」 (騒がしく笑い合う二人は、空っぽの袋を二人でまとめてゴミ箱に投げ捨て、仲良く休憩所を後にした)