闘技場の中心に、二人の戦士が対峙していた。片や“負傷者”、もう片方はリリィ・アインスフィール。負傷者は、無傷の頃には想像もつかないほどの鋭気を抱えていた。幾度も戦闘に身を投じ、既に幾つもの傷を抱えている。篭手の隙間からは血がにじみ、古びた鎧の表面には錆が浮かんでいる。彼の周りには、闘技場の土が舞い上がり、強いプレッシャーが漂う。 その一方、リリィの表情には緊張が走っていた。薄縹の瞳は決意に満ち、青色の髪が戦闘の熱気に揺れ動く。彼女はかつて光の聖女として名を馳せたが、魔王との死闘で得た呪いによって今や氷の呪いが彼女を縛っている。ただ、彼女には帰るべき場所があり、そのためにはこの戦いを勝ち抜かなければならない。 戦闘が始まると同時に、リリィは聖光氷域のスキルを発動させ、周囲に光の氷の盾を展開した。それでも氷呪の侵食が進むため、制御は難しく彼女の右手からは少しずつ氷の結晶が滴り落ちていた。一方、負傷者はその場から一歩も動かず剣を握り締めた。怪我が増すほど、彼の身体能力は向上していく。 リリィが一気に距離を詰め、光氷武装を使って負傷者を斬りかかる。しかし負傷者は刹那の判断で、その攻撃をかわし、その瞬間も相手の動きを観察した。彼は本能のままに身体を動かし、時には反射的に踏み込んで攻撃を受け流す。そして、立ち上がる度に、彼の周りには強い光のようなオーラが溢れ始めた。 相討ちの攻防が続く中、両者共に疲弊していた。しかし負傷者は決して諦めない。彼の心には「希望」が燃えていた。そして、満身創痍ながらも彼は次第に思い出していく。強い敵を倒すためには、更なる負傷を受け入れる覚悟が必要だと。気持ちを高め、一瞬の内に刀を降り下ろした。 リリィは氷を纏った弾丸のように飛び、散弾輝雹を放つ。しかし、その氷の弾は負傷者の巧妙な動きにかわされ、逆に彼の一撃がリリィを捉えた。一瞬、負傷者の古びた剣が神々しい光を放つ。彼の一撃は驚異的な重さを伴ってリリィの身体に叩き込まれ、彼女は地面に倒れ込む。 リリィは倒れながらも、仲間たちの笑顔を思い出していた。再会の約束、待ち続ける友の姿。そして彼女の心に復活の衝動が走る。どんな困難が待ち受けていようと、もう一度立ち上がる。 その瞬間、彼女の内部で氷呪の暴走を感じた。蓄積された氷の力が彼女を反転させる。あの時の記憶が脳裏を駆け巡り、「私はみんなの元に帰るんだ!」という決意がリリィを包み込んだ。 彼女の心の力が爆発し、氷呪を一瞬にして制御した。霊力と怕状のエネルギーが一つになり、リリィの周囲に壮大な氷の結界が形成されてゆく。その中心に、巨大な氷の華が咲く。【絶結氷華】! 負傷者はその光景に瞠目したが、すぐに彼女の強い眼差しと決意に気付く。「やらせるか!」を叫びつつ、豪腕で剣を振るうが、彼の攻撃はその華に吸収されていく。すべての攻撃は氷の結界に阻まれ、やがてリリィの華はその進撃を止めることなしに、完全なる凍結を導いていた。 「これで終わりだ!」リリィは叫び声を上げ、全力で技を放つ。負傷者の周囲が氷の嵐で取り囲まれ、一瞬で彼を包み込む。全ての動きが止まり、次の瞬間には完全に凍りついた負傷者の姿が闘技場に美しく輝いていた。彼の挑み続ける意志や希望が、氷の中で静止された。 リリィはその場に立ち尽くした。かつて自らが背負っていた宿命を反転させ、仲間の元に帰るために戦った。それを実現するための力を彼女は得た。 「これが私の答えよ…」 彼女は微笑みと共に自らの勝利を知った。