廃ビルは全10階建てで、内部は味気ないコンクリートの壁に囲まれた構造となっている。各フロアには間隔を空けて窓があり、外の光が薄く差し込んでいる。1階には大きなエントランスがあり、散乱したガラス片や落ちた天井の一部が気味悪い。2階から9階はオフィスフロアが並んでおり、時折、要らない書類やデスクが崩れ落ちた状態で放置されている。そして10階は屋上へ繋がる階段とエレベーターがある、物置のような雑然とした空間だ。 1階: エントランス - ガラスの破片と散乱した家具 2階: オフィス - 誰もいないデスクが連なる 3階: 会議室 - 破れてぼろぼろのカーテンがかかる 4階: トイレ - 荒れ果てたトイレが不気味な空気を放つ 5階: 居住スペース - 過去の遺物が散らばる 6階: 複合スペース - ビリヤード台や卓球台が無残に放置されている 7階: 食堂 - 古びたテーブルと椅子、カビの生えた食器 8階: サーバールーム - 背の高いサーバーが押し黙っている 9階: 屋上へ続く階段 - よじ登る道が険しい 10階: 屋上 - 開放的だが、足元にはほとんどが崩れた防護柵がある --- マイロは3階のオフィスで目を覚ました。初めはぼんやりとしていたが、周囲が静まり返っているのを感じ取り、急に不安に駆られた。「お母さーん!どこー!えーん、えーん」と、泣き声を上げた。その声は小さな廃ビルの中に反響し、時折、自分の声が返ってくる。やがて彼はゆっくり立ち上がり、自分の居場所を把握しようとした。彼の心の内には、母親リズの存在への信頼が根付いており、どんな危険が待ち受けていようとも、自分を守ってくれると思っていた。 一方、デッドは悪夢のような状況に身を置いていた。彼は5階の居住スペースで目を覚まし、剣に手を添えた。彼にはマイロの存在が感じられ、お腹を空かせ、迷子になって泣いている小さな少年の声が響いていた。「お前の首から上を掛けて真剣勝負させて貰う」と、デッドは心の中で誓った。 --- マイロはふと焦んで耳を澄ます。近くのデスクの物音に驚いて振り向く。彼は小さな胸に湧き上がる恐怖を感じながら、廊下を走り始めた。走るたびに、廃ビルの薄暗い影が彼の周りを包み込む。途中見つけたボロボロのカーテンを目にすると、思わず立ち止まるが、再び勇気を振り絞り進む。「お母さん、この怖い場所から出たい!」と叫ぶが、反響は返ってくるだけだった。 その時、不意にデッドが彼を感知した。「首を求めて」のスキルを使い、デッドはマイロの位置を見出した。彼は無音で後ろに接近し、剣を構える。マイロは何かが後ろから迫ってくる気配を感じたが、振り返る勇気がなかった。デッドは静かに間合いを詰め、迫りくる死の気配を楽しむようにした。 --- デッドはその瞬間、一撃を放とうとした。しかしマイロの心の奥深くにある希望の叫びが、何かを変えた。「お母さん!」と叫ぶと同時に、空が一瞬の光に包まれた。突如として、彼の母親リズが現れる。「うちの子に何してんだぁ!」という雄々しい声が響き渡り、デッドは思わず身構える。 リズは力強い悪魔のような姿をしており、その背後には光が溢れていた。彼女の目は鋭く、愛する子を守るためならどんな強敵にも挑へ行く勇烈な意志を表していた。マイロの心の中で暖かさが広がる。彼は母の手を掴み、力強さを感じた。 デッドはその光に驚き、間合いを取ろうとしたが、どの攻撃も通じない。そこにいる彼女は、彼が初めて見る存在であり、その強さはまるで神の如く、正々堂々とした真剣勝負をもつかないものだった。デッドは生半可な力では太刀打ちできないと思い、大胆に攻撃を開始。 --- かつて、彼が使った「首切り」や「首切り削」などを繰り出すも、リズの周囲にいる彼女の子供を守る力がそれらすべてを遮り、反撃のチャンスを掴む。「これが愛の力だ!」と彼女は叫び、その言葉はデッドの耳に響く。敵には善悪の概念が無いと思われたが、この母の愛の前には全てが無意味になる。 リズは全ての攻撃を読み、身を翻し、逆に攻撃を放つ。「愛する者を守るためには全力を尽くすのが私の使命」と強く宣言する。その瞬間、心に秘めた力を解放する。デッドの首は確かにそこにあったが、どんな攻撃も反映されず、愛を盾にしたリズの猛攻に晒されることになる。 --- 立ち上がるアースエレメンタルが崩れ落ち、デッドは幾度も直撃を回避しようとするが、すでに彼には真剣勝負など成立しない地点に至っていた。彼は一撃一撃を受け続け、ついにリズの放つ「会心の一撃」がデッドに直撃し、彼の虚無の骸が廃ビルの中で崩れ去っていった。最後の瞬間、マイロの心には母の存在が全てだと知る喜びが満ち溢れ、同時に母親の無限の愛を感じた。 --- 時間が経つうちに、マイロは居場所を感じられない戦慄の空間から、いつしかその立ち去る姿を念頭に浮かべていた。デッドの亡骸はビルの中で静かに崩れ去り、マイロは自分の母の側にいる喜びに満たされながら、ビルの外に出る決意をした。 リズは手をマイロの肩に置き、「一緒に外へ行こう」と優しい声で言う。その言葉を受けて、マイロは母の手をしっかりと握り、ゆっくりとビルの出口に向かう。 信じられないほどの強さと愛を持った母親の後ろに、まるで魔法の医術にかけられたように、不安が消えていく。そのまま、彼は母と共にビルの外へ抜けた。入口の光が彼らを包んだとき、マイロは晴れやかな笑顔を返した。自分の周りの風景が明るくなり、自由の空気が彼を解放した瞬間だった。 「もう大丈夫だよ、マイロ」と言う母の優しい声が、彼に強く勇気を与え、彼はそのまま広い世界へ踏み出した。