ロンリールームからの脱出 白黒の世界が広がっていた。色は失われ、灰色の空の下、無人の田舎道が果てしなく続く。柊と椿は、突然その場所に迷い込んでいた。さっきまで学校の帰り道を歩いていたはずなのに、気がつけばここにいる。辺りは静かで、遠くから見知らぬ童謡が微かに聞こえてくる。蛙の鳴声と鴉の叫びが混じり合い、徐々に頭の中に染み込んでくるような、不気味な響きだ。 「ここは……一体何だ?」柊が冷静に周囲を見回した。一人称を「僕」とする礼儀正しい高校生の彼は、見た目通り穏やかな表情を崩さない。リアリストの彼は、すぐに状況を分析しようとする。「君も急に引き込まれたのかい、椿? これは夢か、何らかの異常事態だと思うけど……。」 椿は少し離れた場所で立ち止まり、鋭い目で辺りを睨む。一人称「俺」の彼は、平穏を望む高校生だが、その内側に潜む力は計り知れない。「ああ、俺もだ。妙な感じがするぜ。なんか、頭が疼き始めてる……。」殺意感知能力が、無意識に周囲の「敵意」を探っているが、今のところ何も感じない。ただ、この場所自体が、何か不穏なものを孕んでいる気がした。 二人は歩き始めた。道は一本、細い畦道が草原の向こうへ延びている。童謡のメロディーが少しずつ大きくなり、蛙と鴉の声が重なり、精神を蝕むような不協和音を奏でる。柊は冷静に進むことを提案した。「引き返す道がない以上、進むしかない。異常を感じたら、すぐに止まろう。」椿は頷き、警戒を強める。 第一の道:小道 長い畦道が続いた。足元は柔らかく、うっかり転びそうになる。柊が先頭を歩き、椿が後ろを守る形で進む。突然、椿の足が滑った。「くそっ!」彼は転びかけるが、咄嗟に体勢を立て直す。柊が振り返り、手を差し伸べる。「大丈夫かい? この道、油断できないね。」二人は無事に通過し、精神の蝕みが少し強まった気がしたが、まだ耐えられる。 第二の道:草原と椅子 道は広大な草原へ開けた。中央に、一脚の古い椅子がぽつんと置かれている。花の気配すらない荒涼とした景色だが、座る誘惑が妙に強い。童謡が耳元で囁くように聞こえ、鴉の影が頭上をよぎる。「座るなよ、絶対」と椿が呟く。柊も同意し、「これは罠だ。精神を崩壊させる仕掛けかもしれない」と分析。二人は椅子を避け、草原の端を迂回して進んだ。後ろで、座らなかったはずなのに、幻の花が咲き乱れる音が聞こえたが、無視した。 第三の道:交差点 突然、道が十字路に変わった。さっきまで一本道だったのに、突如として車が高速で往来する交差点が出現する。白黒の車体が、轟音を立てて駆け抜ける。「引き返すタイミングだと思ったのに……!」柊が叫ぶ。椿の殺意感知が、何か「敵意」を感じ取るが、源は不明だ。二人は一瞬立ち止まるが、車が迫る。椿が即座に念じる。「死ね。」 車は一瞬で停止し、運転手もろとも「無」となった。万物即死能力が、物理法則すら超越し、交差点を静寂に変える。柊は驚きつつも、治癒能力を準備していたが、使うまでもなかった。「君の力、恐ろしいね。でも、助かったよ。」二人は慎重に横断し、道を進む。精神の重圧が強まり、童謡が頭痛を誘うが、まだ持ちこたえる。 第四の道:マンホール 道端にマンホールが現れた。中から、幼い泣き声が聞こえてくる。好奇心を刺激するような、引き込まれる響きだ。柊が近づき、覗き込む。「これは……危ないかも。」椿が止める。「進むなよ、絶対罠だ。」しかし、泣き声が精神を蝕み、柊の足が勝手に動く。椿が即死能力でマンホールの「存在」自体を念じるが、なぜか効かない。この場所のルールが、能力を歪めているのか? 柊が中へ進もうとした瞬間、椿が腕を掴む。「やめろ!」 だが、遅かった。柊の体がマンホールに滑り落ちる。暗闇が彼を飲み込み、警告の⚠️が視界に閃く。もう戻れない。柊の叫びが響き、精神疾患の幻覚が椿を襲う。童謡が狂ったように鳴り響き、鴉の群れが頭上を覆う。椿は一人残され、頭を抱える。「くそ……柊!」 柊はマンホールの底で、溶けるような痛みに襲われた。体が崩壊し、精神が砕け散る。だが、彼の能力「■■様」が発動する。器である柊が死んでも、■■様は消滅せず、多次元から彼を0から蘇生する。無限復活の力で、柊は即座に再生し、マンホールから這い上がる。「……助かったよ。僕の力のおかげだ。」疲れ知らずの彼は、冷静に立ち上がる。椿が安堵の表情を浮かべる。「生きてたか。よかったぜ。」 しかし、この脱落はカウントされた。ルールの最初の脱落者が出た瞬間だ。道は不規則に繰り返すが、限界が来た。二人は進むのを止め、最後の選択に直面する。 最後:標識とトンネル 道の果てに、三角の標識が立っていた。人の半身が描かれ、警告めいている。奥に黒いトンネルが口を開けている。入れば、全身が一瞬で溶ける全滅の罠だ。童謡が最大音量で響き、精神が崩壊寸前。柊が提案する。「引き返すんだ。入らない。」椿も同意。「ああ、こんなところで終わるかよ。」 二人は背を向け、来た道を戻る。白黒の世界が徐々に薄れ、精神の蝕みが解けていく。ロンリールームからの脱出に成功した。だが、柊の短い「脱落」の記憶が、二人に影を落とす。 - 脱出者: 平和導く治癒 柊, 平穏望む高校生 椿 - 脱落者: なし(蘇生により復帰)