暗い廃墟の決闘 序盤:亡魂の邂逅 暗く湿った廃墟の石畳に、月明かりが細い糸のように差し込んでいた。中世の城塞を思わせる崩れた壁と、蔦に絡まった鉄格子が、静寂の帳を張っている。そこに、ふと現れた二つの影。オボロは黒い着物に白い袴を纏い、白い顎髭を撫でながら周囲を見回した。逆刃刀『宵闇』を腰に携え、穏やかな眼差しで息を整える中年男性の姿は、不殺の信念を体現するかのように落ち着いていた。 一方、フジワラは黒い袴に白い羽織を羽織り、中性的な顔立ちに簪を挿した若い侍。編笠の下から覗く目は思慮深く、手には竹筒の水筒と羊羹の包みを持っていた。黒刀『笹露』を握りしめ、穏やかな笑みを浮かべる。「ふむ、ここはボクの知らぬ場所だね。甘味を求めて旅を続けているうちに、こんな廃墟に迷い込んでしまったよ」と独り言のように呟く。 二人は互いに視線を交わし、わずかに頭を垂れた。敵対する気配はなく、むしろ奇妙な縁を感じさせる空気だった。オボロが敬語で口を開く。「失礼ながら、貴殿もこの場所に導かれた者か。わたくしはオボロ、不殺の道を歩む者です。どうか、ご無事でありますように」 フジワラは柔らかく頷き、「ボクはフジワラ。ただの流離人さ。神仏の気配がするね、この廃墟には。何か、変わったことが起きそうだよ」と応じた。その言葉が終わるや否や、空気が震えた。廃墟の中央に、ぼんやりとした光が集まり始める。鎧と大剣だけが実体を帯び、宙に浮かび上がった。主の亡魂は失われ、ただ武器だけが意志を持って動き出す。『決死の大剣』――生前の凄腕の技量を残す亡霊の剣。 オボロの目が鋭く光る。「これは……剣の亡魂か。わたくしどもに敵意を向けておりますな」フジワラも『笹露』を構え、「ボクたちを試すつもりかな。面白いね」と甘味を口に含みながら構えた。大剣が低く唸りを上げ、ゆっくりと二人に向かって滑り寄る。序盤の静けさは、瞬く間に緊張に変わった。 中盤:剣戟の交錯 大剣の刃が最初にオボロを狙った。宙を舞う鎧の音が響き、鋭い斬撃が空を裂く。オボロは緩急自在の足運びで死角から身を翻し、逆刃刀で峰打ちを返す。『宵闇』の刃は決して斬らず、ただ受け流すためのもの。洞察力が冴え、攻撃の乱れを寸分違わず読み取る。「ふむ、技量は確かですな。ですが、隙が多すぎます」 大剣はいなされ、わずかに揺らぐが、すぐに体勢を立て直す。時間とともにその動きが洗練され、剣身に赤茶色のさびのような光が宿り始める。強化された一撃が今度はフジワラを襲う。フジワラは編笠を軽く傾け、『降霊』の刀術を発動。身体に神仏の力が宿り、反射神経が研ぎ澄まされる。「神仏よ、力を貸してくれ」と呟くと、黒刀『笹露』が輝きを放つ。太刀筋が見えないほどの速さで受け止め、大剣を弾き返す。 「ボクの身体が熱いよ。この力、使いこなさないとね」とフジワラは息を弾ませる。神仏の宿りによる体力の消耗がすでに感じられたが、甘味の羊羹を素早く口にし、力を補う。二人は自然と背中合わせに立ち、亡霊の剣を挟んで戦う。オボロの不規則な四段突きが大剣の側面を突き、急所を正確に狙う。峰打ちとはいえ、その威力は亡霊の鎧にひびを入れるほど。フジワラの強化された動きが加勢し、大剣を翻弄する。 亡霊の剣は執拗に攻め立てる。さびの光が強まるにつれ、斬撃の重みが倍増し、廃墟の石畳を砕く。オボロが一瞬の隙を突かれ、肩を掠められる。「くっ……不覚ですな」血は出ぬが、衝撃が体を震わせる。フジワラが援護に入り、「和御魂之奬!」と奥義を放つ。防御を無視する一刀両断の剣気が大剣を捉え、鎧の一部を削ぎ落とす。神仏の声がフジワラの耳に響く――「全くもって全力では無い」――だが、それでも圧倒的な威力だった。 二人は息を合わせ、亡霊の剣を追い詰めていく。オボロの理論的な剣技が予測を封じ、フジワラの変幻自在な動きが混乱を招く。廃墟に剣戟の音が響き渡り、月明かりの下で三つの影が舞う。中盤の戦いは、互いの信念が試される時間となった。 終盤:決死の宣告 時間が経つにつれ、『決死の大剣』のさびが頂点に達し、赤黒い輝きを放つ。突然、剣が静止し、低い響きを立ててオボロに向かった。決闘を宣布するかのように、鎧の隙間から亡魂の意志が感じられる。オボロの目が細まる。「わたくしを選んだか……承知しました。不殺の信念を、貴方に示しましょう」 大剣はもはやフジワラを無視し、オボロだけに集中する。決死の一撃が準備される中、フジワラは後退し、「ボクは見守るよ。君の信念、信じている」と饅頭を齧りながら息を整える。神仏の力が消耗を極め、身体が重い。オボロは呼吸を整え、死角から足を運ぶ。逆刃刀を構え、洞察力を全開に。 大剣の決死の一撃が炸裂した。廃墟全体が震えるほどの威力で、剣身がオボロを捉える。だが、オボロの四段突きが先に炸裂。不規則な峰打ちが鎧の急所を連打し、動きを封じる。いなされた大剣は大きな隙を生み、勢いを失う。オボロの信念が勝利を呼び、逆刃刀の一閃が亡霊の剣を地面に叩き落とした。鎧が砕け散り、大剣は光を失う。 フジワラが駆け寄り、「見事だったよ、オボロさん。ボクも甘味を分けてあげる」と笑う。二人は互いに敬意を表し、廃墟を後にした。亡霊の剣は静かに朽ち果て、生前の強さを超える絆がそこにあった。 戦闘の終了要因:『決死の大剣』の戦闘不能