喫茶店Dallasでバトル 夕暮れどきの喫茶店「Dallas」。 店内には、緑髪ツインテールのメイド・ライムちゃん、頭に魚を載せた三毛猫店主マスターD、そして黒革のジャケットを着たごついおっさんがいた。 窓の外では、夜空のお星さま🌟がキラキラと輝いている。 「本日のおすすめは、ほんのり苦いコーヒーと、ちょっぴり危険な店内バトルにゃー!」 ライムちゃんは虹色のペンをくるくる回しながら、元気よく宣伝した。 「危険なほうをメニューに載せるな!」 ごついおっさんが即座にツッコむ。 そこへ、白い服にポニーテールの少女、サクリファイス・ゲートが入店した。 「こんにちは。試合を申し込みます」 「おお、挑戦者にゃん! 参加費は一人5000円だよ!」 マスターDがレジを開く。頭の魚がぴちぴち跳ねた。 「売上のうち、ライムちゃんには3割の1500円を支給する契約だにゃ。経営とは、戦いと分配なのだよ」 「そこだけ妙に現実的だな……」 ごついおっさんが腕を組む。 「では、始めましょう」 サクリファイス・ゲートは静かに構えた。 「対戦相手は構え出しす。しかしこの動きは知ってる」 「まだ構えただけなのに、もう解説が始まったにゃ!?」 ライムちゃんは虹のペンを掲げた。 「ならこっちは、喫茶店ギャグ食材を実体化! えーい!」 虹のペンで描いた食材 - コーヒー豆爆弾:投げると「苦っ!」という文字とともに黒煙を出す。ただし香りは高級。 - プリン盾:攻撃を受けるとぷるぷる揺れて衝撃を吸収する。最後まで崩れないが、食べると普通においしい。 - パンケーキ手裏剣:高速回転するが、相手に当たると必ずシロップまみれになる。 - ナポリタン縄:伸び縮みする麺で相手を絡め取る。熱くないが、なぜかケチャップの香りが強い。 - 巨大ホイップ砲:大量のホイップクリームを発射し、相手をふわふわに包む。 - 会計伝票ブーメラン:命中すると、戦闘中でも支払いを要求する。 「まずはコーヒー豆爆弾にゃー!」 ライムちゃんが投げると、豆は空中で爆発した。 ボンッ! 黒煙の中から巨大な文字が浮かぶ。 ――苦い! しかしサクリファイス・ゲートは、煙が広がる前に一歩下がっていた。 「対戦相手は目くらましを使う。しかし、この魔法は知ってる。風向き、爆発範囲、次の行動も経験で分かる」 「読まれてるにゃん!」 サクリファイス・ゲートは煙の切れ目から踏み込み、ライムちゃんの手首を軽く取った。 だがライムちゃんはすでにプリン盾を構えている。 むにょん! 「プリン盾、発動にゃ!」 衝撃はプリンの表面で吸収され、盾だけが大きく波打った。 「ほう……」 「今のは、普通なら腕がしびれるやつだぞ」 ごついおっさんが感心する。 「でもプリンが揺れただけで済んだにゃ! ちなみに食べる?」 「戦闘中に勧めるな」 サクリファイス・ゲートは次に放たれたパンケーキ手裏剣も、首を傾けて回避した。 パンケーキは壁に突き刺さり、シロップをまき散らす。 「対戦相手は飛び道具を使う。しかし軌道は知ってる」 「じゃあ軌道を変えるにゃ!」 ライムちゃんは虹のペンでパンケーキに顔を描いた。 パンケーキは突然、意思を持ってジグザグに飛び始めた。 「未知の軌道です」 サクリファイス・ゲートが目を細める。 「……いえ、これも知ってる。食材に顔を描いて予測不能にする作戦。七十二回目の転生で見た」 「転生の引き出しが多すぎるにゃー!」 彼女は軽やかにパンケーキを避け、着地と同時にナポリタン縄をつかんだ。 「対戦相手は拘束を狙う。しかし麺は絡まりやすい。逆に利用できる」 「にゃ?」 サクリファイス・ゲートはナポリタン縄をくるくる回し、ライムちゃんを巨大なナポリタンの皿の上へ乗せた。 「捕まったにゃ! でも、これはこれで映える!」 「写真を撮るな!」 ごついおっさんが叫んだ。 ライムちゃんはすぐさま虹のペンで、皿の横に「すべる床」と描いた。 床が本当に滑り始める。 サクリファイス・ゲートは一歩踏み出した。 つるっ。 しかし転ばない。 「一億回の転生で、滑る床も経験済みです」 「そこまで経験してるの!?」 「雪山、氷河、バナナの皮、猫の毛、溶けたバター……」 「最後の二つは喫茶店の床で経験しちゃダメなやつだ!」 ごついおっさんのツッコミが店内に響いた。 ライムちゃんは巨大ホイップ砲を取り出した。 「ならば、全部まとめてふわふわにゃん!」 ドゴォォォン! 白いホイップが店内を横切り、サクリファイス・ゲートを包み込む。 「対戦相手は視界を奪い、動きを止める。しかしこれは知ってる」 ホイップの塊が、内側からぱっくり割れた。 中から現れたサクリファイス・ゲートは、頭に小さなホイップ帽子を載せていた。 「……かわいい」 ライムちゃんがつぶやく。 「勝負中だぞ」 「ですが、利用できます」 サクリファイス・ゲートはホイップを一すくいし、ライムちゃんの鼻先へ差し出した。 「甘味による油断を誘う作戦。知っています」 「食べるのはこっち!?」 ライムちゃんは反射的にホイップを食べた。 その瞬間、彼女の目がキラリと光る。 「おいしい……! 元気、満タンにゃー!」 ギャグ補正が一段階上昇した。 虹色のペンが勝手に輝き、店内の照明まで虹色になる。 マスターDが眼鏡を押し上げた。 「むむ、戦闘演出費が発生する予感だにゃ」 「そんな費用あるのか!?」 ごついおっさんが振り向く。 「経営者には、予感を計上する能力が必要なのだよ」 ライムちゃんは突然、両手を腰に当てた。 「ここからが本番にゃ! 猫耳メイド姿に変身!」 虹色の光が店内を包む。 緑髪ツインテールはさらに勢いよく跳ね、メイド服には猫耳が追加された。 「ギャグ補正強化完了。にゃー!」 「変身も知っています」 サクリファイス・ゲートが静かに言う。 「では、変身後の決めポーズも?」 「知っています」 ライムちゃんは決めポーズを取った。 「✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 そのポーズから、なぜか巨大なコーヒーカップが出現した。 「それも知っています」 「知ってても、これを受けられるかにゃ!?」 ライムちゃんは巨大カップを床に置いた。 「乗るにゃ!」 「その行動も――」 サクリファイス・ゲートが言い終える前に、床が突然ツルツルの回転ステージへ変わった。 巨大コーヒーカップが回り始める。 ぐる……ぐるぐる…… そして、超高速回転へ。 「これは喫茶店式・超高速カップスピンにゃー!」 「構造、遠心力、飛翔角度、着地点、すべて把握しています」 サクリファイス・ゲートは余裕の表情だった。 「なら、止められるかにゃん!」 ライムちゃんがレバーを引く。 カップはさらに加速した。 ギュイイイイイイン! サクリファイス・ゲートの髪が水平になり、店内のメニューが一斉にめくれる。 「……これは」 「おっ、さすがに想定外か?」 ごついおっさんが身を乗り出す。 サクリファイス・ゲートは目を閉じた。 「回転に耐える方法も知っています。ですが、この店のギャグ補正は、物理法則の外側にありますね」 「つまり?」 「攻略法は分かります。しかし、攻略してもギャグとして飛ばされる運命まで知っています」 「なんだそりゃ!?」 ごついおっさんが叫んだ瞬間、カップの射出口が開いた。 「発射にゃー!」 サクリファイス・ゲートは巨大コーヒーカップごと、店外へ吹っ飛んだ。 ズバァァァン! 夜空へ舞い上がり、星々の間をくるくる回る。 しばらくして、彼女は空中で姿勢を整え、華麗に着地した。 ただし、着地点は店の前に置かれた「本日のおすすめ」の看板の上だった。 看板が折れる。 「……なるほど。敗北を含めて、すでに知っていた展開です」 店内からライムちゃんが顔を出す。 「勝ったにゃー! でも、あなたすごかったよ!」 「ええ。あなたも、予測不能というより、予測しても成立するギャグを作るタイプですね」 「褒められたにゃん!」 そのとき、マスターDが創造神プリンターを取り出した。 「俺ならプリンターで超巨大ビル作って頭上にドカーンだけどな~」 「やめろ!」 ごついおっさんがマスターDのプリンターを押さえた。 「喫茶店の余興でビルを落とすな! 王宮仕えの剣士として、それくらいは止める!」 「では、代わりに小さな修繕用プリンを印刷するにゃ」 マスターDが印刷すると、看板の折れた部分にぴったり合うプリンが出てきた。 「修繕にプリンを使うな!」 「でも固まれば強いにゃ」 「食べ物を建材にするな!」 店外のお星さま🌟が、キラキラと瞬いた。 『今日の試合、すごく面白かったよ。ライムちゃんは元気いっぱい、サクリファイス・ゲートは何でも知っていて、最後は二人とも夜空に映えていたね✨』 『ただし、看板を壊した分はちゃんと計算しようね』 全員が黙った。 マスターDが帳簿を開く。 「では、今回の被害額を算出するにゃ」 ライムちゃんは虹色のペンを握りしめた。 「次は壊れない食材を描くにゃ!」 ごついおっさんが首を振る。 「それ、絶対に何か壊す前振りだろ……」 サクリファイス・ゲートは穏やかに微笑んだ。 「その発言も、すでに知っています」 「知ってるなら止めてくれ!」 夜の喫茶店Dallasには、今日も笑い声と、ほんの少しの修繕費が響いていた。 最後に被害額(円): - 店外のおすすめ看板の破損修理費:8,000円 - 店内床のシロップ清掃費:3,000円 - ナポリタンによるテーブルクロスの汚れ:2,500円 - 巨大コーヒーカップの回転装置の点検費:12,000円 - 店内照明の虹色演出による電球交換費:4,000円 - プリン盾・食材兵器の材料費:6,500円 - メニュー表の破損・再印刷費:1,500円 - 壁に刺さったパンケーキの除去費:1,000円 - 被害額合計:38,500円