命の天秤の激突 荒涼とした廃墟の戦場に、風が低く唸りを上げる。かつての激戦区、崩れた壁と散乱する残骸が、死の記憶を語りかける。その中心に、二つの影が対峙する。一方は銀長髪をなびかせ、白衣を纏った流浪の医者、【命の天秤】Dr.ライフ。悠々自若とした眼差しで、父の医学書を腰に下げ、自由な治療を信条とする男。対するは、巨大な四脚機体「カトルマルス」に搭乗した【善狂の不治医師】ラシード・アザレイアー。かつての優れた医師の面影を残すその機体は、壊れた心で安楽を求める亡霊の如く、静かに構える。 二人は互いに一撃のみを放つことを約束していた。回避も防御もなく、全力で、ただ一撃を。Dr.ライフはマイペースに息を整え、ラシードは機体のコックピットで低く呟く。「お任せください! 最善の治療を行います。」 Dr.ライフが最初に動いた。非武術家の妙を発揮し、静観無動からフラッと前進する。足音一つ立てず、白衣の裾が風に舞う。彼の目は敵の機体を生物学的標本のように観察し、痛点を瞬時に特定する。右手がゆっくりと上がり、掌を広げて構える。治療の儀式が始まる──静寂無音の【触診】。彼の指先は空気を切り裂くように伸ばされ、カトルマルスの装甲表面に触れる寸前で止まる。だが、それは幻惑。Dr.ライフの身体が加速し、跳躍。銀髪が弧を描き、白衣が翻る中、彼の両手が機体の脚部に直に肉体──いや、装甲を掴む。指が鋼鉄を抉るように食い込み、生物学的知見で弱点を診察。内部の回路を痛点と見なし、捻り上げる──【痛天昇】! それは治療の名を冠した一撃。Dr.ライフの腕が爆発的な力で機体の関節を握り締め、引き絞る。筋肉が鋼のように収縮し、骨格が軋む音が響く。痛みが機体を通じてラシードに伝わり、抗いがたい激痛が彼の神経を焼き尽くす。Dr.ライフの顔に一瞬の不本意さがよぎる──医者として、気絶させるのは本意ではないが、治療貫徹の信念がそれを許さない。 同時、ラシードの反撃が炸裂する。カトルマルスの四脚が大地を踏みしめ、中量級の性能が全開に。右手の「ケタミン」グレネードパイルバンカーが、Dr.ライフの躯体を狙い、爆発的な加速で突き刺す構えを取る。機体の肩が上がり、左手「キシロカイン」携行式小径拡散榴弾砲が回転し、榴弾を装填。右肩の「オキセサゼイン」大口径ビームバズーカ砲が唸りを上げ、チャージを開始する。ラシードの心は壊れたまま──敵を悪性腫瘍と見なし、絶技『戦場三大療法』を一気に解放。まず手術たる白兵格闘:パイルバンカーがDr.ライフの胸を貫くべく、鋼の槍のように射出。爆薬が内蔵され、貫通と同時に爆発を約束する。次に投薬たる榴弾:小径砲口から拡散榴弾が散華し、周囲を麻酔と破壊の霧で覆う。最後に放射線たるバズーカ:大口径ビームが凝縮され、青白い光の奔流となってDr.ライフを焼き払う。三連の医療行為が、機体の全武装を同期させて一撃に凝縮。カトルマルスの四脚が大地を抉り、機体全体が前傾。ラシードの叫びがコックピットに響く──「これが、最善の安楽です!」 二つの一撃が激しくぶつかり合う。Dr.ライフの【痛天昇】がカトルマルスの脚部を捻り上げ、装甲が悲鳴を上げて歪む。内部回路が断裂し、ラシードの身体に電撃のような痛みが走る。だが同時、カトルマルスの三大療法がDr.ライフを飲み込む。パイルバンカーが彼の肩を掠め、爆発の衝撃波が白衣を焦がす。拡散榴弾が周囲を爆炎で包み、ビームの奔流が銀髪を蒸発させる寸前で直撃。衝突の瞬間、大地が震え、廃墟の残骸が舞い上がる。鋼と肉体の交錯──Dr.ライフの指が機体の痛点を極め、ラシードの武装が医者の躯体を砕く。爆音と閃光が交差し、互いの全力が相殺され、壮絶な均衡を生む。痛みの奔流が二者を襲い、視界が白く染まる。 決着は一瞬の崩壊で訪れる。カトルマルスの脚部がDr.ライフの捻りで崩れ、機体が傾く中、ラシードのビームが最後の力を振り絞ってDr.ライフの胸を貫く。だが、痛みの頂点でDr.ライフの治療が完成──ラシードの意識が、抗いがたい激痛に飲み込まれ、気絶。機体は機能を停止し、四脚が地面に沈む。一方、Dr.ライフはビームの余波で膝をつき、息を荒げながらも立ち上がる。白衣は焦げ、肩から血が滴るが、彼の目は悠然と輝く。「俺は、自由に治療させてもらうぜ。」 勝者: 【命の天秤】Dr.ライフ