廃ビルは、いくつかの異なるフロアが連なる、全10階建ての構造を持っている。最上階の10階は屋上に繋がる広い空間で、かつては展望台であった。9階はオフィスフロアとして仕切られた部屋が並び、8階には研究室や実験設備が散在している。7階は倉庫で、荷物や古い道具が放置されている。6階には何本かの廊下があり、トイレや休憩室が存在する。5階から下は居住区域として使われていたフロアで、各フロアに部屋があり、住人たちの生活を支えていた。しかし、現在は全てが廃墟と化している。姿を消した人々の行く先を求めたように、階段とエレベーターだけが静かに異様な空間を繋いでいる。 最上階の10階、展望台の広間にて、バーミルという名の小人魔法使いが目を覚ました。彼は115cmの小柄な姿で、周囲を見渡し、歴史の重みに包まれた窓の外を眺める。彼のパートナー、光の妖精「ライシャイ」のきらめく羽音が静けさを崩す。 「何が起きたのか、分からないけれど、警戒を怠るな」とライシャイが言う。 バーミルは頷き、周囲の状況を注意深く観察した。建物の崩れた部分から光が差し込み、独特な雰囲気を醸し出していた。彼の心の中には安心感と不安が交錯していたが、すぐにその不安は恐怖に変わった。彼は一瞬のうちに、敵がいることを予感した。そして、少しでも情報を集めるために、エレベーターから階下へ向かうことに決めた。 一方、3階のルームにて、スプリット・マシュラームと名乗るキノコ型のレプリロイドが目を覚ました。彼は身長2mもあり、300kgという重さを感じさせないほどに子供のような無邪気さでいっぱいだった。この廃墟のような場所では、甘い香りと共に毒胞子が周囲を漂っていたが、彼はそれをお構いなしに集まる分身を作り出した。「鬼ごっこ、始めよう!」彼の声が響く中、周囲には無数の無邪気な幻影が生まれていく。 この状況の中で二人は、それぞれ別のフロアで戦準備を進めた。バーミルは、自身の魔力と妖精との協力を最大限に活かすため、様々な魔法の準備を整える。一方、スプリット・マシュラームは、自身の分身である虹色の幻影を無数に生み出し、即座に攻撃の準備を整えた。 10階からエレベーターで下に向かい、バーミルは9階のオフィスフロアに辿り着く。「まずは情報収集だ」とつぶやきながら、彼は慎重に周囲を調査し始めた。部屋の角にはほこりまみれのデスクと、崩れた椅子が無造作に置かれている。彼は一瞬の静寂の後、ライシャイに魔力を貸してもらうと同時に、心を静めて周囲の様子を見守った。 「気をつけて、こちらの方に何かが近づいてる」とライシャイが静かに警告する。彼の敏感な妖精感覚が何か異常を感じ取った。バーミルは目を凝らして、近づく音に耳を澄ます。すると、突如としてキノコのような意匠を持つスプリットが現れる。彼の背後には、数多の幻影が彼を囲むように待ち構えていた。 「さあ、遊び始めよう!」 その無邪気な声がフロアに響き渡った。 バーミルは慌てながらも冷静に行動する。「火の魔法で囲うことができるから、まずは火を灯そう!」彼の勇気ある選択肢に、ライシャイは魔法のエネルギーを託した。 「光の魔力を貸すよ!」そして、彼の周囲を暖かい光で包み込み、攻撃に備える。 スプリットは予測通り、その光を目ざとくキャッチし、身を翻して逃れた。「おっと、可愛い光だね!」と笑いながら、彼は周囲の毒胞子を撒き散らす。これは敵の動きを鈍らせ、反撃を困難にしようと言う作戦だ。 バーミルは微笑む。「それなら、やってやる! 水の魔法でその毒を浄化する!!」彼の指先から水の流れが湧き出し、毒胞子を打ち消していく。スプリットは驚き、少し後ろへと退く。 「面白い!もっと!もっと!」一層激しくなっていく彼の動き。独特の無邪気な笑みが災厄とでも言わんばかりだ。無数の幻影たちが次々と突撃してくるも、バーミルは瞬時に氷の魔法を発動し、周囲を凍らせて行く。 しかし、スプリットはただの分身ではなく、霧分身を発生させ自身を隠した。「その氷にはもう用はないよ!」彼が現れると、周囲の霧を逆に利用して、隠れていたまま攻撃を仕掛けてくる。重い足取りながらも、「鬼ごっこ」で身軽に動き回り、バーミルの注意を引いていく。 「彼が分身を使うなら、こちらも戦略を練る必要がある…!」 バーミルの頭脳と戦略的スキルが試される時間だ。彼はダルシャドからの助言を思い出し、「闇の魔力を使う!」と呟く。彼は闇の魔法を用いて、今度はスプリットの分身を吸収し、真の姿を現させる作戦に打って出た。 その瞬間、闇の結界が広がり、スプリットは驚愕しながらも歓喜の声を上げた。「おお!これは珍しい!もっともっと来て!」不敵な笑みを浮かべ、全力で攻撃をしかける。 バーミルは再び氷の魔法を展開し、攻撃の間隙を作り、最終的には自身の最強とも言える「火と氷の融合魔法」を発動し、スプリットに立ち向かう。両者の魔法がぶつかり合い、フロアは崩れんばかりの熱量をもって激闘を続ける。 一進一退の攻防の中、バーミルの出した魔法により、瞬時にスプリットの体力が削られていく。スプリットは意外にも素早く反応し、霧を使って拡散し、バーミルから逃れようとするが、バーミルもまた覚悟をもって追い詰め、その状況を全力で打破する。 「ライシャイ、ダルシャド!力を貸して!!」 魔法が充満する中で、バーミルの深い決意により、より強力な魔法が発動され、スプリットはついに膝をつく。 その時、周囲が静寂に包まれる。そして、バーミルはそのままエレベーターを使い、5階へ降りた。ここは以前居住区域であり、人々の思い出が残っている場所だ。タンスの上にあった古びた日記を見つけ、一瞬立ち止まった彼は、自身の背負った使命と持つ力に自信を取り戻す。そして、5階で行われていた戦いから今度は次のフロアへと進む。 途中、彼は味方の妖精たちの助力に感謝し、仲間との絆を確認する。直接対決はいつしかスプリットの本拠地である3階の空間へ向かっていく。彼は心の中で考えていた。自分が本当に守りたい存在はどういったものか、その命を懸けて戦うべき相手は一体どれなのか。 こうして、戦闘は最終局面へ突入する。決着がつくかどうか、ビルの中での長い戦いは、徐々に緊張感のある雰囲気を見せ始めた。時間は経過し、ついにスプリットが限界を迎えようとしていた。 「思ったよりも楽しかった!お次は、もっと思いっきり遊ぼうね!」彼の乱雑で調子に乗った言葉が響く中、最後のひと押しを持ってバーミルは全ての力を振り絞る。「これが私の本気だ!」最後の魔法を放ち、バーミルは勝利を手に入れた。 やがて静けさが戻った廃ビルの中、バーミルはもう一度戦った仲間たちへの思いをささやきながら、外へ目向ける。明るい日差しが差し込む日常が彼を迎えていた。「勝ったのだ!」と心の中で誇らしげに叫び、彼はビルの出口から出て行く。