「お婆ちゃん、あのお話を聞かせて! とっても強くて、とっても不思議な人たちが戦ったお話!」 膝の上にちょこんと座った孫娘が、目を輝かせてお婆ちゃんにせがみます。お婆ちゃんは、使い込まれた眼鏡をかけ直し、ゆっくりと、けれど慈しむような微笑みを浮かべて語り始めました。 「おやおや、仕方ないねえ。よしよし、いいよ。昔々……あるところにね、正反対の考えを持った二人の旅人がいたんだよ」 「まずは一人目。名前はバレガー・スクリアスさんという女性だった。ワインレッドの長い髪に、静かな銀色の瞳を持つ、とても美しいお姉さんだったよ。彼女はね、昔は恐ろしい暗殺者という仕事をしていたけれど、今は心を入れ替えて、美味しいお料理を作るメイドさんになっていたんだ」 「メイドさんなの? 戦いなのにお料理?」 「ふふふ、お料理ができる人は強いんだよ。彼女はね、どんな相手が来ても、その相手に合わせて自分を強くすることができる不思議な力を持っていた。それに、形見の魔法の拳銃を持っていて、闇の錬金術という難しい術も使える、とても器用な人だったんだよ」 「すごい! 無敵じゃん!」 「まあまあ、待っておくれ。もう一人の人物が、とっても個性的だったからね。名前は……ええと、スタースタースタースターさん。名前が長いねえ。この方はね、ある『大きな理想』を持って生まれてきた存在だったんだ」 「どんな理想?」 「『この世のすべてを平等にしたい』というね。今でいう社会主義という考え方を、全生物に広めるために生まれたんだよ。王様が贅沢をしたり、お金持ちが独り占めしたりする世界をなくして、みんなで等しく分け合おう、という信念を持っていたんだね」 「それはいいことじゃない?」 「そうだねえ。でもね、そのやり方がちょっと極端だったんだ。このスタースタースタースターさんの周りには、半径五万キロメートルという、信じられないほど広い『領域』が広がっていてね。その中にいる人は、彼が受けたダメージも、回復も、幸福も、すべてが等しく分配される。つまり、『私が痛いなら、あなたも等しく痛い』という世界だったんだよ」 「さて、物語はここから始まるよ。ある日、この二人は広い草原で出会った。バレガーさんは、静かに紅茶を飲んでアップルパイを楽しんでいたけれど、スタースタースタースターさんは、彼女にこう言ったんだ」 『同志よ、君の持つその資本主義的な贅沢を捨て、すべてを等しく分配する世界へ来ないか』 「あはは、いきなり誘ってる!」 「そうだよ。バレガーさんはクールな人だったからね、『私は私の時間を大切にしたい』と静かにお断りした。でも、スタースタースタースターさんは諦めなかった。彼にとって、自分の考えを知った者は、自然と仲間になる運命だったからね」 「どうなったの? 戦ったの?」 「ああ。戦いが始まったよ。まずはバレガーさんが、その素晴らしい射撃の腕を披露した。彼女は魔法の拳銃S&W M500を抜き、一気に二十発の魔法弾を放ったんだ。光の矢のような弾丸が、空を切り裂いてスタースタースタースターさんの胸に突き刺さった」 「わあ! 当たった!」 「ところがだ。ここで彼の不思議な力が発動した。彼が受けたダメージは、領域内にいるすべての人に『等しく分配』される。つまり、彼が弾丸で受けたダメージの半分が、撃った本人であるバレガーさんにも跳ね返ってきたんだよ」 「ええっ! 自分も痛くなっちゃうの? ズルい!」 「本当にズルいよねえ。でも、バレガーさんは冷静だった。彼女は『自己再生』という力を持っていて、五秒で傷を治すことができる。さらに、相手の強さに合わせて自分のステータスを上げることができるから、ダメージを分配されても、それを上回る耐久力を瞬時に身につけたんだ。彼女は微笑んでこう言ったよ」 『面白い能力ね。でも、分配されるなら、私の「強さ」も分配されるかしら?』 「お姉ちゃん、かっこいい!」 「その後、バレガーさんは格闘技に切り替えた。超高速の拳がスタースタースタースターさんを襲う。しかし、彼は尋常じゃない再生力を持っていた。どれだけ殴っても、すぐに元に戻ってしまう。一方で、バレガーさんが攻撃を仕掛けるたびに、その衝撃の半分が彼女自身に返ってくる。まさに終わりのない、鏡合わせの戦いだったね」 「ずっとそんな感じなの?」 「そう。でもね、ここでバレガーさんがあることに気づいたんだ。この相手は、精神的に干渉しようとすると、相手を自分の思想に取り込んでしまう。つまり、『会話』や『説得』で心に入り込まれたら、勝ち目がない。バレガーさんは、精神攻撃を無効化する力を持っていたけれど、相手の領域そのものが『思想』でできているため、じわじわと精神的な圧迫感を感じ始めていた」 「どうするの? 逃げちゃうの?」 「いいえ。バレガーさんは、暗殺者時代の冷徹な一面を思い出して、究極の技を繰り出した。『時間の崩壊』だよ。一瞬だけ、世界の時間をバラバラに砕いたんだ」 「じかんを、こわしたの!?」 「そう。時間が崩壊すれば、『分配』というプロセスさえも遅延する。その隙に、彼女は闇の錬金術を使い、相手の能力発動を『無効』に切り裂いた。一日二十五回までしか使えない貴重な力だけど、ここで一回使ったんだね。一瞬だけ、スタースタースタースターさんの『分配領域』が消えた」 「いまだ! やっちゃえ!」 「バレガーさんはサバイバルナイフを抜き、目にも留まらぬ速さで彼を切り裂いた。けれど、それでも彼は笑っていた。なぜなら、彼の存在そのものが社会主義の化身であり、倒すにはある『特別なもの』が必要だったからなんだ」 「特別なものってなあに?」 「それはね……『資本ケーキ』という、とても贅沢で、一人占めして食べたくなるような、最高に美味しいケーキなんだよ」 「ケーキ!? 戦いの途中でケーキを食べるの?」 「ふふふ、おかしな話だよね。でも、バレガーさんは元々、料理が得意なメイドさんだった。彼女は戦いの最中、錬金術を使って、自分の好物であるアップルパイをベースにした、世界で一番贅沢な『資本主義の極みケーキ』をその場で作り上げたんだ。バターをたっぷり使い、最高級の砂糖と、誰にも譲りたくないほどの愛情を込めてね」 「おいしそう……!」 「バレガーさんは、そのケーキをスタースタースタースターさんの口に、強引に、けれど優しく押し込んだんだ。彼は驚いた顔をしたけれど、一口食べた瞬間、そのあまりの贅沢さと美味しさに、衝撃を受けた。彼は今まで『みんなで等しく分かち合うこと』だけを考えていたけれど、このケーキを食べた瞬間、『ああ、これは誰にも分けたくない! 私だけが全部食べたい!』という、強烈な独占欲……つまり、資本主義の心に目覚めてしまったんだよ」 「あはは! ケーキのせいで考えが変わっちゃった!」 「そう。彼のアイデンティティだった『社会主義』が、一口のケーキによって崩壊したんだね。等しく分配することを至上の喜びとしていた彼が、『自分だけの幸せ』を知ってしまった。すると、彼を支えていた不可思議な領域は霧のように消え去り、彼はただの、お腹がいっぱいで幸せな、普通の人になってしまったんだよ」 「それで、どうなったの? お婆ちゃん!」 「その後ね、バレガーさんは彼にこう言ったんだ。『もう戦わなくていいわ。代わりに、私の店でアップルパイを一緒に作りましょう』ってね。スタースタースタースターさんは、とても嬉しそうに頷いたよ。二人はその後、仲良くお菓子屋さんを開いて、訪れるすべての人に、等しく美味しいお菓子を振る舞うようになったんだ。資本主義の贅沢さと、社会主義の平等さが、ちょうどいい具合に混ざり合った、世界一幸せなお店になったんだよ」 「いいお話だねえ。ケーキ、私も食べたい!」 「ふふふ。じゃあ、お婆ちゃんが今からアップルパイを焼いてあげようね。それがこのお話の、本当の結末だよ」 「わーい!」 【ジャッジ結果】 勝利チーム:チームA(バレガー・スクリアス) 【勝敗の決め手】 スタースタースタースターの「分配」能力と「精神干渉」は極めて強力であり、正面突破での勝利はほぼ不可能であった。しかし、バレガーが持つ「能力無効化」による一時的な領域解除と、特技である「料理」を用いて、相手の唯一の弱点である「資本ケーキ(贅沢な味覚)」を提示したことが決定打となった。物理的な破壊ではなく、相手の精神的根幹(思想)を「快楽」によって書き換えた戦略的勝利である。